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因習 一
しおりを挟む「あ、あなたは……、金媛様」
「金媛?」
〝金媛〟は笑った。やはり美しい顔だ。だが、笑いながら首を振る。
「いいえ。私は、銀媛」
意味がわからず呆然としている輪花に、枇嬋が説明した。
「この方は銀媛お嬢様。金媛お嬢様の双子の妹よ」
銀媛は膝をついて、輪花に顔を近づけた。だが、その目は輪花を見ていない。白い指が、そっと輪花の頬をなぞる。
「ずっとどんな顔かしらと気になっていたけれど、あなた、やっぱり可愛い顔をしているのね」
「お嬢様に比べたら大したものではございませんよ」
輪花は〝銀媛〟の冷たい指先の感触に怖気を感じながらも、気がついた。
「そうだよ。わかったかい? 銀媛お嬢様は目が見えないんだよ。……そして金媛お嬢様は口が聞けないんだ」
輪花は息を飲んだ。驚愕に池の鯉のように口をぱくぱくさせる輪花を、枇嬋は蔑んだ目で見ている。
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