双珠楼秘話

平坂 静音

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裏から 四

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 言われてみれば、金媛と銀媛の顔が卵型で、銅玉は逆三角の形なのでそれほど似ているように思えなかったが、思い出すと目鼻はたしかによく似ている。輪花はもう一度、あの結婚式の宴で絹の衣を身にまとい、人々の注目を浴びていた美しい妓女の容貌を、頭のなかに浮かべてみた。
「思えば、あの芝居はかなり象徴的だったな。入れ替わりを意味していたのだから」
 英風は感慨深げに言った。 
 もしかしたら、あの芝居は、妓楼に売られた銅玉の、実家に対するせいいっぱいの意趣返しなのかもしれない。銅玉は、父から金媛が耳が聞こえず、銀媛が目が見えないことは聞かされていたので、父の推察どおり、姉たちが二人で一人を演じていることに気づいていたという。そして、あの日、英風と西破が帰ってから、意を決して役場へ駆け込んだのだ。妓女という職業柄、高級役人の知人も大勢いた銅玉は、時折り彼らの噂で、呂家が悪い仕事に手を出しているということも気づいていた。
「……それで、英風、これからどうするつもりだ」
「この屋敷を売って、借金をなんとか清算するつもりだ。例の、黄呆殷という男と話し合ってみるつもりだ。向こうも呂家の悪事が露見した以上、あまり無理な要求はしないだろう。自分の身も危なくなるからな。そして……」
 英風は長い眉をゆがめた。一瞬、思案したようだ。
「どうにかして銀媛を救ってやるつもりだ。このままでは遊女として売られてしまうかもしれない。それは、あまりにも哀れだ」
 その場に満ちた沈黙をやぶったのは、清鳳だった。
「とにかく、大奥様のお弔いだけはささやかながら私たちでしてあげませんか? それに、玉蓮奥様と金媛様の御遺体も戻されることでしょうし」
「ああ、そうだった。これから、線香を捧げに行こう。西破、お前も付き合ってくれ」
「そうだな」
 四人は廊下に出た。空は月光に飾られ、今日一日のとんでもない出来事が嘘のように屋敷は静かだった。
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