23 / 26
一章 第二部
一章 第二部 魔眼、そして告白
しおりを挟む
「目を開けてください。起きてはいけませんが、目は開けてください。」
アヌビスが僕を呼んでいる。
もう朝になったのだろうか。
昨日はあんなに寝坊したくせに……
まあ、しょうがないから起きてやるか。
「なに? もう朝?」
半目で僕は尋ねる。正直、まだ眠っていたい。
「寝ぼけて…… ますね。ここは夢です。私は夢の中で、あなたに会いに来ました。」
「夢? …… 何その格好? コスプレ?」
あ、思い出した。
しかし、それと同時にアヌビスの格好に完全に意識が吸い取られてしまう。
きちんと目を開けると、そこには制服を着たアヌビスの姿があった。
部室にいるときも見たことはあったが、僕にとっては、アヌビスとよく話すこの世界の格好の方が馴染み深かった。
「違います! あなたの深層心理では…… って、そんなことはどうでもいいんです!
あなたには、これからも生き残ってもらわなければなりません。なので、いまからあなたが覚えられる範囲で、私が教えられる全ての魔法をお教えしようと思います。が!」
……が?
アヌビスは僕の目を真剣に見つめて、こう言った。
「時雨さん、ちょっと抱きついてもいいですか?」
「は?」
アヌビスは、一体どうしてしまったのだろう。
「いやいやいやいや! え!? ちょっと待…… ……僕たち、そんな関係だったっけ?」
「え? ……あ! ……日本では、確か抱擁はそういう意味でしたね……」
慌てながら挙動不審にいう僕に、アヌビスは今更気付いたように赤くなった。
あれ? アヌビスってアメリカの方の人だっけ?
ちなみにアメリカと言ったのは、アメリカの人々は誰かと出会うたびに抱擁しているイメージがあるからだ。あくまで個人の見解だが。
「……ま、まあ別に、僕はアヌビスのことが嫌いなわけじゃないし、してもいいけど、どんな理由なんだ?」
「あ…… ま、まあ、実践してみれば分かりますよ! では!」
「え? あ? いきなり!?」
受け入れる真意もままならないまま、アヌビスは僕の胸に飛び込んできた。
そして、僕の瞳をじっと見つめる。
「ちょ、そんなに近くで見られると恥ずかし…… それに近いから息が……!」
かかる。
なんだかものすごい速さで大人の階段を駆け上がっていっているみたいだ。
実際は数センチの変化だと思うが。
「なんと…… コレは凄いですね…… なるほどなるほど……」
そんなどぎまぎとした僕とは対照的に、アヌビスは興味深そうに僕の瞳を見つめてきた。
なんだ? 何かあるのか?
「あの…… アヌビス……? そろそろいいんじゃ……?」
「ふむふむ…… そういうことですか…… あ、すいません。今離れます」
……アヌビスは最後まで冷静だった。
くそう。一人でどぎまぎしている僕が馬鹿みたいじゃないか。
「で……? 何が分かったんだ?」
しかし、そんなことを悟られてしまってはいよいよ本当に顔から火が出るほど恥ずかしい。僕は努めて冷静にアヌビスに尋ねる。
「いえ。結果が出るのはもうすぐ後です…… あ、来ました。時雨さんも腕、見てみてください」
腕? さっき何処かにぶつけでもしたのかなんだか少し痛いくらいで特に変わった様子はないのだが…… あれ?
僕が右腕を眺めていると、そこになにやら小さな黒いシミが浮かんできていることに気がついた。
そしてその面積は、次第に大きくなっていく。
「ちょ、アヌビス。これは一体……?」
「よく見てみてください。色々書いてますよ?」
アヌビスの言葉に、僕は疑問に思いながらも突如自分の腕に現れた黒いシミをじっと見つめる。……しかし、書いているとはどういう……?
「な、なんだこれ!?」
よく見ると、僕の腕に現れた黒いシミは文字だった。
なんだか、模様のようなものに縁取られて、表のようなものが書かれている。
そこにある、記号の数々。
しかし僕には、その意味が理解できなかった。
「……どうやって読むんだ?」
「あ、そうでしたね。時雨さん、この世界の言葉読めないんでしたっけ」
アヌビスははっと気付いたように言う。僕もあまり気にしてはいなかったが、確かにこの世界に来てからこの世界の文字に触れたことはない。
もしかして、この文字も魔法みたいにすぐ読めるようになるのだろうか。
だとしたら……
「じゃあ、一応読み上げてあげますが、じぶんでもきちんと勉強してくださいね? あ、コレ本です」
アヌビスから渡されたのは、辞書のように分厚い本だった。
……やっぱり、そんな上手くはいかないよな……
僕の落胆をよそに、アヌビスは僕の腕の表示にさっと目を通し……
「は!?」
「な、なんだ!? 何か悪いことでも書いてあったのか!?」
ただ事ではなさそうなアヌビスの声。しかもその横顔は真っ青だった。
「ま、魔眼が……」
「癌!? マジかよおい嘘だろ!?」
「違います! っていうか慌てすぎて口調おかしくなってますよ? 魔眼です! マ、ガ、ン!」
「魔眼……?」
ひとしきり馬鹿な勘違いを続けた僕に、アヌビスは呆れたように叫ぶのだった。
「魔眼って、もしかして…… いろんな能力を持った目のことか? 相手の能力を写したりする有名な…… あの魔眼?」
若干の期待を込めて聞く僕。
さっきは裏切られてしまったが、ここは異世界なのだ。もしかしたら僕もチートなスキルを……!
「いえ。ああいうのとは全くの別物です」
手に入れられることはないようだった。
先ほどから引き続き、二回連続で裏切られたような気持ちになる僕。
まあ、こっちが勝手に期待しただけなのだが。
「じゃ、じゃあ、どういう魔眼なんだ?」
「えっと…… これは『暗視』ですね…… 暗いところでものが見える、結構便利な魔眼ですよ」
「……それはそのうち進化して強力な魔法を使えるようになったりは……?」
「しません」
「じゃ、じゃあ、暗視っていうのはこの世界では珍しかったり……?」
「しません。というか、魔法としてすでに確立されているので、あってもなくても変わりません。あ、でも、魔眼があれば魔力の補充無しに一日中暗視魔法が使えているような状体で……」
「……もういいよ。僕の使える魔法と、覚えられる魔法はどうなってるんだ?」
現実に打ちのめされたようになり、それ以上アヌビスの言葉を聞きたくなくなってしまった。そんなことよりも楽しい話をしよう。
「分かりました。魔法は…… お、さすが魔眼持ちだけあってかなりの量の魔法を覚えられますね」
「そうなのか!?」
さっきまでマイナスだった感情の数値が、一気にプラスに傾いたようだった。
そうか。魔法。魔法か……
「……お、これは……? やりましたよ時雨さん!」
「おう! 何がやったんだ!?」
突然のハイテンションなアヌビスの声にも、同じようにハイテンションに返してしまえるくらい、今の僕は機嫌がいい。
我ながら感情の変化が激しいやつだとは思うが、こればかりは仕方がなかった。
しかし。
「私が一番教えたかった魔法、あなたも使えるんです!」
「そうか! それは、よかった…… な?」
アヌビスのこの言葉で、何故か警戒心のようなものが浮かんでくる。
この身体。つまりデュラハンになってから、なんだか勘が鋭くなったような気がするが、今まさに、その勘が働いていた。
しかし、アヌビスはそんな僕にお構いなしに、張り切ってなにやらしている。
そして。
「よく見ていてくださいね! 大丈夫! 多少の破壊力でも、ここは夢の中です! では!
『審判の刻は来た。我に従いし煉獄の眷属よ、今こそここに集い、紅蓮の火柱を見せたまえ! 舞え! 我が願いは天をも焦がす。我が想いは星をも砕く。貴様らに永遠の不滅を与えよう。
死してなお、 我が望みを叶えたまえ!〈ジャッジメント・デス・ファイア〉!』」
アヌビスがそう唱え終えた瞬間、僕たちの目の前に炎が蜷局を巻きはじめた。
そしてそれはどんどん大きく、そして高密度になっていく。
「うおお…… これは凄いな……」
そしてその炎の塊が僕の視界を覆い尽くさんばかりにふくれあがった瞬間。
「『その炎を纏いて』」
アヌビスは唱え、右手を素早く動かす。
刹那。
僕の視界は、真っ白になった。
「……!!」
あまりの衝撃に、僕は跳ね起きた。
周囲を見回すと、そこにはテントと……
「うわっ!?」
驚いて飛び退く、人影があった。
もう日が昇って数時間くらいたったところだろうか。
周囲はかなり明るくなっていた。
「……?」
寝起きからの突然の事態。そして先ほどの衝撃との連鎖で、僕の頭は目の前の景色を受け取るのに、かなりの時間を要しているようだ。
分かりやすく言うと、僕は寝ぼけていた。
「えっと……」
何も言わない僕の前で困ったようにしている人がいることは認識できる。
だがもう少し待ってもらわないと……
「な、なあ! 君!」
何を言っているんだろう?
「ボクと結婚しないかい?」
何を……
「はあぁぁぁぁぁぁぁ!?」
一気に、目が覚めた。
◆◇◆
「う…… あれ……? 時雨さん……? 駄目じゃないですか。まだ教えるべ、き……」
夢の訓練の途中で突然何処かへ行ってしまった時雨さんを追って、私は目覚めた。
頭が痛い。無理矢理目覚めるという行為にはそれ相応のダメージもあるのだから、気をつけてほしい。が、そんなことを言える雰囲気ではなかった。
「な、なあ! 君! ボクと結婚しないかい?」
寝ぼけたような時雨さんの前で……
昨日助けた人が結婚の申し込みをしていたのだ。
それも時雨さんに対して。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ!?」
流石の衝撃に時雨さんもすっかり起きたらしい。
「ぼ、僕と結婚!? いきなりどういう話!?」
そしてようやく私の存在に気がついたのか、助けを求めるようにこちらを見てくる。
どういう話か。それは私も聞きたい。
アヌビスが僕を呼んでいる。
もう朝になったのだろうか。
昨日はあんなに寝坊したくせに……
まあ、しょうがないから起きてやるか。
「なに? もう朝?」
半目で僕は尋ねる。正直、まだ眠っていたい。
「寝ぼけて…… ますね。ここは夢です。私は夢の中で、あなたに会いに来ました。」
「夢? …… 何その格好? コスプレ?」
あ、思い出した。
しかし、それと同時にアヌビスの格好に完全に意識が吸い取られてしまう。
きちんと目を開けると、そこには制服を着たアヌビスの姿があった。
部室にいるときも見たことはあったが、僕にとっては、アヌビスとよく話すこの世界の格好の方が馴染み深かった。
「違います! あなたの深層心理では…… って、そんなことはどうでもいいんです!
あなたには、これからも生き残ってもらわなければなりません。なので、いまからあなたが覚えられる範囲で、私が教えられる全ての魔法をお教えしようと思います。が!」
……が?
アヌビスは僕の目を真剣に見つめて、こう言った。
「時雨さん、ちょっと抱きついてもいいですか?」
「は?」
アヌビスは、一体どうしてしまったのだろう。
「いやいやいやいや! え!? ちょっと待…… ……僕たち、そんな関係だったっけ?」
「え? ……あ! ……日本では、確か抱擁はそういう意味でしたね……」
慌てながら挙動不審にいう僕に、アヌビスは今更気付いたように赤くなった。
あれ? アヌビスってアメリカの方の人だっけ?
ちなみにアメリカと言ったのは、アメリカの人々は誰かと出会うたびに抱擁しているイメージがあるからだ。あくまで個人の見解だが。
「……ま、まあ別に、僕はアヌビスのことが嫌いなわけじゃないし、してもいいけど、どんな理由なんだ?」
「あ…… ま、まあ、実践してみれば分かりますよ! では!」
「え? あ? いきなり!?」
受け入れる真意もままならないまま、アヌビスは僕の胸に飛び込んできた。
そして、僕の瞳をじっと見つめる。
「ちょ、そんなに近くで見られると恥ずかし…… それに近いから息が……!」
かかる。
なんだかものすごい速さで大人の階段を駆け上がっていっているみたいだ。
実際は数センチの変化だと思うが。
「なんと…… コレは凄いですね…… なるほどなるほど……」
そんなどぎまぎとした僕とは対照的に、アヌビスは興味深そうに僕の瞳を見つめてきた。
なんだ? 何かあるのか?
「あの…… アヌビス……? そろそろいいんじゃ……?」
「ふむふむ…… そういうことですか…… あ、すいません。今離れます」
……アヌビスは最後まで冷静だった。
くそう。一人でどぎまぎしている僕が馬鹿みたいじゃないか。
「で……? 何が分かったんだ?」
しかし、そんなことを悟られてしまってはいよいよ本当に顔から火が出るほど恥ずかしい。僕は努めて冷静にアヌビスに尋ねる。
「いえ。結果が出るのはもうすぐ後です…… あ、来ました。時雨さんも腕、見てみてください」
腕? さっき何処かにぶつけでもしたのかなんだか少し痛いくらいで特に変わった様子はないのだが…… あれ?
僕が右腕を眺めていると、そこになにやら小さな黒いシミが浮かんできていることに気がついた。
そしてその面積は、次第に大きくなっていく。
「ちょ、アヌビス。これは一体……?」
「よく見てみてください。色々書いてますよ?」
アヌビスの言葉に、僕は疑問に思いながらも突如自分の腕に現れた黒いシミをじっと見つめる。……しかし、書いているとはどういう……?
「な、なんだこれ!?」
よく見ると、僕の腕に現れた黒いシミは文字だった。
なんだか、模様のようなものに縁取られて、表のようなものが書かれている。
そこにある、記号の数々。
しかし僕には、その意味が理解できなかった。
「……どうやって読むんだ?」
「あ、そうでしたね。時雨さん、この世界の言葉読めないんでしたっけ」
アヌビスははっと気付いたように言う。僕もあまり気にしてはいなかったが、確かにこの世界に来てからこの世界の文字に触れたことはない。
もしかして、この文字も魔法みたいにすぐ読めるようになるのだろうか。
だとしたら……
「じゃあ、一応読み上げてあげますが、じぶんでもきちんと勉強してくださいね? あ、コレ本です」
アヌビスから渡されたのは、辞書のように分厚い本だった。
……やっぱり、そんな上手くはいかないよな……
僕の落胆をよそに、アヌビスは僕の腕の表示にさっと目を通し……
「は!?」
「な、なんだ!? 何か悪いことでも書いてあったのか!?」
ただ事ではなさそうなアヌビスの声。しかもその横顔は真っ青だった。
「ま、魔眼が……」
「癌!? マジかよおい嘘だろ!?」
「違います! っていうか慌てすぎて口調おかしくなってますよ? 魔眼です! マ、ガ、ン!」
「魔眼……?」
ひとしきり馬鹿な勘違いを続けた僕に、アヌビスは呆れたように叫ぶのだった。
「魔眼って、もしかして…… いろんな能力を持った目のことか? 相手の能力を写したりする有名な…… あの魔眼?」
若干の期待を込めて聞く僕。
さっきは裏切られてしまったが、ここは異世界なのだ。もしかしたら僕もチートなスキルを……!
「いえ。ああいうのとは全くの別物です」
手に入れられることはないようだった。
先ほどから引き続き、二回連続で裏切られたような気持ちになる僕。
まあ、こっちが勝手に期待しただけなのだが。
「じゃ、じゃあ、どういう魔眼なんだ?」
「えっと…… これは『暗視』ですね…… 暗いところでものが見える、結構便利な魔眼ですよ」
「……それはそのうち進化して強力な魔法を使えるようになったりは……?」
「しません」
「じゃ、じゃあ、暗視っていうのはこの世界では珍しかったり……?」
「しません。というか、魔法としてすでに確立されているので、あってもなくても変わりません。あ、でも、魔眼があれば魔力の補充無しに一日中暗視魔法が使えているような状体で……」
「……もういいよ。僕の使える魔法と、覚えられる魔法はどうなってるんだ?」
現実に打ちのめされたようになり、それ以上アヌビスの言葉を聞きたくなくなってしまった。そんなことよりも楽しい話をしよう。
「分かりました。魔法は…… お、さすが魔眼持ちだけあってかなりの量の魔法を覚えられますね」
「そうなのか!?」
さっきまでマイナスだった感情の数値が、一気にプラスに傾いたようだった。
そうか。魔法。魔法か……
「……お、これは……? やりましたよ時雨さん!」
「おう! 何がやったんだ!?」
突然のハイテンションなアヌビスの声にも、同じようにハイテンションに返してしまえるくらい、今の僕は機嫌がいい。
我ながら感情の変化が激しいやつだとは思うが、こればかりは仕方がなかった。
しかし。
「私が一番教えたかった魔法、あなたも使えるんです!」
「そうか! それは、よかった…… な?」
アヌビスのこの言葉で、何故か警戒心のようなものが浮かんでくる。
この身体。つまりデュラハンになってから、なんだか勘が鋭くなったような気がするが、今まさに、その勘が働いていた。
しかし、アヌビスはそんな僕にお構いなしに、張り切ってなにやらしている。
そして。
「よく見ていてくださいね! 大丈夫! 多少の破壊力でも、ここは夢の中です! では!
『審判の刻は来た。我に従いし煉獄の眷属よ、今こそここに集い、紅蓮の火柱を見せたまえ! 舞え! 我が願いは天をも焦がす。我が想いは星をも砕く。貴様らに永遠の不滅を与えよう。
死してなお、 我が望みを叶えたまえ!〈ジャッジメント・デス・ファイア〉!』」
アヌビスがそう唱え終えた瞬間、僕たちの目の前に炎が蜷局を巻きはじめた。
そしてそれはどんどん大きく、そして高密度になっていく。
「うおお…… これは凄いな……」
そしてその炎の塊が僕の視界を覆い尽くさんばかりにふくれあがった瞬間。
「『その炎を纏いて』」
アヌビスは唱え、右手を素早く動かす。
刹那。
僕の視界は、真っ白になった。
「……!!」
あまりの衝撃に、僕は跳ね起きた。
周囲を見回すと、そこにはテントと……
「うわっ!?」
驚いて飛び退く、人影があった。
もう日が昇って数時間くらいたったところだろうか。
周囲はかなり明るくなっていた。
「……?」
寝起きからの突然の事態。そして先ほどの衝撃との連鎖で、僕の頭は目の前の景色を受け取るのに、かなりの時間を要しているようだ。
分かりやすく言うと、僕は寝ぼけていた。
「えっと……」
何も言わない僕の前で困ったようにしている人がいることは認識できる。
だがもう少し待ってもらわないと……
「な、なあ! 君!」
何を言っているんだろう?
「ボクと結婚しないかい?」
何を……
「はあぁぁぁぁぁぁぁ!?」
一気に、目が覚めた。
◆◇◆
「う…… あれ……? 時雨さん……? 駄目じゃないですか。まだ教えるべ、き……」
夢の訓練の途中で突然何処かへ行ってしまった時雨さんを追って、私は目覚めた。
頭が痛い。無理矢理目覚めるという行為にはそれ相応のダメージもあるのだから、気をつけてほしい。が、そんなことを言える雰囲気ではなかった。
「な、なあ! 君! ボクと結婚しないかい?」
寝ぼけたような時雨さんの前で……
昨日助けた人が結婚の申し込みをしていたのだ。
それも時雨さんに対して。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ!?」
流石の衝撃に時雨さんもすっかり起きたらしい。
「ぼ、僕と結婚!? いきなりどういう話!?」
そしてようやく私の存在に気がついたのか、助けを求めるようにこちらを見てくる。
どういう話か。それは私も聞きたい。
0
あなたにおすすめの小説
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした
まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」
王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。
大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。
おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。
ワシの怒りに火がついた。
ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。
乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!!
※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる