血塗られた王女

平坂 静音

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 わたくしは仰天しました。が、すぐに見当がつきました。

 おそらくはフランセスカがルシアが身にそぐわぬダイヤモンドを持っていることを妬んで、話をゆがめてマヌエル夫人の耳にまで余計なことを吹きこんだのでございましょう。

「とんでもないことでございます」

 わたくしは焦りつつも必死に事情を説明しましたが、マヌエル夫人は黒い眉をしかめられました。

「下女がダイヤモンドを持っているなど奇妙な話ではないですか。その盗人を呼んできなさい。殿下の御前でわたくしじきじき詮議せんぎしましょう」

「あの、ですが、ルシアが言うには、母親がくれたものだと……」

「フランセスカの話では、相当大きなダイヤモンドだったというではありませんか。どんな貴族の女が贈れるというのです?」

 結局、マヌエル夫人の関心もそこなのでございましょう。下女ごときが高価なダイヤモンドを持っていることが気に入らないのでございます。

「でも、夫人、船内で誰かのものが失くなったというわけではないでしょう? ルシアの言うことは本当かもしれないわ。きっと母親が別れるとき、せめてもの思い出にとルシアにわたした物かも。そっとしておいてあげたらどうかしら?」

 お優しいカテリナ様のお言葉にわたくしは嬉しくなりました。

「ですが……」

 尚も何かを言おうとするマヌエル夫人に、やんわりとカテリナ様が釘を刺されます。

「もしこの先何かが船内で失くなるようなことがあれば、そのときはやはり盗人が出たのでしょう。そうなったらルシアに話を聞いてみましょう。それまでは事をおおごとにしたくはないわ。わたしの一行に盗人がいるなどという噂がイングランド着いたとき広まってしまうと、恥をかくのはわたしだわ」
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