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裏から 三
しおりを挟む「誰があなた方に通報したんですか?」
牢の外の役人たちの詰め所でその話を聞いた英風は目を見張った。
「あの妓女、彩菊ですよ」
「え? あの《宝菊楼》の売れっ妓ですか?」
英風は再度おどろいた。あのとき、陳円の室に茶を持って入ってきた彩菊を見たときもおどろいたが……。まさか彩菊が陳円の生活費を出していたとは。そして時々、楼に寄っては様子を見ていたという。だが、隊長の話はさらに英風を仰天させた。
「彩菊はすべて話してくれましたよ。彩菊は、陳円が呂家を出るとき連れて行った、もう一人の子どもだったんですよ」
「もう一人の子?」
英風は、一瞬ぽかんとした。
隊長は役場の粗末な碗で出した茶を一口すすってから言った。
「三つ子だったんですよ」
「そ、それじゃ、金媛お嬢様と、銀媛……さんと、あの彩菊は同じ日に生まれた三つ子だったんですか?」
がらんとした人気の無い呂家で、英風と西破、そして清鳳と顔を合わせてあらためて事件のあらましを聞いた輪花は、またあらためておどろいた。
「ああ……本名は、銅玉というらしい」
英風自身、半信半疑だ。
双胎は避けるべし――という家訓はあるが、はたして三つ子の場合はどうなるのか。
当時、火玉も枇嬋も考えたが、やはり三番目に生まれたその子の存在も忌むべきものとした。最初は、残酷なことだが三番目の赤子は葬ろうかとさえ考えたらしいが、陳円は激しく反対し、その子も隠して育てるように説得した。
だが、火玉も枇嬋もその三番目の孫をひどく疎んじた。
かばいきれそうにないと思った陳円は、幼かった銅玉を連れ去るようにして呂家を出、男手で苦労しながらも八歳ぐらいまではどうにか育てたが、あまりの貧困ぶりに、知人に説得されて、女衒を通して都の妓楼に預けたという。
妓楼で育てられた銅玉は、やがて彩菊として名を売り、都有数の名妓となり、父には毎月仕送りをしていた。そして、あの日も、偶然にも父の様子を見に来て、英風たちと出くわしたのだ。
「最初は、あまり似ているように見えなかったのだが……、たしかによく見ると姉たちと似ていたな」
西破の言葉に英風はうなずいた。
「育った境遇がちがうからな。やはり厳しい世界で育っただけあって、銅玉の方が顔つきがひきしまって見えるのだ」
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