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薔薇二輪 二
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アバロはブルーム邸の居間でマリアが出してくれたコーヒーをすすりながら首を振った。この屋敷の二階で殺人事件と、庭で自殺が起こったのだと思うと、常時ならさぞ気味悪く思ったことだろうが、つい先月までの混乱と騒動と、街のあちこちにたれこめていた死臭を思い出すと、もはやどうでもいい気持ちになる。
(しかし、いったいあの二人のあいだに何があったのか)
葬式のときに会ったブルーム氏の娘だと思っていた少女は、実は田舎から連れてきた女中のマルゴだということはわかった。どういう事情でクララと名乗っていたのかはわからないが、彼女をそう紹介したヴァイオレット女史は死んでしまい、マルゴも自殺してしまった。警察の取り調べでは、どうやらヴァイオレットは犯人と揉みあった結果、壁に頭を叩きつけられ、打ちどころが悪く亡くなったようだ。そして犯人とされるマルゴは、おそらくそのことを悔やんでの自殺だろう、と。
「どうも使用人同士、いろいろあったようですね。聞いた話じゃ、ヴァイオレットはけっこう他の使用人にきつかったというし」
向かいあって座っている弁護士はアバロの言葉に頷いた。
「賢そうな女性だったが、気性が激しいというのはブルーム氏からも聞いていたがね。もしかしたら、そのマルゴという女中は苛められていたのかしれん。あ、これは、お嬢さん、」
二人は庭から入ってきたクララを見て同時に立ち上がった。
「こんにちは」
首をかしげて挨拶する少女は、庭から七月の光を連れてきたように輝いている。
(これは、まるで白薔薇の精だな……)
アバロは感嘆した。つい、自分が十歳若く、独身だったら、などと他愛もないことを考え内心苦笑してしまった。
白いドレスが、いっそう彼女の初々しい美貌を引き立てる。後ろからおずおずとついてきた老女は、田舎から一緒に来た女中のベルトで、いかにも田舎の老女らしくもっさりして、落ち着かなさそうだ。いくら治安が回復したからといって、クララ一人をパリにやるのが心配でついてきたのだという。
「お嬢さん、今回は大変なことで……。お父上のことといい、使用人たちのことといい」
アバロの言葉にクララは溜息をつく。
「……なんだか、今でも悪い夢を見ているようです。父の葬式にも出れなくて」
その小首をかしげる仕草がなんとも可憐で、かつ、大人になりかけている娘特有の爽やかな色香が匂いたち、アバロはまたも感嘆した。
(しかし、いったいあの二人のあいだに何があったのか)
葬式のときに会ったブルーム氏の娘だと思っていた少女は、実は田舎から連れてきた女中のマルゴだということはわかった。どういう事情でクララと名乗っていたのかはわからないが、彼女をそう紹介したヴァイオレット女史は死んでしまい、マルゴも自殺してしまった。警察の取り調べでは、どうやらヴァイオレットは犯人と揉みあった結果、壁に頭を叩きつけられ、打ちどころが悪く亡くなったようだ。そして犯人とされるマルゴは、おそらくそのことを悔やんでの自殺だろう、と。
「どうも使用人同士、いろいろあったようですね。聞いた話じゃ、ヴァイオレットはけっこう他の使用人にきつかったというし」
向かいあって座っている弁護士はアバロの言葉に頷いた。
「賢そうな女性だったが、気性が激しいというのはブルーム氏からも聞いていたがね。もしかしたら、そのマルゴという女中は苛められていたのかしれん。あ、これは、お嬢さん、」
二人は庭から入ってきたクララを見て同時に立ち上がった。
「こんにちは」
首をかしげて挨拶する少女は、庭から七月の光を連れてきたように輝いている。
(これは、まるで白薔薇の精だな……)
アバロは感嘆した。つい、自分が十歳若く、独身だったら、などと他愛もないことを考え内心苦笑してしまった。
白いドレスが、いっそう彼女の初々しい美貌を引き立てる。後ろからおずおずとついてきた老女は、田舎から一緒に来た女中のベルトで、いかにも田舎の老女らしくもっさりして、落ち着かなさそうだ。いくら治安が回復したからといって、クララ一人をパリにやるのが心配でついてきたのだという。
「お嬢さん、今回は大変なことで……。お父上のことといい、使用人たちのことといい」
アバロの言葉にクララは溜息をつく。
「……なんだか、今でも悪い夢を見ているようです。父の葬式にも出れなくて」
その小首をかしげる仕草がなんとも可憐で、かつ、大人になりかけている娘特有の爽やかな色香が匂いたち、アバロはまたも感嘆した。
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