白薔薇黒薔薇

平坂 静音

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晩餐 四

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「まぁ、そんな若い子が街を守ろうとしたなんて」
 ヴァイオレットの呟きには同情と感嘆が混じっていた。そして溜息まじりに漏らした言葉はマルゴを驚かせた。
「でも、私もパリにいたら、バリケード作りに加わっていたかもしれないわね。私が幼いころ、近所のご老人が革命の話をよくしていたの。パリを王家から奪いとり、守った、新たに作ったのは自分たちだっていう自負があったのね」
「そうでしょうね。パリの人々は、自分たちが国や歴史を変えたことに誇りを持っているんですよ」
 マルゴは黙って聞いていたが、何かしらもやもやしたものが胸内にわいてくる。
 パリを守るためというかもしれないが、外国兵ならまだしも、ヴェルサイユ軍は同国人ではないか。皇帝が逃亡したのなら、新たな統治者の言うことを聞けばいいだけだ、と思うのはマルゴが田舎の学もない娘だからそう思うのか。パリに生まれてパリに生きる少女というのは、田舎育ちのマルゴとはやはりどこか違うのかもしれない。
(でも、その娘さんだって、ただの女給だっていうじゃない?)
 奇妙な話だが、マルゴは見たこともないその十八の少女にふしぎな反感を覚えていた。
(そんな、コミューンや共和制がどうこうなんて、大人の、男の世界の問題じゃない。そんな大きな社会や世間の問題に、若い、ただの町の娘が首をつっこんで一緒に戦うなんて、なんだかおかしくない? 分を過ぎているわ)
 見たことものないその少女は、今頃、監獄のなかでも、自分は正しいことをしたのだと満足感にひたっているのかもしれない。それを想像すると、いっそうマルゴは苛立つ。だが、フランソワの言葉はちがっていた。
「今頃、監獄では酷い目にあっているかもしれない。ヴェルサイユまで引きづられていって殺された人も大勢いるといいます。そんな話を聞いていると、ここで何もせずこうしている自分が嫌になる」
 フランソワの前の皿の料理はだんだん冷めていく。
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