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夢と現 三
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「そうね。大桐さんのお父さんが弁護士を雇って、どうにか解決してくれるかもしれないわ。ちょっと熱くなって親子喧嘩が行き過ぎたとかなんとか言って、うまく処理できるかも。実の親子間でのトラブルなんだから。どこの家でもあることなんだし……。お母さんの意識さえ快復すればねぇ」
それから寮長はふっと息を吐いた。
「私だってね、実家にいるときは母とよく喧嘩して、そばにあった新聞紙とか投げつけたことがあったわ」
「え、寮長が、ですか?」
いかにも真面目そうなこの寮長にも、親に逆らい、声を荒げて反抗するような経験があったのだ。いつも地味な装いにつつんだ心身のなかに、そんな激しさや熱っぽさが秘められていたなんて。
寮長の意外な一面を知ったついでに、寮長が、岡田教授と付き合っているところも想像してしまいそうになった。
寮生たちの座り方ひとつでもマナーから逸れると目をしかめるような人が、実は世間に背いて――古い言い方だけれど――、妻子ある年上の男性、それも教授と付き合っているところを想像すると、奇妙な昂ぶりを感じてしまう。でも、ばれたら、当然風当たりはきついだろうな。
人によっては、普段の寮長の真面目ぶった態度から、裏表がある卑怯な人だと思ったりするかもしれない。なんといっても、他の寮生たちの風紀を取り締まる立場にいる人で、実際、必要以上に熱心にその責任を果たしてきた人なのだから。
いや、あくまでもあれは夢のことなのだから……。頭のなかで打ち消そうとしたけれど、どうも否定しきれない。もしかしたら……。
私の考えていることなど知る由もない信楽寮長は軽く苦笑した。
「私ね、もしかしたらいい子ぶりっ子なのかもね……。家では、それはしょっちゅう母と喧嘩していたものよ」
煌々とした保健室の電球の下、肌理こまやかそうな寮長の白い頬が輝いている。眼鏡をかけていなければ、寮長がわりと美人だということを、私はあらためて認識した。
「大桐さんの場合は間が悪くて、不幸なことに、たまたま手元にあったのが固い物だったのが不運だったのよ」
「気の毒ですね」
友哉君のコメントにうなずいてから寮長はドアにむかった。
「じゃ、私は行くから。何かあったら、そこのインターホンで連絡してちょうだい。あ、あなた、小倉友哉君だったかしら? ここは一応男子禁制なので泊まってもらうことは出来ないの」
申しわけなさそうに言う寮長に、友哉君は笑顔でこたえた。
「わかりました。もう少しして恵理ちゃんが落ち着いたら帰ります」
それから寮長はふっと息を吐いた。
「私だってね、実家にいるときは母とよく喧嘩して、そばにあった新聞紙とか投げつけたことがあったわ」
「え、寮長が、ですか?」
いかにも真面目そうなこの寮長にも、親に逆らい、声を荒げて反抗するような経験があったのだ。いつも地味な装いにつつんだ心身のなかに、そんな激しさや熱っぽさが秘められていたなんて。
寮長の意外な一面を知ったついでに、寮長が、岡田教授と付き合っているところも想像してしまいそうになった。
寮生たちの座り方ひとつでもマナーから逸れると目をしかめるような人が、実は世間に背いて――古い言い方だけれど――、妻子ある年上の男性、それも教授と付き合っているところを想像すると、奇妙な昂ぶりを感じてしまう。でも、ばれたら、当然風当たりはきついだろうな。
人によっては、普段の寮長の真面目ぶった態度から、裏表がある卑怯な人だと思ったりするかもしれない。なんといっても、他の寮生たちの風紀を取り締まる立場にいる人で、実際、必要以上に熱心にその責任を果たしてきた人なのだから。
いや、あくまでもあれは夢のことなのだから……。頭のなかで打ち消そうとしたけれど、どうも否定しきれない。もしかしたら……。
私の考えていることなど知る由もない信楽寮長は軽く苦笑した。
「私ね、もしかしたらいい子ぶりっ子なのかもね……。家では、それはしょっちゅう母と喧嘩していたものよ」
煌々とした保健室の電球の下、肌理こまやかそうな寮長の白い頬が輝いている。眼鏡をかけていなければ、寮長がわりと美人だということを、私はあらためて認識した。
「大桐さんの場合は間が悪くて、不幸なことに、たまたま手元にあったのが固い物だったのが不運だったのよ」
「気の毒ですね」
友哉君のコメントにうなずいてから寮長はドアにむかった。
「じゃ、私は行くから。何かあったら、そこのインターホンで連絡してちょうだい。あ、あなた、小倉友哉君だったかしら? ここは一応男子禁制なので泊まってもらうことは出来ないの」
申しわけなさそうに言う寮長に、友哉君は笑顔でこたえた。
「わかりました。もう少しして恵理ちゃんが落ち着いたら帰ります」
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