メゾン・クローズ 光と闇のはざまで

平坂 静音

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 テーブルに置いておくと万が一にも家政婦に盗まれることを警戒していたのだ。エマは以前、女中に大事なネックレスを盗まれたことがあるそうで、使用人というものを信用しておらず、わずかなお金でもテーブルの上に置くことはなかった。

 もっともエマは忘れっぽいので、自分でどこに置いたかわからなくなることもよくあり、ネックレスが見つからなかったのは、たんに不注意でどこかに置き忘れてしまっていたのかもしれないが。

(あそこに、いくらか置いてあるかも)

 コンスタンスは背をのばし、狭い廊下の壁にかかっている花の絵の額縁裏に手を伸ばしてみた。

 手に触れたものがある。

「あ、あった」

 少し嬉しくなる。今のコンスタンスには一フランでも大金だ。いや、一スーでも嬉しいぐらいだ。

(あら?)

 しかしそこにあったのはいつもの紙幣を数枚入れた封筒ではなく、手紙であった。

 宛名はエマであり、封は開けらている。つまり、エマが読んでからここに隠すように置いていたのだろう。

 コンスタンスはお金でなかったことに一瞬失望したが、送りぬしの名を捜すと……、名前がない。

 ぞわり、とうなじが寒くなった。

 エマが殺されたあと、警察は家じゅうをさがして犯人の手がかりとなるものをしらべたという。あちこちにその乱暴な捜索の跡が見られ、コンスタンスは家にかえった最初の日はひどい嫌悪をおぼえたものだ。当然夫婦の寝室もしらべられ父の書斎の手紙類などもすべてしらべられたらしい。だが絵の裏に隠してあったのは見落としたようだ。警察も抜けており、戸棚や机の引き出しはしらべても、薄暗い廊下の小さな古びた絵に目はいかなかったようだ。

 好奇心もあり、コンスタンスはとにかく中の紙を取り出していた。




「親愛なるエマ。

 例の件で近日うかがう。店での貴方との友誼ゆうぎに応じて、なるべく期待にこたえられるよう、出来るかぎりのことはするつもり。
 
                        Aより 」
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