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「あの、カテリナ様には?」 マリアが小声で訊ねますと、夫人は首を振りました。以前、姫様にこの問題は取沙汰さないように言われているので、報告するのがためらわれたのでございましょう。
「こんな些末な問題でお耳をわずらわせることはないでしょう。事実をたしかめたうえで、報告するかどうかはわたくしが決めます」
わたくしは内心気が気ではございません。現代の詮議や取り調べというのはかなり大雑把なものでございまして、確たる証拠もないのに盗人の容疑をかけられた使用人がきびしい処罰を受けることもままあったからでございます。
「アニエス、ルシアを呼んできなさい」
逆らうことなどできるわけもなく、わたくしは嫌々ながらもルシアを呼びに行きました。
大部屋の扉近くですぐにルシアは見つかりました。いつものように黒いヴェールをかぶっているので表情など読みとれませんが、心おだやかでないことは推し量ることができます。わたくしはなるべく優しい声で告げました。
「ルシア、マヌエル夫人がお呼びなの。来てちょうだい」
こくん、と頷くとルシアは何も言わずわたくしの後についてまいります。わたくしは言うべきかどうか迷いましたが、言葉をひねり出しておりました。
「ルシア、やり過ぎよ。そりゃ、フランセスカも悪いけれど……、でも刃物で切りつけなくても……」
「……と思ったのです」
海鳥の鳴き声に、ルシアのもらした言葉がよく聞きとれず、わたくしは訝し気な顔になっておりました。ルシアはもう一度口をひらきました。
「刺客かと思ったのです」
「え? 刺客って……?」
「こんな些末な問題でお耳をわずらわせることはないでしょう。事実をたしかめたうえで、報告するかどうかはわたくしが決めます」
わたくしは内心気が気ではございません。現代の詮議や取り調べというのはかなり大雑把なものでございまして、確たる証拠もないのに盗人の容疑をかけられた使用人がきびしい処罰を受けることもままあったからでございます。
「アニエス、ルシアを呼んできなさい」
逆らうことなどできるわけもなく、わたくしは嫌々ながらもルシアを呼びに行きました。
大部屋の扉近くですぐにルシアは見つかりました。いつものように黒いヴェールをかぶっているので表情など読みとれませんが、心おだやかでないことは推し量ることができます。わたくしはなるべく優しい声で告げました。
「ルシア、マヌエル夫人がお呼びなの。来てちょうだい」
こくん、と頷くとルシアは何も言わずわたくしの後についてまいります。わたくしは言うべきかどうか迷いましたが、言葉をひねり出しておりました。
「ルシア、やり過ぎよ。そりゃ、フランセスカも悪いけれど……、でも刃物で切りつけなくても……」
「……と思ったのです」
海鳥の鳴き声に、ルシアのもらした言葉がよく聞きとれず、わたくしは訝し気な顔になっておりました。ルシアはもう一度口をひらきました。
「刺客かと思ったのです」
「え? 刺客って……?」
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