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月の呪い 三
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(まさか……、あの衣は)
自分のものと同じ褐色の衿もとがぼんやり見える。下男が持ってきた松明の明りのおかげで、今はいっそうはっきりと見える。
間違いない。水に浮かぶ死体は屋敷に仕える朋輩のものだ。
(まさか……まさか!)
「いったい、どうしたというのだ?」
輪花の膝が震えだしたとき、英風の声が響いた。振りむくと、英風の後ろには驚愕した様子の桂葉が見え、そのさらに後ろには慌てて駆けつけてきた様子の桂雲と盟宝の姿もある。
輪花は安堵のため息をもらしそうにった。
(良かった……桂葉じゃない)
不謹慎な話だが、輪花は仲良しの友人が無事だったことに安堵せずにいられない。
(もし桂葉だったら、どうしょうかと思ったわ……)
「お前たち、下がっていろ! すぐ死体を引き上げるのだ」
英風の指示に、下男の二人が池に入っていく。
「気をつけろ」
英風の声に下男の一人が答えた。
「大丈夫でさぁ、旦那様。この池は浅いですぜ」
池によっては大人でも溺れてしまうほど深いものもあるが、彼の言うとおりこの池はかなり浅いもので、男たちの膝上程度までしか水は無い。
桂葉が近寄ってきて輪花の袖をつかんだ。
「輪花、どうしたの?」
問う桂葉の顔は月下にも真っ青なのがわかる。
「ああ、桂葉……」
輪花が膝の震えをなんとか抑えて、何か言おうと口を開きかけたまさにそのとき、下男の声が鼓膜に突き刺さってきた。
「これは……香玉だ!」
辺りの使用人たちがざわめいた。
「旦那様、遺体は香玉だそうです」
池の水際まで行っていた盟宝が英風に向かって声をあげた。
「嘘、香玉ですって?」
桂葉が囁き、輪花も呆然とした。
「香玉?」
「なんで香玉が自害なんて?」
「だから、自害じゃないだろう。こんな池で」
「じゃあ、まさか、誰かに?」
ひそひそと人々の声がさざ波のように寄せてくる。
輪花と桂葉は思わず互いの手をにぎりあっていた。
「どうして、香玉が……?」
桂葉の呟きが聞こえた。
引きあげられた遺体はまぎれもなく香玉である。水に濡れた白い肌はまだ充分に美しく見え、輪花は思わず撫でてやりたくなった。香玉、どうしたの? 早く起きて。そう、声をかけてやりたくなってしまうのだ。
自分のものと同じ褐色の衿もとがぼんやり見える。下男が持ってきた松明の明りのおかげで、今はいっそうはっきりと見える。
間違いない。水に浮かぶ死体は屋敷に仕える朋輩のものだ。
(まさか……まさか!)
「いったい、どうしたというのだ?」
輪花の膝が震えだしたとき、英風の声が響いた。振りむくと、英風の後ろには驚愕した様子の桂葉が見え、そのさらに後ろには慌てて駆けつけてきた様子の桂雲と盟宝の姿もある。
輪花は安堵のため息をもらしそうにった。
(良かった……桂葉じゃない)
不謹慎な話だが、輪花は仲良しの友人が無事だったことに安堵せずにいられない。
(もし桂葉だったら、どうしょうかと思ったわ……)
「お前たち、下がっていろ! すぐ死体を引き上げるのだ」
英風の指示に、下男の二人が池に入っていく。
「気をつけろ」
英風の声に下男の一人が答えた。
「大丈夫でさぁ、旦那様。この池は浅いですぜ」
池によっては大人でも溺れてしまうほど深いものもあるが、彼の言うとおりこの池はかなり浅いもので、男たちの膝上程度までしか水は無い。
桂葉が近寄ってきて輪花の袖をつかんだ。
「輪花、どうしたの?」
問う桂葉の顔は月下にも真っ青なのがわかる。
「ああ、桂葉……」
輪花が膝の震えをなんとか抑えて、何か言おうと口を開きかけたまさにそのとき、下男の声が鼓膜に突き刺さってきた。
「これは……香玉だ!」
辺りの使用人たちがざわめいた。
「旦那様、遺体は香玉だそうです」
池の水際まで行っていた盟宝が英風に向かって声をあげた。
「嘘、香玉ですって?」
桂葉が囁き、輪花も呆然とした。
「香玉?」
「なんで香玉が自害なんて?」
「だから、自害じゃないだろう。こんな池で」
「じゃあ、まさか、誰かに?」
ひそひそと人々の声がさざ波のように寄せてくる。
輪花と桂葉は思わず互いの手をにぎりあっていた。
「どうして、香玉が……?」
桂葉の呟きが聞こえた。
引きあげられた遺体はまぎれもなく香玉である。水に濡れた白い肌はまだ充分に美しく見え、輪花は思わず撫でてやりたくなった。香玉、どうしたの? 早く起きて。そう、声をかけてやりたくなってしまうのだ。
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