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血の花 一
しおりを挟む「きゃーっ! 何よ、これ?」
輪花は冷水をぶっかけられたように飛び起きた。
「え? な、なに?」
すぐに自分が転寝していたことに気づいて、顔が赤くなるのを自覚した。
(嫌だ、私ったら、眠ってしまったんだわ。なんて、だらしない)
あわてて寝椅子から下りて、声の主に目をやると、そこにいたのは真っ青な顔をした桂葉だった。両手に、折りたたまれた薄手の屏風を持っている。
「ご、ごめんなさい、ついうとうととしてしまって」
「それどころじゃないわよ!」
桂葉は乱暴に屏風を置くと、叫ぶように言った。
「輪花、これ、いったいどういうことなの!」
「え?」
桂葉の両目は怒りと恐怖で目尻がいっそうつりあがっている。
「え、じゃないわよ。見なさいよ、奥を!」
突き飛ばされるようにして奥室に行くと、輪花は息を飲んだ。
「いやだ! 何、これ?」
輪花も驚愕に声をあげた。
白絹の褥。今夜、花嫁花婿が初夜を迎えるはずの褥が、真っ赤に染まっているのだ。
血?
一瞬、輪花はそう思った。だが、
「血……じゃ、ないみたい」
おそらく桂葉もこれを最初に見たときはそう思ったのだろうが、だが、恐々近づき、身をかがめて匂いを嗅いでいる。
「これ、赤い墨ね。……字を書くためじゃなくて、絵を描くときに使うものかも……。それと」
彼女はやはり恐々と、指を伸ばして、赤い、濡れた褥を突ついた。
「花びらだわ」
桂葉は指先でつまんだ物を輪花の目の前に差し出した。
「椿の花よ」
よく見ると、一枚や二枚ではない。幾つも椿の花びらが見える。
「あ、もしかして」
輪花はすぐに卓上の中央に置かれていた器を見に行った。それは空っぽだった。そして器の底に残ったかすかな水は、それこそ血のように赤く染まっている。
「こ、これって、どういうことなの?」
輪花は呆然として汚れた器を見下ろした。
おそらく、褥にかけられた赤い水は、この器に赤い画料か墨を混ぜて作られたのだろう。そして椿の花が入ったままの中身を褥の上にぶちまけ、器はもとのあった場所にもどしたのだ。
「輪花、あんたの仕業じゃないの?」
困惑しながら桂葉が訊いてくる。
輪花は真っ青になって否定した。
「まさか! なんで私がそんなことするの?」
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