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裏から 一
しおりを挟む私は生まれて物心ついたときから、隠し部屋と金媛姉様の室を行き来する生活をしておりました。そうしないと災いが起こると教えられていたのです。幼いころは玉蓮お母様や火玉お祖母様の言うとおりにしていましたが、やはり長じるにつけ私は不満でいっぱいでした。どうして同じ日に呂家の娘として生まれたのに、私ばかりがこそこそ隠れて存在しないものとして扱われ、金媛姉様ばかりが大事にされ誉めたたえられのだろうか、と悔しくてなりませんでした。そのくせ、たまに外の人と会うときは、私が出て喋ったり、戯れに歌をうたったりさせられるのです。でも誉められるのは〝金媛〟なのです。あんまりじゃないでしょうか。
私に同情し、理解してくれたのは枇嬋だけです。枇嬋は、私の方が金媛姉様よりもずっと賢いと言ってくれました。枇嬋がいるからこそ、どうにか私は我慢できたのです。
金媛姉様と英風様の結婚式のとき、私は悔しくて苛々して、二人の新床に、器の水をぶちまけてしまいました。水に混ぜた朱墨は、お祖母様の室にあったものを盗んできたものです。後で枇嬋に叱られ、私も花嫁にしてやるから、となだめられました。枇嬋は約束を守ってくれて、玉蓮お母様を説得して、金媛姉様と私が代わる代わる英風様と夜を共にすることが出来るようにしてくれたのです。
私は生まれて初めて世間なみの若い娘のように殿方との恋に耽ることができて、本当に嬉しかったのです。でも、金媛姉様は怒り、嫌がりました。ときには私と代わるのを嫌がって、つかみ合いの喧嘩にまでなりました。身体に痣が出来てしまうほどに。いつもはお母様やお祖母様の言いなりなのに、よっぽど私と英風様が夜を過ごすのが嫌みたいでした。
当然だろう、と? いいえ、違うのです。金媛姉様は、けっして英風様に恋していたわけではないのです。ただ、私と英風様が恋し合うのがゆるせないのです。金媛姉様は、英風様に抱かれても、私ほどには激しい想いを持ていなかったと思います。だから、深く激しく英風様を愛した私が許せなかったのです。
枇嬋たちのことですか? うすうす事情は聞いていました。我が家が法にそむく商売をしてお金を稼いでいたことや、枇嬋が実はお祖母様の異母姉だということや……。だから枇嬋は私の気持ちを理解してくれるのですね。
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