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六
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今日の装いは家を出たときのものだが、汚れていないか気になる。ブラシや櫛は部屋にあった前の住人のものを使い、ブリジットが貸してくれた香水を少しだけつけてきた。下着は、少し抵抗があったが、それも以前の住人が置いていったものを洗って着替えに使っている。
家を出たというコンスタンスの言葉に、クレオの利発そうな若葉色の瞳がまたたく。今日の彼女は黒い背広でやはり男装だが、それは清潔感にあふれ、見る者の目に清々しく映る。
こうしてクレオと向かいあっていると、あの館のただれた風がまとわりついていないかコンスタンスは気になって仕方ない。
マダム・オベールのブラックオニキスの瞳、ブリジットの組んだ脚、ビュルのしなを作った俯きがちな顔、そういったものが混然となってコンスタンスの身体に黒煙のようにまとわりついて離れてくれないのだ。
コンスタンスは精一杯背を伸ばした。先日ロベール氏のまえではたやすく伸ばすことのできた背筋が、なぜかクレオを前にしては難しい。
「それじゃ、今はどうしているんだい?」
「知り合いの家に泊めてもらっているんです」
全くの嘘というわけではない。
「……女友達かい?」
クレオの問いに、少しあせる。
「みたいなものです。あの、それで、わたしのママンのこと、なにか分かったでしょうか?」
「うん。少しなんだけれど」
コンスタンスは小さく息を飲んだ。
実を言うと期待していなかったのだが、一度クレオに確認を取ってみて、判らなければもうそれで諦めて終わりにしようと思っていたのだ。
「もう十年ほどまえのことだけれどね……」
クレオはコーヒーを一口飲んで続けた。
「……君のお母さん、マリー・ドュホールさんは、たしかに不貞の罪で警察に逮捕されている。身元引き受けに来た夫、つまり君のお父さんに警察官たちの目前で打たれたと。……しかも、君のお父さんはそこへ当時関係のあった別の女性を連れてきて、その女はその様子を見て笑っていたと。この話は警察署では有名な話だったそうだ……」
家を出たというコンスタンスの言葉に、クレオの利発そうな若葉色の瞳がまたたく。今日の彼女は黒い背広でやはり男装だが、それは清潔感にあふれ、見る者の目に清々しく映る。
こうしてクレオと向かいあっていると、あの館のただれた風がまとわりついていないかコンスタンスは気になって仕方ない。
マダム・オベールのブラックオニキスの瞳、ブリジットの組んだ脚、ビュルのしなを作った俯きがちな顔、そういったものが混然となってコンスタンスの身体に黒煙のようにまとわりついて離れてくれないのだ。
コンスタンスは精一杯背を伸ばした。先日ロベール氏のまえではたやすく伸ばすことのできた背筋が、なぜかクレオを前にしては難しい。
「それじゃ、今はどうしているんだい?」
「知り合いの家に泊めてもらっているんです」
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実を言うと期待していなかったのだが、一度クレオに確認を取ってみて、判らなければもうそれで諦めて終わりにしようと思っていたのだ。
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