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社長と秘書の戯れ
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──紗凪のミスが分かったとき。
ここまで来たのに徒労に終わったのかと言う気持ちはあったが、ヒューマンエラーはどこにでもある。
むしろ、このミスはまだ挽回が出来るミス。まだ良かったと思った。俺自身もまだまだ未熟で、周りに支えれて業務をこなしているのだ。
怒るような気持ちはなく。
周囲の緑美しい山の風景や風が心地よかったこともあり、気持ちがささくれる立つということは無かった。
しかし、紗凪の顔は真っ青になりこの世の終わりみたいな顔をしていた。
真面目な性格ゆえなのだろう。俺の好意に縋るようなことはなく、実直にミスを告げて頭を下げた。
そんなことをされると、逆に怒るどころか甘やかしたくなるが、本人が望んでないだろうと思い。
淡々と事後処理をするように指示を出した。
なんとか作業が出来るカラオケ店を見つけて、俺も溜まっていた稟議書に目を通して仕事を片付けることが出来たし、昼食に美味い名物も食べれた。
毎回このようなミスは流石に困るが、今日は良い気分転換が出来た。
紗凪もそう思ってくれたらとは思ったが。視線は俯きがち。ミスの尾が引いていると思った。
こればっかりは俺が手を差し出すより、時間が彼女の気持ちを宥めることが出来るのだろう。
もう少し俺を頼ってくれてもいいのにと思いながら、道の駅でお土産を買い込み。
帰路に着く途中、電車のダイヤと天気の乱れがあったが紗凪が事前に調べてくれたお陰で交通の乱れに巻き込まれることなく、家に帰れると思った。
ま、こんな日もあるだろう。
雨の中、紗凪を乗せての運転も悪くない。特に会話をしなくても二人だの空間だと思えばハンドルを動かす動作もいつもより滑らかだと感じる。
そうしていれば、紗凪はジュースをゆっくりと飲み。いつの間にかすぅすぅと寝息を立てていた。
「気を張っていたんだろうな……いつか寝顔を見たいと思っていたけど、今日見れるとは思わなかった」
小さく呟いて苦笑する。
じっくりと見ていたいが、あと一五分程で紗凪の家の近くに着く。
起こす必要もないだろうと、雨の音と紗凪の吐息を聞きながら車を走らせるのだった。
雨あしもだいぶ弱くなったころ、紗凪の家のマンション近くだとカーナビから音声案内が流れたとき。
助手席からぐすっと、くぐもった声がした。
最初。冷房が効き過ぎて紗凪の体が冷えてしまったのかと思った。ちらりと横を見たらなんと。紗凪がぐすぐすと、今にも泣き出しそうにしていてびっくりした。
「さ、紗凪。どうした? 目でも痛いのか?」
慌てて車を大通りから、適当に車道の幅が広い横道に入って車を慌てて止めた。
素早く紗凪に体を傾ける。
「ふっ、うっ。折角、ここまで、ちゃんとしてきたのに、こんなミスしちゃって、私のバカ。黄瀬さんに嫌われちゃう……っ」
さめざめと顔を覆ってそんなことを言うから、びっくりした。
「こんなミスで嫌う訳がないだろっ」
「っ、ほ、本当ですか? ミスした私でも、好きでいてくれますか……うぅ」
紗凪が涙を堪えてしゃくり上げ、そろりと顔を上げて俺を見た。
その顔は悲しみが広がっていたが、瞳はどこかとろんとしていて。頬は上気していた。
まるでホテルでの、あの夜を彷彿させる表情でドキッとした。
「俺は紗凪が何をしても、秘書とか関係なく好きだ。急にどうしたんだ。大丈夫か?」
そっと頬に手を当てると熱がこもっているような感じがした。
しかも紗凪が俺の手に縋るように両手で掴み。
「好きなんです。頑張るから、捨てないで……」と、悲しそうに呟いた。
──これは可愛いすぎる。
じゃなくて。
なんだか、しおらしいというか。いつも気を張っているものが取り払われたかなような、ありのままの紗凪ではないだろうかと、思ったとき。
コツンと、紗凪の膝から足元へと何かが転がった。なんだろうと思って見てみると道の駅で買ったジュースの缶……。
「違う。これは」
ばっとシートベルトを外して、片手で紗凪の足元にある缶を拾い上げる。
ポップなブドウのデザインの缶。しかし。
『特産山葡萄使用!』の大きな文字の下に『アルコール5%・これはお酒です』と書かれてあった。
手元の缶と、とろんとした紗凪の顔を見つめる。
これはお酒だったのか。しまった。ジュースだと思っていた。きっと紗凪もジュースだと思って飲んでしまったのだろう。
「紗凪、ひょっとして酔ってしまったとか?」
「酔ってなんか、いませんっ。そんなの秘書失格ですっ」
ぶんぶんと首を振る紗凪。いつもよりオーバーリアクション。
これは酔っていると思った。確か紗凪はアルコールに弱いと言っていたが、酔ったらどうなるとは聞いてなかった。
もしくは弱いと分かっていたから、どうなってしまうのか本人ですら知らなかったのでは?
そんなことを考えていたら紗凪に掴まれた手に。紗凪が祈るように頭を寄せた。
「お願いです。これからも頑張るから、ずっと秘書でいさせてください……っ」
──だめだ。やっぱり可愛い。
抱き締めて、キスしたくなる衝動をこらえる。
「俺は紗凪が秘書じゃなくても、紗凪とずっと一緒にいたいと思っている」
この想いに偽りはない。でも、今の紗凪にちゃんと想いは通じるのか多少不安だったが素直に打ち明けてみると。
「!……私もずっと一緒にいる」
紗凪は一瞬だけ、顔をびっくりさせながらも。
上気した顔ではにかみながら、体ごと俺の胸元へと寄せた。
密着する紗凪の柔らかな体。華奢な肩。
これはつい先日、俺が妄想した紗凪ではないか。
鼻先に微かな葡萄の香りまでして、こちらまで酩酊しまいそうになる。
「っ──。さ、紗凪。それは嬉しいけど、今はちょっとヤバい」
とか言いつつ、柔らかな体を押し戻す気にもなれず。このまま紗凪の華奢な背中に手を回してしまいそうになったとき。気が付いた。
ここは人気が少ないと言っても人が通る往来。前方から傘を差して歩く人影を見つけてしまい。人の目が気になった。
雨模様でも車内で抱き合っていたら流石に目立つだろう。
多分、紗凪はほろ酔いぐらいだとは思う。
そのうち意識がはっきりしそうだがこのまま、車内で密着するわけにも行かない。
そもそも俺がジュースと勘違いして買ってしまった手前もあり、介抱しなくてはと思った。
紗凪から家の部屋番号と鞄の中の鍵を確認して。素早く近くのパーキングに車を止めて、紗凪を抱き抱えて紗凪の家に駆け込むのだった。
紗凪の部屋はマンションの七階。角部屋だと聞き出して防犯ベルが付いた鍵も受け取り。
紗凪の腰を抱きながら、ガチャリと扉を開けて部屋の中に転がり込む。
「ま、まさか。こんな訪問になるとは。紗凪、悪いけど失礼するよ」
「ぅうん……どうぞ、お構いなく……」
くたりと頭を落としている紗凪。それでもなんとか会話が出来るあたりホッとする。
悪酔いは無さそうだと、思うが心配は心配である。
上がり込んだ部屋は広めのワンルームでユニセックスなナチュラルカラーのさっぱりした部屋。
部屋の奥のカーテンがフラワーブーケのデザインのもので、それが唯一女性らしさを感じた。
ベッドメイクがキチンとされているベッドに紗凪を横にして、キッチンからコップを借りて水を汲み。紗凪に渡す。
すると紗凪は素直に水をこくこくと飲み、ぱたりとベッドに沈んだ。
その表情はまだ夢心地みたいな表情で、ぼんやりと俺を見つめていた。
呼吸は整っているようで安心する。
「紗凪、大丈夫か」
「はい、多分、大丈夫……おおよそ……」
おおよそなのか。その言葉に苦笑して俺もベッドの横に座った。
空になったコップをサイドテーブルに置いて、自由になった手で紗凪の頭をしばらく撫でる。
外は雨が止んだようで雨音はなく。部屋には心地よい静けさが広がっていた。
「ちょっとした休憩だな」
ゆるりと視線をベッド横のデスクテーブルの上に向けると、専門書類にキセイ堂のパンフレット。小さなラックには料理の本にファッション雑誌。
紗凪の欠片が部屋に散らばっているようで、初めて来た部屋なのに親近感が湧く。
部屋の香りも紗凪のまとっている柔らかな香りと同じだと思っていると、紗凪のぼんやりとした瞳の焦点がだんだんと定まってきた気がした。ゆっくりと話し掛ける。
「俺以外の前で今後、酒を飲むの禁止だからな」
苦笑混じりで喋ると、こくりと素直に頷く紗凪。
「気持ち悪くはないか」と聞くとこれも首を縦にゆっくりと振った。
そして小さな声でごめんなさいと、眉根に深く皺を刻み。瞳を潤ませながらシーツに顔を埋めてしまった。
か細い声で「こんなに酔っ払ってしまって、死んじゃいたい」と言う声を聞いてしまう。
それは流石にオーバー過ぎるだろうと微笑しながら、紗凪の上体をゆっくりと起こしてベッドの上で抱きしめると、紗凪の体がびくっとした。
「こんなの酒の失敗の内に入らないから」
背中を優しく撫でても、紗凪は顔を上げず。俺の胸元ででも、だってと口籠もっていた。アルコールはだいぶ抜けて来たのだろう。
それでもまだ尾を引いているのか、抱き締めた体は体温が高めだと感じた。
「俺はどんな紗凪でも好きだ」
すると紗凪は迷いながらも、やっと顔を上げてにこっと笑った。
それはあまりにもあどけない無防備な表情。可愛いよりも、愛しいと思った瞬間にはキスをしていた。
ここまで来たのに徒労に終わったのかと言う気持ちはあったが、ヒューマンエラーはどこにでもある。
むしろ、このミスはまだ挽回が出来るミス。まだ良かったと思った。俺自身もまだまだ未熟で、周りに支えれて業務をこなしているのだ。
怒るような気持ちはなく。
周囲の緑美しい山の風景や風が心地よかったこともあり、気持ちがささくれる立つということは無かった。
しかし、紗凪の顔は真っ青になりこの世の終わりみたいな顔をしていた。
真面目な性格ゆえなのだろう。俺の好意に縋るようなことはなく、実直にミスを告げて頭を下げた。
そんなことをされると、逆に怒るどころか甘やかしたくなるが、本人が望んでないだろうと思い。
淡々と事後処理をするように指示を出した。
なんとか作業が出来るカラオケ店を見つけて、俺も溜まっていた稟議書に目を通して仕事を片付けることが出来たし、昼食に美味い名物も食べれた。
毎回このようなミスは流石に困るが、今日は良い気分転換が出来た。
紗凪もそう思ってくれたらとは思ったが。視線は俯きがち。ミスの尾が引いていると思った。
こればっかりは俺が手を差し出すより、時間が彼女の気持ちを宥めることが出来るのだろう。
もう少し俺を頼ってくれてもいいのにと思いながら、道の駅でお土産を買い込み。
帰路に着く途中、電車のダイヤと天気の乱れがあったが紗凪が事前に調べてくれたお陰で交通の乱れに巻き込まれることなく、家に帰れると思った。
ま、こんな日もあるだろう。
雨の中、紗凪を乗せての運転も悪くない。特に会話をしなくても二人だの空間だと思えばハンドルを動かす動作もいつもより滑らかだと感じる。
そうしていれば、紗凪はジュースをゆっくりと飲み。いつの間にかすぅすぅと寝息を立てていた。
「気を張っていたんだろうな……いつか寝顔を見たいと思っていたけど、今日見れるとは思わなかった」
小さく呟いて苦笑する。
じっくりと見ていたいが、あと一五分程で紗凪の家の近くに着く。
起こす必要もないだろうと、雨の音と紗凪の吐息を聞きながら車を走らせるのだった。
雨あしもだいぶ弱くなったころ、紗凪の家のマンション近くだとカーナビから音声案内が流れたとき。
助手席からぐすっと、くぐもった声がした。
最初。冷房が効き過ぎて紗凪の体が冷えてしまったのかと思った。ちらりと横を見たらなんと。紗凪がぐすぐすと、今にも泣き出しそうにしていてびっくりした。
「さ、紗凪。どうした? 目でも痛いのか?」
慌てて車を大通りから、適当に車道の幅が広い横道に入って車を慌てて止めた。
素早く紗凪に体を傾ける。
「ふっ、うっ。折角、ここまで、ちゃんとしてきたのに、こんなミスしちゃって、私のバカ。黄瀬さんに嫌われちゃう……っ」
さめざめと顔を覆ってそんなことを言うから、びっくりした。
「こんなミスで嫌う訳がないだろっ」
「っ、ほ、本当ですか? ミスした私でも、好きでいてくれますか……うぅ」
紗凪が涙を堪えてしゃくり上げ、そろりと顔を上げて俺を見た。
その顔は悲しみが広がっていたが、瞳はどこかとろんとしていて。頬は上気していた。
まるでホテルでの、あの夜を彷彿させる表情でドキッとした。
「俺は紗凪が何をしても、秘書とか関係なく好きだ。急にどうしたんだ。大丈夫か?」
そっと頬に手を当てると熱がこもっているような感じがした。
しかも紗凪が俺の手に縋るように両手で掴み。
「好きなんです。頑張るから、捨てないで……」と、悲しそうに呟いた。
──これは可愛いすぎる。
じゃなくて。
なんだか、しおらしいというか。いつも気を張っているものが取り払われたかなような、ありのままの紗凪ではないだろうかと、思ったとき。
コツンと、紗凪の膝から足元へと何かが転がった。なんだろうと思って見てみると道の駅で買ったジュースの缶……。
「違う。これは」
ばっとシートベルトを外して、片手で紗凪の足元にある缶を拾い上げる。
ポップなブドウのデザインの缶。しかし。
『特産山葡萄使用!』の大きな文字の下に『アルコール5%・これはお酒です』と書かれてあった。
手元の缶と、とろんとした紗凪の顔を見つめる。
これはお酒だったのか。しまった。ジュースだと思っていた。きっと紗凪もジュースだと思って飲んでしまったのだろう。
「紗凪、ひょっとして酔ってしまったとか?」
「酔ってなんか、いませんっ。そんなの秘書失格ですっ」
ぶんぶんと首を振る紗凪。いつもよりオーバーリアクション。
これは酔っていると思った。確か紗凪はアルコールに弱いと言っていたが、酔ったらどうなるとは聞いてなかった。
もしくは弱いと分かっていたから、どうなってしまうのか本人ですら知らなかったのでは?
そんなことを考えていたら紗凪に掴まれた手に。紗凪が祈るように頭を寄せた。
「お願いです。これからも頑張るから、ずっと秘書でいさせてください……っ」
──だめだ。やっぱり可愛い。
抱き締めて、キスしたくなる衝動をこらえる。
「俺は紗凪が秘書じゃなくても、紗凪とずっと一緒にいたいと思っている」
この想いに偽りはない。でも、今の紗凪にちゃんと想いは通じるのか多少不安だったが素直に打ち明けてみると。
「!……私もずっと一緒にいる」
紗凪は一瞬だけ、顔をびっくりさせながらも。
上気した顔ではにかみながら、体ごと俺の胸元へと寄せた。
密着する紗凪の柔らかな体。華奢な肩。
これはつい先日、俺が妄想した紗凪ではないか。
鼻先に微かな葡萄の香りまでして、こちらまで酩酊しまいそうになる。
「っ──。さ、紗凪。それは嬉しいけど、今はちょっとヤバい」
とか言いつつ、柔らかな体を押し戻す気にもなれず。このまま紗凪の華奢な背中に手を回してしまいそうになったとき。気が付いた。
ここは人気が少ないと言っても人が通る往来。前方から傘を差して歩く人影を見つけてしまい。人の目が気になった。
雨模様でも車内で抱き合っていたら流石に目立つだろう。
多分、紗凪はほろ酔いぐらいだとは思う。
そのうち意識がはっきりしそうだがこのまま、車内で密着するわけにも行かない。
そもそも俺がジュースと勘違いして買ってしまった手前もあり、介抱しなくてはと思った。
紗凪から家の部屋番号と鞄の中の鍵を確認して。素早く近くのパーキングに車を止めて、紗凪を抱き抱えて紗凪の家に駆け込むのだった。
紗凪の部屋はマンションの七階。角部屋だと聞き出して防犯ベルが付いた鍵も受け取り。
紗凪の腰を抱きながら、ガチャリと扉を開けて部屋の中に転がり込む。
「ま、まさか。こんな訪問になるとは。紗凪、悪いけど失礼するよ」
「ぅうん……どうぞ、お構いなく……」
くたりと頭を落としている紗凪。それでもなんとか会話が出来るあたりホッとする。
悪酔いは無さそうだと、思うが心配は心配である。
上がり込んだ部屋は広めのワンルームでユニセックスなナチュラルカラーのさっぱりした部屋。
部屋の奥のカーテンがフラワーブーケのデザインのもので、それが唯一女性らしさを感じた。
ベッドメイクがキチンとされているベッドに紗凪を横にして、キッチンからコップを借りて水を汲み。紗凪に渡す。
すると紗凪は素直に水をこくこくと飲み、ぱたりとベッドに沈んだ。
その表情はまだ夢心地みたいな表情で、ぼんやりと俺を見つめていた。
呼吸は整っているようで安心する。
「紗凪、大丈夫か」
「はい、多分、大丈夫……おおよそ……」
おおよそなのか。その言葉に苦笑して俺もベッドの横に座った。
空になったコップをサイドテーブルに置いて、自由になった手で紗凪の頭をしばらく撫でる。
外は雨が止んだようで雨音はなく。部屋には心地よい静けさが広がっていた。
「ちょっとした休憩だな」
ゆるりと視線をベッド横のデスクテーブルの上に向けると、専門書類にキセイ堂のパンフレット。小さなラックには料理の本にファッション雑誌。
紗凪の欠片が部屋に散らばっているようで、初めて来た部屋なのに親近感が湧く。
部屋の香りも紗凪のまとっている柔らかな香りと同じだと思っていると、紗凪のぼんやりとした瞳の焦点がだんだんと定まってきた気がした。ゆっくりと話し掛ける。
「俺以外の前で今後、酒を飲むの禁止だからな」
苦笑混じりで喋ると、こくりと素直に頷く紗凪。
「気持ち悪くはないか」と聞くとこれも首を縦にゆっくりと振った。
そして小さな声でごめんなさいと、眉根に深く皺を刻み。瞳を潤ませながらシーツに顔を埋めてしまった。
か細い声で「こんなに酔っ払ってしまって、死んじゃいたい」と言う声を聞いてしまう。
それは流石にオーバー過ぎるだろうと微笑しながら、紗凪の上体をゆっくりと起こしてベッドの上で抱きしめると、紗凪の体がびくっとした。
「こんなの酒の失敗の内に入らないから」
背中を優しく撫でても、紗凪は顔を上げず。俺の胸元ででも、だってと口籠もっていた。アルコールはだいぶ抜けて来たのだろう。
それでもまだ尾を引いているのか、抱き締めた体は体温が高めだと感じた。
「俺はどんな紗凪でも好きだ」
すると紗凪は迷いながらも、やっと顔を上げてにこっと笑った。
それはあまりにもあどけない無防備な表情。可愛いよりも、愛しいと思った瞬間にはキスをしていた。
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