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血の花 二
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「……悪戯のつもり……とか?」
桂葉の口調も弱い。
「馬鹿なこと言わないでよ! 新婚初夜のお褥にこんなことしたら、冗談や悪戯ですまないじゃない!」
輪花はつい大声で抗弁してしまった。
桂葉も最初の驚愕と怒りがかなりおさまってきたのだろう。
「そ、それもそうよね。あんたじゃないわよね?」
「当たり前よ!」
つい涙ぐみそうになってしまう。自分がこんな愚かなことをしたなどと思われるのは、本当に心外だ。
「じゃ、誰がやったの? あんた、見てないの? ここにはあんたしかいなかったんでしょ?」
「そ、それが私……つい寝てしまって」
これは輪花の落ち度だ。恥ずかしさと罪悪感で泣きたくなった。
「桂葉、どうしょう?」
「どうしょうって言われても……。とにかく奥様、いえ、大奥様に報告して……、いえ、報告はあとよ。すぐにお褥を変えないと」
言うが早いが、桂葉は奥に行くと、濡れた褥を剥ぎ取るように寝台からうばう。
「桂雲さんに伝えてきて。今はきっと厨房にいるはずよ。桂雲さんに頼んで、すぐに新しい別の褥を用意してもらって!」
「わ、わかったわ」
輪花は大あわてで桂雲のもとへ走った。ころびそうになりながらも廊下を駆けぬけ、なんとか厨房で家令の盟宝と仕事の相談をしていた桂雲のもとへたどり着いた。
事情を説明すると、桂雲は顔色を変えた。
「たしか、高級な褥がまだ蔵にあったはずだわ。質はやや下がるけれど、あれなら大丈夫よ」
小走りに厨房を出ていく桂雲を追って、輪花も東にある蔵へと向かった。幸い、数日前に虫干しをし、虫除けの香をたいていたので黴臭さはそれほどない。
「あった、これよ、これ」
奥から取り出した褥は、高価そうでまだ使用されたことがないようで、これなら新婚夫婦の初夜に使ってもさしつかえないだろう。輪花は安堵した。
運ぶのを手伝おうと出した手に、桂雲の鞭のように厳しい声がとんだ。
「けっこうよ!」
輪花は唇を噛みしめた。
「でも、いったいどういう事なのよ、どうして褥が水浸しになったっていうの? おまえ、花瓶でも落としたの?」
「そ、それが解らないんです」
輪花は泣きそうになるのを必死にこらえて、せかせかと歩く桂雲について行きながら、必死に状況を説明した。
「私、うっかり転寝してしまって……それで、気づいたら褥が濡れていて……、あの、卓上の椿を盛ってあった器に誰かが朱墨みたいなものを混ぜて、それを褥の上にかけたみたいなんです」
桂葉の口調も弱い。
「馬鹿なこと言わないでよ! 新婚初夜のお褥にこんなことしたら、冗談や悪戯ですまないじゃない!」
輪花はつい大声で抗弁してしまった。
桂葉も最初の驚愕と怒りがかなりおさまってきたのだろう。
「そ、それもそうよね。あんたじゃないわよね?」
「当たり前よ!」
つい涙ぐみそうになってしまう。自分がこんな愚かなことをしたなどと思われるのは、本当に心外だ。
「じゃ、誰がやったの? あんた、見てないの? ここにはあんたしかいなかったんでしょ?」
「そ、それが私……つい寝てしまって」
これは輪花の落ち度だ。恥ずかしさと罪悪感で泣きたくなった。
「桂葉、どうしょう?」
「どうしょうって言われても……。とにかく奥様、いえ、大奥様に報告して……、いえ、報告はあとよ。すぐにお褥を変えないと」
言うが早いが、桂葉は奥に行くと、濡れた褥を剥ぎ取るように寝台からうばう。
「桂雲さんに伝えてきて。今はきっと厨房にいるはずよ。桂雲さんに頼んで、すぐに新しい別の褥を用意してもらって!」
「わ、わかったわ」
輪花は大あわてで桂雲のもとへ走った。ころびそうになりながらも廊下を駆けぬけ、なんとか厨房で家令の盟宝と仕事の相談をしていた桂雲のもとへたどり着いた。
事情を説明すると、桂雲は顔色を変えた。
「たしか、高級な褥がまだ蔵にあったはずだわ。質はやや下がるけれど、あれなら大丈夫よ」
小走りに厨房を出ていく桂雲を追って、輪花も東にある蔵へと向かった。幸い、数日前に虫干しをし、虫除けの香をたいていたので黴臭さはそれほどない。
「あった、これよ、これ」
奥から取り出した褥は、高価そうでまだ使用されたことがないようで、これなら新婚夫婦の初夜に使ってもさしつかえないだろう。輪花は安堵した。
運ぶのを手伝おうと出した手に、桂雲の鞭のように厳しい声がとんだ。
「けっこうよ!」
輪花は唇を噛みしめた。
「でも、いったいどういう事なのよ、どうして褥が水浸しになったっていうの? おまえ、花瓶でも落としたの?」
「そ、それが解らないんです」
輪花は泣きそうになるのを必死にこらえて、せかせかと歩く桂雲について行きながら、必死に状況を説明した。
「私、うっかり転寝してしまって……それで、気づいたら褥が濡れていて……、あの、卓上の椿を盛ってあった器に誰かが朱墨みたいなものを混ぜて、それを褥の上にかけたみたいなんです」
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