双珠楼秘話

平坂 静音

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弔う女たち 五

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「え? そうなんですか?」
 これは意外だった。てっきり豊かだと思っていたし、屋敷のなかの調度品や玉蓮や金媛の装いを見ても、裕福そのものに見えるが。
「所領はすでに担保になっているし、借財も多いそうだ。ほとんど借金で今の豪奢な生活を保持しているようなものだと」
「え? でもその紅鶴さんて、まだ十三なんでしょう? そんな事までくわしく知っているんですか?」
 自分より年下の紅鶴が自分より屋敷について知っているというのが、なんとなく輪花には面白くない。
「私も半信半疑だし、まだ子どもの言うことだと思っていたのだが、実家のちかくの友人にたのんで、役場で呂家の所有地について調べてもらったのだが、三日ほどまえ手紙が来て、やはりそのほとんどは借金の担保になっているということらしい」
「だ、誰の物になっているんですか?」
 英風の顔はさらに曇る。
「村の名士や素封家そほうかだが……。正直言うと、その友人が他にも呂家について調べたところでは、この屋敷そのものも借金の担保になっているというのだ」
 輪花は息をのんだ。
「その借金の相手というのがな……、これには友人……西破せいはというのだが、彼が手紙で伝えてくれたところによると、相当性質たちの悪い商売をしている者で、おう呆殷ほういんという男らしい」
 黄呆殷……。どこかでその名を聞いたような記憶があるが、輪花は思い出せない。
「かなりあくどい仕事をすることで裏の世界では有名な金貸しだ」 
 英風は苦笑いしているが、青ざめた肌から、かなりの窮地に陥っていることがうかがえる。輪花まで下腹が痛くなってきた。
 呂家に来たとき、広大な庭地や屋敷の華美な造りに驚いたものだが、この巨大な芸術品のような建物も土地も他人の物になっているという。それも相当悪い男の物に。
「金持ちの家に婿入りしたと思ったら……世の中、うまくいかないものだなぁ」
 英風はひどく空しい笑い声をたてた。
 やっと雨はあがったが、この話の後では英風の顔色は少しも晴れない。勿論、輪花も気が沈んできた。
「とにかく、この事は誰にも言わないように。いつものように仕事をしているんだ」
 はいと素直に返事をしてうなずく輪花に、英風はさらに声をかけた。
「輪花、君もくれぐれも気をつけるんだ」
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