あの花の盛りに

平坂 静音

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 カーディガンの襟に顔をすくめるようにしたわたしの動作から気持ちを読みとったのか、尚彦が弁明するようにまくしたてた。
「たぶん、十七歳っていうのが微妙なんだろうね。もっと歳が低ければ、まちがいなく事故か犯罪にまきこまれたと見なされるんだけれど、十七にもなると、当人が自分の意志で家出したっていうのもあり得るし。……悩みおおい年頃だしね」
 自分だって、まだ十九になったばかりなのに尚彦はひどく大人ぶってそんなことを言う。 
「最初は自分の意志で家出したとしても、後で悪い男にひっかかったり騙されたりして、逃げられない状態に陥ってしまったとかもありえるしさ」
 そんな話は都会ではよく聞く。家出中に住む場所と小金欲しさに売春する少女たちの話だって、この街ではめずらしくないし、バイト帰りにも、派手な身なりの女の子たちが夜の往来でたむろしているのをよく見る。
 彼女たちのなかには、やっぱり地方から出てきた家出少女や、わけあって家に帰りたくない地元の子たちもいて、その日の寝床や食事を得るために、男を誘う子たちもいるんだろうな。きっと。 
 同年代だけれど、田舎の普通の家庭で普通に育って、中学、高校と受験勉強にいそしんで志望大学に入学して、大学生活とアルバイトで毎日忙しく過ごしているわたしからしたら、あの子たちはまるで別世界の、それこそ宇宙人のようだ。
 都会に出て一人暮らしすると決めたとき、親からは厳しく言われた。「ぜったいに水商売のアルバイトは駄目だ。もしどうしてもお金に困ったら、すぐ連絡するように」と。
 頭かたい両親だけれど、わたしの心のどこかで、いたってまっとうに育てられた自分を誇らしく思っている自分がいる。
 水商売だってできない育ちをしたわたしの感覚からしたら、売春なんて、とんでもない。
 わたしって……保守的っていうのか、つまらない人間なのかもしれない、と思うのはこういうときだけれど、やっぱり、大学進学のためという、きちんと正しい形で都会に出て、せまくても清潔で居心地の良い自分の部屋を持ち、毎日ちゃんと大学に通って勉強して、夕方六時から十時までの四時間バイトにいそしんでいる自分は、そりゃ、いつも時間に追われてお洒落もせず、髪も染めずセミロングですませてるけれど、それでもしごく普通で健全で、まっとうだと、ひそかに誇らしい。
 街角をさすらう都会の夜の蛾みたいなあの子たちが、見知らぬ男たちに身体を与えて得ている大都会での居場所を、わたしは正当でまっすぐで、誰に恥じることもなく堂々と得ているのだという、傲慢にも似た満足感。
 そう。わたしは同じゼミの……山本さんだったけ、最近見ないけれど、大学生なのに勉強そっちのけで、いつもけばけばしい格好で濃い化粧しているあんな人とはちがう。
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