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四
しおりを挟む結局、裁判は中止にされたままコンスタンスはじめブリジットたちもそのまま放免された。マダムだけはまだ警察に調書を取られているが、ここでもマダムの弁舌は警察官たちをおののかせた。
フィオー刑事が情けなさそうに眉をゆがめてコンスタンスに伝えた話はこうだった。
(わたくしは何かあったときのためにと、今まで店に来てくださった方たちのお名前を全て記しておりますの。他にもご来店の証拠はたくさんありますのよ。すべてお見せしましょうか。でもそのまえに、その方たちにお伝えくださる? セシール・オベールが待っておりますので、是非迎えに来てほしいと)
そう言ってマダムが伝えた名前のなかには、貴族や実業家、法曹界や政界のかなりの重鎮もおり、彼らのうちの一人に連絡を取ると、どういう経緯でか、警視総監からじきじきの連絡があり「なんらかの誤解があったようで、友人の知己をすぐ釈放するように」と伝えられたそうだ。
何故中流のメゾン・ランデヴーの主に過ぎないマダムがそこまでの伝手を持てたのか、フィオー刑事に言わせると、マダム・オベールの店では一流娼館ではなかなか入手できない幼い娼婦や男娼を手配できるからだそうだ。
「嫌な話だが……」
フィオー刑事は警察署の門近くで、午後の光に顔を照らされながら、腐った魚料理を口にしたように顔をゆがめた。
「世のなかには地位や富があっても変な趣味の持ち主がいてね……普通に法律で認められている娼館では満足できない嗜好の人間がいるんだよ。そういう連中は中流クラスのマダム・オベールの店で自分の欲求を満たすんだ。そしてマダム・オベールは実に賢い女性で、いざというときのためにそういった権力者たちの秘密を記録に残していたようだ」
しかも巧妙なことに、雇った幼娼婦たちから聞き出した客の男の身体の特徴を精細に書きこんでいたという。
身体のどこそこに黒子や痣があるとか、軍人などは傷跡がある場合もあり、そういったものを知られてしまうと言い逃れしづらい。巧妙なマダムは客に幼い子供たちを出すまえに、客の身体の特徴をよく見て覚えてくるように、と言い聞かせていたらしい。そしてそれを知らせた子には特別チップを払っていたという。
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