双珠楼秘話

平坂 静音

文字の大きさ
112 / 140

容疑 四

しおりを挟む
 言われてみれば、あまりにも当たり前のことだ。
 何故、もっと早くその点を言わなかったのかと輪花はもどかしくなったが、あの状況では恐怖がまさって考えつかなかったのだ。 
「だけど、あんた、聞いていたろう? この娘はよりにもよってうちの娘に罪をなすりつけようとしたんだよ? 桂葉は見たこともないっていうのに、桂葉からもらったとか、桂葉にやったんだとか」
「何故、それを嘘だと決めつけられるんですか?」
 やわらかい微風のような清鳳の言葉が桂雲を鼻白ませた。
「え? 何故って、桂葉がそう言うんだから」
「桂葉さんの言葉が正しく、輪花さんの言葉が嘘だという根拠は何なのでしょう?」
「な、なんだって!」
 桂雲は色黒の肌を怒りに赤黒く染めたが、咄嗟にかえす言葉が出ないようだ。
「両方がちがう言い分をいうのなら、もう一度調べてみた方がよくないですか?」
 桂葉は憮然ぶぜんとした顔で清鳳を睨みつけた。
「私が嘘つきだって言うの?」
「嘘をついているとは言いませんが、若いお嬢さん方のことです。記憶違いとか勘違いというのもあり得るかもしれませんよ。少なくとも今のところ、桂葉さん、あなたの言葉を信じるに足る証しはないですからね」
 清鳳の微笑は消えない。桂雲、桂葉親子は黙りこんでしまった。
「玉蓮奥様、一応、この輪花さんを大奥様のところへ連れていってもよろしいでしょうか? 大奥様がじかに話したいこともあるそうで」 
苦い顔をする玉蓮に向かって清鳳はまた微笑んだ。
「お行きなさい」
 玉蓮は怒りをおさえてそう冷たく言い放ち、桂雲桂葉母娘ははこは憎しみをこめた目で輪花を見ている。盟宝はやや決まり悪そうな顔で。
 そして、金媛は、相変わらず見物人のように、冷めた表情だ。輪花はその無感動な顔を一番恐ろしく思いながら、震える足で清鳳にすがりついて室を出た。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...