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二
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「お嬢さん、大きなお世話かもしれませんけれど、この先どうなさるの? 聞いた話ではお家は抵当に入っているうえに借金もあるとか」
コンスタンスは言葉が出ない。
どうするのか。どうすればいいのか。訊きたいのはコンスタンスだ。
「よろしければ、これを」
相手は手持ちの鞄から白いちいさなカードを取り出した。彼女の名刺らしい。カードには黒いインクで「白猫」とあり、その文字の下に、ガブリエルという名前だけが美しい装飾文字で書かれてある。
「ダストール通りの外れで店をやっていますの。あなたのお母様とは古いつきあいですわ。以前、その店で一緒に仕事をしていたのよ。もし、なにかあった名刺の裏の住所へ連絡してちょうだい。力になれるかもしれないわ」
やはりそういう商売の女性で、しかも経営者のようだ。コンスタンスは名刺を見つめて硬直してしまっていた。
ふふ……、と相手はそれこそ猫のようなとらえどころのない笑いをこぼす。ヴェール越しにかすかに見える碧の目がきらりと光る。
「……言っておきますけれど、うちは高級店よ。客は皆様一流の方、食事も部屋も凝ったものだし、衛生設備もきちんとしているわ。月二回は診断もあるし。あなたは旧友の娘だから、出来るかぎりのことはしてあげれると思うの」
大きなお世話よ、と名刺を破り捨てるには今のコンスタンスは疲れ切っていた。
それに、事実借金は重くのしかかっている。行方不明になった父当てに督促状らしい書状が幾つもきている。葬式代も借金に上乗せされることになる。
このままだと本当にどこかに身売りしないといけなくなるのだろうか。こういうときどうすればいいのか、相談できる相手もいない。このパリの空の下、コンスタンスは本当に一人ぼっちなのだ。
「では」
ガブリエルという女性は軽く会釈してコンスタンスに背を向けたが、その直後彼女の身体が固まった。
不思議に思ったコンスタンスが、連られるようにして彼女ととなじ方向に視線を向けると、教会敷地内の芝生の途切れた辺りに一人の男性が立っているのが見える。
コンスタンスは言葉が出ない。
どうするのか。どうすればいいのか。訊きたいのはコンスタンスだ。
「よろしければ、これを」
相手は手持ちの鞄から白いちいさなカードを取り出した。彼女の名刺らしい。カードには黒いインクで「白猫」とあり、その文字の下に、ガブリエルという名前だけが美しい装飾文字で書かれてある。
「ダストール通りの外れで店をやっていますの。あなたのお母様とは古いつきあいですわ。以前、その店で一緒に仕事をしていたのよ。もし、なにかあった名刺の裏の住所へ連絡してちょうだい。力になれるかもしれないわ」
やはりそういう商売の女性で、しかも経営者のようだ。コンスタンスは名刺を見つめて硬直してしまっていた。
ふふ……、と相手はそれこそ猫のようなとらえどころのない笑いをこぼす。ヴェール越しにかすかに見える碧の目がきらりと光る。
「……言っておきますけれど、うちは高級店よ。客は皆様一流の方、食事も部屋も凝ったものだし、衛生設備もきちんとしているわ。月二回は診断もあるし。あなたは旧友の娘だから、出来るかぎりのことはしてあげれると思うの」
大きなお世話よ、と名刺を破り捨てるには今のコンスタンスは疲れ切っていた。
それに、事実借金は重くのしかかっている。行方不明になった父当てに督促状らしい書状が幾つもきている。葬式代も借金に上乗せされることになる。
このままだと本当にどこかに身売りしないといけなくなるのだろうか。こういうときどうすればいいのか、相談できる相手もいない。このパリの空の下、コンスタンスは本当に一人ぼっちなのだ。
「では」
ガブリエルという女性は軽く会釈してコンスタンスに背を向けたが、その直後彼女の身体が固まった。
不思議に思ったコンスタンスが、連られるようにして彼女ととなじ方向に視線を向けると、教会敷地内の芝生の途切れた辺りに一人の男性が立っているのが見える。
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