白薔薇黒薔薇

平坂 静音

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晩餐 三

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 つくづくとんでもない時期に来てしまったものだとマルゴも実感していた。村の駅長や、ホテルの支配人が女二人の旅人を見て眉をしかめたわけが、しみじみわかる。それでもこの屋敷の近辺はまだ平穏であるが、少し行くと、そこでは未だにコミューンの残党が政府にたいして反旗をひるがえし、銃撃戦になることがあるという。今のパリは、まだ戦火の名残がところどころで火を吹いており、まだまだ秩序が完全に回復したとはいえない。マルゴもヴァイオレットも屋敷からはなるべく出ないようにしており、戸締りにはひどく気を配っている。
「コミューンと政府軍の戦いは、とりもなおさず、庶民とブルジョワとの戦いなんです。僕も……、本当はコミューンに参加したかったんです。でも、僕は、結局は勇気がなくて」
 フランソワは細い顔に苦い笑みを浮かべたが、マルゴはもう一度「そう……」と頷くしかない。 
 それもまた良くわからないのだ。ここでこうして料理を食べているフランソワもまたブルジョワ階級の人間なのではないだろうか。なぜブルジョワの彼がコミューンに参加したいのだろう。それが、若さというものなのかもしれないが、マルゴには腑に落ちない話だ。
「そんな……参加していたら、今頃とんでもないことになっていたかもしれないわ。処刑されたり投獄されたりした人も多いんでしょう?」
 ヴァイオレットが不安げに言うのにフランソワはうなずく。
「植民地へ流された人もいます。年寄りも女性も、いえ、子どもだってバリケードを築いて最後までヴェルサイユ側と闘いました」
「女性や子どもまで……」 マルゴは息をつめた。
「一緒に戦った女性たちはシャンティエ監獄に投獄されたと聞いたよ。放火の罪で。女性闘士たちが石油をまいて火を放ったというのは、あくまでも噂なんだが」
 フランソワは目を伏せて、思い出すように言う。
「僕が知っているある少女は……ごく普通のカフェの女給だけれども、シャスポー式銃を手にコミューンに参加しました」
 その少女は、フランソワの恋人のことだろうと見当がついたが、マルゴは黙っていた。
「そしてバリケードを築くのに加わり、監獄送りになってしまった。近く植民地へ流されることになるだろう。彼女は、まだ十八歳なのに」
 何故、十八歳の女給がそんな物騒にことに首をつっこんだのか、マルゴにはそれもまた奇妙な話だ。
 十八といえば、マルゴと二歳しか変わらない。そんな若い娘がどうしてコミューンという奇妙な団体に加わって、政府の兵隊と闘おうなどと思ったのか。
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