転デュラ! 転生したらデュラハンだったけど、あんまり問題なかったよ!

風雪弘太

文字の大きさ
24 / 26
一章 第二部

第一章 第二部 契約魔法

しおりを挟む
「ちょちょちょっと待て!」

 僕はそう言って、いきなり結婚を迫ってきた少女から一旦離れた。
 かなり心臓がバクバクしている。

 お前、異性に近づかれただけでそんなになるとか、どれだけチキンなんだ?
 と、笑われてしまいそうだが、仕方ないのだ。
 僕の魔の前で不思議そうにしているこの少女は、最高の美少女だったのだから。
  
 片目が紫、もう片方が赤いオッドアイの瞳が、僕のことを見てくる。
 
 そしてそれは何か切羽詰まっている、そんな感じの視線だった。

 もちろん、アヌビスもかなりの美少女だ。それは認めよう。

 でも、少し外見が幼い。僕より二つ三つ年下のように見える。
 だから今まで、後輩とぐらいにしか思っていなかった。

 口調も丁寧だし、事実後輩だったからだ。

 しかし、この目の前の少女は違った。
 薄く紫がかった中くらいの長さの髪が風になびいている。

……くそっ! これ以上見た目に惑わされては駄目だ! ここはなんとしてでも冷静に……

「あの……」
「ちょっと待てい!!!」

 目の前の少女が再び僕に話しかけようとしたその瞬間、アヌビスの大声がその行動を遮った。
……ありがとう。アヌビス。

 何でもっと早く助けてくれなかったんだとも言いたいが、今はこの状況を打破してくれたことに感謝だ。

「いきなりなんなんですかあなたは!? いきなり結婚の申し込み!? そういうのはしかるべき順序を踏んでからしてください!」

 ……しかるべき順序を踏めばいいのか…… ま、そりゃそうか。
 アヌビスがどうこう言うようなことではない…… んだろう。きっと。

「しかし…… ボクはしかるべき順序の一環としてこの申し込みをしているんだ! なんなら君に申し込んだっていいんだ。だから、ボクと早く……」

「な!? いえ! いくらそんな一人称使ったって、性別はごまかせませんよ!?」

「ボクはそのくらい切羽詰まってるんだ! それに大体、君たちもボクと似たような状況だろう!? 早く! ボクと! どっちでもいいから!」

 え……? この人今聞き捨てならないことを言ったような気がする。
 なんだか、結婚するのは誰でもいい…… みたいなこと言ってなかったか?

 ……そうか。いや、まあそうだろう。僕たちはまだ、名前も知らない他人だ。

 一回命を救ったぐらいで簡単に惚れてくれるような人は小説の世界にしかいないのだ。
 それを理解すると、なんだか無性に静かな心になれた。

「……まずは一旦落ち着こう。あんたも、きちんと理由を説明してくれないと……」

 僕は静かな心で少女に言った。

 しかし、そんな僕の言葉に、少女はあり得ないといった顔をする。

「も、もしかして君たち、ボクの言ってることが分かってないのかい?」
「ええ。全然分かってないですね! それに分かりたくもないです! いきなり結婚の要求をするような人のことなんて!」

「……君たち…… それでどうやって今まで生きてきたんだい?」

 アヌビスが機嫌悪そうにまくし立てると、少女は呆れながら呟くのだった。

◆◇◆

「……なあ、これは必要なのか?」

 僕は思い顎を必死に動かしながら少女に聞いた。
 
 僕たちの下の地面にはよく分からない魔方陣が現れている。

 こいつ曰く、『重力魔法』で魔方陣の中の重力が通常の倍から三倍になるという者だった。少女は涼しげな顔でそれに答える。

「もちろんだよ。ちなみにこの魔法、ボクも受けてるからね? これで状況はフェアだ」

 ……涼しげな顔の少女と、かなり苦しい僕。

 とてもフェアだとは思えなかったが、隣にいるアヌビスは涼しい顔だった。

「では、まずは自己紹介でもしますか?」

 先ほどよりは少し落ち着いたらしいアヌビス。
 冷静に司会進行を担当してくれる。

「まずは…… ボクからしようか。ボクは元魔王。名前はないよ」

 あっさりとその少女は自己紹介を終わらせる。
 そうか。元魔王なのか……

「「元魔王!?」」

 ようやく情報がきちんと伝わり、僕とアヌビスは揃って驚く。
 あまりにも普通のように言われたので、一瞬気付かなかった。

 まさか、探していた人物にこんな早く会えるとは。

 
「しかし、名前がないっていうのもそれはそれで呼びづらいな…… なあ、お前は前になんて呼ばれてたんだ?」

 僕のそんな言葉に、元魔王は少し悩んだ様子を見せる。

「そうだね…… 元々ボクは第三千二百十六代目の魔王にギャンブルで圧勝して魔王になっただけだったから、特に異名とかもなかったしな…… それに、この前部下たちにぼこぼこにされて、追い出されちゃったし」
「それは……」

 なんとも言えない状況だ。こいつがいいのか悪いのか。ギャンブルで魔王を決めるって言うのは正直どうなのか、色々なツッコミをしたかったが、僕は全てを飲み込む。

「じゃ、マオで」
「ん? マオって…… あ! もしかして! ボクの名前かい?」
「……えらく適当ですね……」

 はっとした後嬉しそうに言う元魔王と、呆れたように呟くアヌビス。

「僕にはネーミングセンスがないから、これくらいでいいんだよ。なあ、おまえ、この名前でいいか?」
「……うん。いやー なんだか人に名前をつけてもらうって…… いや! 何でもないよ!」

 この反応は、マオと言う名前でいいという意味だろうか?
 それにしても何を言いよどんだのか気になるな…… 顔もちょっと赤いし。

「じゃあ、僕の自己紹介もしよう。僕の名前は神ざ…… 時雨。時雨って言うんだ。今はここから北北西にあるらしい町に向かって歩いてるところだ」

 柊と乃綾のことは、別に話さなくていいだろう。

「じゃあ、我も名乗ろうか! 我が名はアヌビいてっ!? なにすんですか時雨さん!」

 またおかしな方向に暴走しそうになったアヌビスを僕は手刀で止めた。

「普通に自己紹介しろ」
「……はい」

 アヌビスは観念したのか、普通の自己紹介をした。

◆◇◆

「さて、では何故結婚の申し込みをしたのか、その理由を教えてもらおうじゃあありませんか!」

 ようやく本題だ。
 と言うか、正直肩がこってきたのでこの魔法も解いてほしいのだが。

「わかったよ。まあ、結婚って言うのはしかるべき手順なのさ」
「……どういうことです?」
「ボクは君たちのどちらかと、『契約魔法』を結びたいと思っている
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

元救急医クラリスの異世界診療録 ―今度こそ、自分本位に生き抜きます―

やまだ
ファンタジー
朝、昼、夜を超えてまた朝と昼を働いたあの日、救急医高梨は死んでしまった。比喩ではなく、死んだのだ。 次に目覚めたのは、魔法が存在する異世界・パストリア王国。 クラリスという少女として、救急医は“二度目の人生”を始めることになった。 この世界では、一人ひとりに魔法がひとつだけ授けられる。 クラリスが与えられたのは、《消去》の力――なんだそれ。 「今度こそ、過労死しない!」 そう決意したのに、見過ごせない。困っている人がいると、放っておけない。 街の診療所から始まった小さな行動は、やがて王城へ届き、王族までも巻き込む騒動に。 そして、ちょっと推してる王子にまで、なぜか気に入られてしまい……? 命を救う覚悟と、前世からの後悔を胸に―― クラリス、二度目の人生は“自分のために”生き抜きます。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...