血塗られた王女

平坂 静音

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花の輪 一

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 その夜、船上でのつましい食事を終えた侍女たちは旅の無聊ぶりょうをなぐさめるためカード遊びに興じておりました。船酔いもすこしやわらぎ、若い娘たちはこのときは持ちまえの陽気さを取り戻しておりました。

「わたしたちの未来の旦那様ってどんな方かしらね?」

 うっとりと、夢見るように言う侍女に、テーブルのちょうど向かい側に座っていた朋輩が答えました。

「フランセスカはそればかりねぇ。殿下にお仕えするためではなく、結婚相手を見つけるためにイングランドへ行くみたいだわ」

 呆れ半分に言う黒髪の朋輩に向かって、フランセスカと呼ばれた金髪の侍女は唇をとがらせます。

「マリアったらいつも厳しいわね。そんなこと言ったて、それだって目的のひとつじゃない? まさかイングランドで一生独身でいるわけにはいかないでしょう? ちゃんと素敵な人を見つけて、結婚しないと」

「はいはい。でも、だからって、このまえにみたいに、いくら美男だからといって吟遊詩人にボーっとなったり、金持ちだからといったってユダヤ人に愛想をふりまいたりしないでちょうだいよ。スペイン貴族の誇りを忘れないで」

 フランセスカには、すこし軽々しいところがございました。

「あ、あら、それは、終わったことでしょう?」

 フランセスカは気まずげな顔になり、黙って聞いていたわたくしは目を伏せました。

「え? そんなことがあったの?」

 カードをくっていた別の侍女が口をはさみます。

「そうなのよ、ベアトリックス。フランセスカったら、惚れっぽいから困るわ。わたしたち全員の名誉にもかかわるのだから、イングランドの宮殿では気をつけてちょうだいよ」

「でも、イングランドに素敵な殿方なんているかしら?」

 フランセスカの言葉にベアトリックスはふくみ笑いを浮かべました。
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