闇より来たりし者

平坂 静音

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生誕 三

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『恵理さん、トヨールを防ぐ方法があります。正直、民間伝承のようなもので実際に効くかどうかわからないですが、トヨールは緑の豆を嫌うと言われています。緑の豆はないですか?』
 緑の豆? 食堂の調理室ならあるかも。
『気休めかもしれませんが、緑の豆をベッドの側にでも置いておいてください』 
 今から調理室に行ってみよう。なければ、明日にでも買いに行こう。
『そして、くれぐれも用心してください。トヨールにかぎらず、ああいう魔物や使い魔は、人間の心の隙を突くのです。ぼんやりしていたり、考え事をしていて自分を失っていたり、もしくは悪い考え、マイナスの考えに浸っていると、たやすく奴らに取り込まれてしまいます。そして事故にあったり、病になったり、それこそ自分では思いもよらぬ行動に出て被害を受けてしまうのです。おそらく美菜さんもそうだったのでしょう』
 そして、もしかしたら麻衣もそうかもしれない。
 思い出せば……、最初に瓶の入っていた引き出しを強引に開けたとき、私は伯母にたいして不快な感情を持っていた。そのときの強いマイナスの気持ちが、トヨールを……呼んでしまった? 私は苦いものを飲みこんだ気分になった。
『恵理さん、明日お会いできませんか? 渡したいものがあるのです』
 その言葉に気まずい思いから救われた私は急いで返事をした。
 私はアレックスと明日また会うことを約束した。

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