血塗られた王女

平坂 静音

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 マヌエル夫人は一瞬考えこむような顔になってからルシアに告げました。

「おまえの持っているダイヤモンドの首飾り……だったかしら? それは盗んだものだという噂があるのですが」

「滅相もない」

 ルシアがヴェールごしに夫人を睨みつけるようにしたので、わたくしは背に汗が走りそうになりました。

「と、とにかく、一度それを見せてくれないかしら?」

 夫人にしては珍しくおもねるような優しげな口調で、気のたった猫を落ち着かせるように言います。

「……わかりました」

 不承不承、というふうに、ルシアはヴェールを持ちあげると、器用な手つきでネックレスを外します。その瞬間、ルシアの顔がほんの少しわたくしの視界に入りましたが、たしかに白い肌には、見えたかぎりでは染みひとつなく、健康そうでございます。

 結局、理由はどうあれわたくしはルシアの嘘に騙されていたのかと思うと複雑な心持ちでございました。ですが、ルシアの手渡したネックレスを見た瞬間、そんな些細なことは吹き飛んでしまいました。

「あら……、まぁ」

 マヌエル夫人はじめ、女たちはみなその白銀にかがやく装飾品のあまりのみごとさに呆気に取られてしまったのでございます。 

 きらきらと輝くダイヤモンド。

 これほど大きなものは見たこともございません。白銀の鎖も精巧をつくしたもので、細やかに編まれ幾何学きかがく模様のかたちを成しております。

「これは……本当に素晴らしい」

 マヌエル夫人がうっとりとしたようにネックレスを手にとり確かめるようにあらためて検分します。
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