双珠楼秘話

平坂 静音

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見えてきた敵 二

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「いや!」
「しっ、静かにおし!」
 力強い腕で抱きかかえられた輪花は、廊下の壁にたたきつけられそうになり、恐怖に目を閉じたが、驚いたことに鼠色の壁は二つにわかれた。
 輪花は大きな手で口を押さえこまれながらも、目を見張った。
 大きな屋敷にはよくあるらしいが、この廊下には隠し部屋があったのだ。
「喋るんじゃないよ。声をあげたら口を切り裂くからね!」
 押し殺した声で怒鳴られ、輪花はおそろしさに必死に首を縦に振った。闇に光る銀刃が頬に当てられているのがわかり、背が冷える。
 自分を抱きかかえているのは、あのとき納屋の前にいた下男だと輪花は怯えながらもすぐにわかった。そして、冷たい目で自分を見下ろしていたのは、枇嬋びせんだった。そして、その隣にいるのは……。 
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