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真実 四
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(わたしとクララは……、姉妹?)
いったんそう思うと、その想いはほとんど真実となってマルゴのなかで破裂する。
マルゴは今や確信していた。自分とクララは間違いなくブルーム氏の血をひく母親違いの姉妹なのだ。
父は亡くなったと母から聞かされていたが、おそらく嘘だろう。いや、母に夫はいたかもしれないが、その男は死んだのか、どこかへ行ってしまったのか。そして母はブルーム氏と、どういう経緯でか愛しあい、マルゴを産んだのだ。主人が使用人に手をつけるというのはよくある話だ。
葬式が終わると人々は挨拶を交わしあい散っていく。見知らぬブルーム氏の友人知人から哀悼を受け、マルゴは彼らの慰めの言葉にかえす言葉もなくただ頷いていたが、それも父親を亡くしたばかりの少女なら無理もないと、客たちはいっそうの同情をこめてマルゴを憐憫の目で見た。最後まで残っていたフランソワに、ヴァイオレットは静かに詰め寄る。
「フランソワ、今後のことについて話し合いましょう。……ここで言うのもなんですけれど、あなただって、こうなったら紳士として責任を取らないわけにはいかないでしょう?」
フランソワは無言だが、その目はヴァイオレットではなくマルゴに向けられている。マルゴは、突然、フランソワにすべて打ち明けたくなった。
(わたしはクララじゃない、マルゴなのよ! そして、わたしは亡くなった旦那様の娘なのよ!)
だが、やはりヴァイオレットの手前、それははばかられ、マルゴはもどかしげにフランソワをヴェールごしに見上げるしかない。
「今日は……都合が悪くて……明日には必ずお伺いします」
今はその言質を取るのが精一杯と踏んだのか、ヴァイオレットはそれ以上は言うこともなく、三人は馬車を待たせている辺りまで歩きつづける。少し離れてマリアがついてきた。
「では、明日の午後、かならずブルーム邸にいらしてね」
「はい……」
フランソワは不承不承というふうに頷く。その気の乗らなさそうな仕草を見ていると、マルゴは泣き出したくなったが、その場では何も言えず、ヴォイオレットに押されるようにして馬車に乗りこむしかなかった。
いったんそう思うと、その想いはほとんど真実となってマルゴのなかで破裂する。
マルゴは今や確信していた。自分とクララは間違いなくブルーム氏の血をひく母親違いの姉妹なのだ。
父は亡くなったと母から聞かされていたが、おそらく嘘だろう。いや、母に夫はいたかもしれないが、その男は死んだのか、どこかへ行ってしまったのか。そして母はブルーム氏と、どういう経緯でか愛しあい、マルゴを産んだのだ。主人が使用人に手をつけるというのはよくある話だ。
葬式が終わると人々は挨拶を交わしあい散っていく。見知らぬブルーム氏の友人知人から哀悼を受け、マルゴは彼らの慰めの言葉にかえす言葉もなくただ頷いていたが、それも父親を亡くしたばかりの少女なら無理もないと、客たちはいっそうの同情をこめてマルゴを憐憫の目で見た。最後まで残っていたフランソワに、ヴァイオレットは静かに詰め寄る。
「フランソワ、今後のことについて話し合いましょう。……ここで言うのもなんですけれど、あなただって、こうなったら紳士として責任を取らないわけにはいかないでしょう?」
フランソワは無言だが、その目はヴァイオレットではなくマルゴに向けられている。マルゴは、突然、フランソワにすべて打ち明けたくなった。
(わたしはクララじゃない、マルゴなのよ! そして、わたしは亡くなった旦那様の娘なのよ!)
だが、やはりヴァイオレットの手前、それははばかられ、マルゴはもどかしげにフランソワをヴェールごしに見上げるしかない。
「今日は……都合が悪くて……明日には必ずお伺いします」
今はその言質を取るのが精一杯と踏んだのか、ヴァイオレットはそれ以上は言うこともなく、三人は馬車を待たせている辺りまで歩きつづける。少し離れてマリアがついてきた。
「では、明日の午後、かならずブルーム邸にいらしてね」
「はい……」
フランソワは不承不承というふうに頷く。その気の乗らなさそうな仕草を見ていると、マルゴは泣き出したくなったが、その場では何も言えず、ヴォイオレットに押されるようにして馬車に乗りこむしかなかった。
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