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夢の館で 四
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(まるで……長年想いつづけた恋人を見るような目じゃない。……先生らしくないわ。それに、旦那様も旦那様よ)
思春期の娘が父親の不貞に怒るような気持ちに、マルゴはなっていた。クララがここにいれば感じるような想いを、クララの代わりに今マルゴは感じていた。
「旦那様、医者が参りました」
コホン、と咳払いが聞こえたかと思うと、ドアの向こうに控えていた執事が声をかけてくる。
「あ、ああ、そうか。入ってもらってくれ。ヴァイオレット、あとでまた話そう。今は休んで旅の疲れを癒すといい。マルゴも」
もう少し側にいたい……という想いをこらえて、マルゴはヴァイオレットとともに部屋を出た。
冷え冷えとした廊下を、先ほどと同じように執事に先導され、四階にある屋根裏の使用人部屋へと二人は案内された。
「部屋はこの階段を上がってすぐ左側だ。部屋は二人で使ってくれ。ヴァイオレットは以前に来たことがあったね?」
「ええ。ありがとう、エティンヌさん」
礼を言うと、二人はそれぞれの荷物を抱え、言われた部屋に進む。どこもそうだが、使用人が使う部屋はまるで別世界のように質素で粗末なもので、そういったことはマルゴにとっては当たり前で、何とも思わなかったが、ヴァイオレットの、剝きだしの壁を見る目は暗く曇っている。
「薄暗いわね」
呟くように言うと、部屋に入る。
小さなベッドが二つ並び、その真ん中に小さな卓があり、ランプがひとつ見える。窓が北向きのせいか、陽があまり差し込んでこない。それでも、普段マルゴがベルトといっしょに使っている田舎の屋敷の使用人部屋にくらべれば、すっきりとしている気がする。
「さ、ここがしばらく私たちのお城よ」
そう言う彼女の目は笑っているが、声にどことなく皮肉めいたものが滲んでいるのは、一般の使用人扱いされることにこだわりがあるからだろう。
それでもマルゴは旅の疲れもあって、すぐにベッドに腰かけた。椅子がないのは、やはり薪にしたせいだろう。もう一台あった馬車も薪にしてしまったとエティンヌが言っていた。
それでも珍しくて狭い室内を見渡してみると、棚にある数冊の本がマルゴの気をひいた。
「前の使用人のものみたい」
思春期の娘が父親の不貞に怒るような気持ちに、マルゴはなっていた。クララがここにいれば感じるような想いを、クララの代わりに今マルゴは感じていた。
「旦那様、医者が参りました」
コホン、と咳払いが聞こえたかと思うと、ドアの向こうに控えていた執事が声をかけてくる。
「あ、ああ、そうか。入ってもらってくれ。ヴァイオレット、あとでまた話そう。今は休んで旅の疲れを癒すといい。マルゴも」
もう少し側にいたい……という想いをこらえて、マルゴはヴァイオレットとともに部屋を出た。
冷え冷えとした廊下を、先ほどと同じように執事に先導され、四階にある屋根裏の使用人部屋へと二人は案内された。
「部屋はこの階段を上がってすぐ左側だ。部屋は二人で使ってくれ。ヴァイオレットは以前に来たことがあったね?」
「ええ。ありがとう、エティンヌさん」
礼を言うと、二人はそれぞれの荷物を抱え、言われた部屋に進む。どこもそうだが、使用人が使う部屋はまるで別世界のように質素で粗末なもので、そういったことはマルゴにとっては当たり前で、何とも思わなかったが、ヴァイオレットの、剝きだしの壁を見る目は暗く曇っている。
「薄暗いわね」
呟くように言うと、部屋に入る。
小さなベッドが二つ並び、その真ん中に小さな卓があり、ランプがひとつ見える。窓が北向きのせいか、陽があまり差し込んでこない。それでも、普段マルゴがベルトといっしょに使っている田舎の屋敷の使用人部屋にくらべれば、すっきりとしている気がする。
「さ、ここがしばらく私たちのお城よ」
そう言う彼女の目は笑っているが、声にどことなく皮肉めいたものが滲んでいるのは、一般の使用人扱いされることにこだわりがあるからだろう。
それでもマルゴは旅の疲れもあって、すぐにベッドに腰かけた。椅子がないのは、やはり薪にしたせいだろう。もう一台あった馬車も薪にしてしまったとエティンヌが言っていた。
それでも珍しくて狭い室内を見渡してみると、棚にある数冊の本がマルゴの気をひいた。
「前の使用人のものみたい」
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