血塗られた王女

平坂 静音

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「きゃぁぁぁ!」

 夜半、どこからか女の悲鳴が響きわたり、わたくしのみならず、隣のベッドで寝ていたベアトリックスが身を起こしました。

「ねぇ、何か聞こえなかった?」

「悲鳴のような声が」

 向かい側のベッドで寝ていたマリアが闇のなかを見回し、怯えた声をあげました。

「フランセスカがいないわ。わたしの隣で寝ていたのに」

「じゃ、あの悲鳴みたない声はフランセスカかしら? まさかフランセスカになにか……」

 ベアトリックスが怯えた猫のように身をすくめます。

 わたくしはベッドから下りて、フランセスカをさがすために外へ出ました。こういうとき、侍女たちのなかでは一番身分の低いわたくしがまず動くことになっておりました。

 声は外から聞こえたので、そう遠くないはず、と思ったまさにそのとき、白い寝着をまとった人影とぶつかりそうになり、わたくしは我知らず悲鳴をあげそうになりました。

「う……うう」

 顔を手でおおって、泣き声のようなうめき声のようなものを発しているのは、流れるような金髪からフランセスカだと知れまして、とにかく一瞬はほっとしたわたくしですが、顔をおおっている手に、べっとりと濡れたものを見て、息が止まりそうになりました。

 火打石のはじけるような音が闇にひびき、やがて青ざめたマリアが蝋燭を手に近づいてまいりました。ちょうど扉の前でわたくしを挟むかたちでフランセスカとマリアが向かいあうようになりました。

「フ、フランセスカ、どうしたの?」

 マリアの問いにフランセスカは首を振るばかりです。その間も、ああ、とか、うう、とかわめき声をあげて泣きじゃくっております。
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