バーサーカー戦記 ~転生した文系男子が学問の力で切り開く道~

むじょう

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故郷の景色

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[きぃえええええええええええい!!]
[しゃらあああああああああああああああああ!!]

木々が生い茂った3千メートル級の山脈。
その合間を縫うような平地に、ブラジュ領が存在した。

まだ夜明けとも言い切れない薄暗い時刻。
ブラジュ領の人々の目覚めは、鶏の声ではなく、男衆の発する雄たけびと共にやってくる。

首都。
現代日本人の感覚では、そう呼ぶには少々みすぼらしさがあるが、生産面積が決して広くない土地においては、
千人が集住するここ本村は、立派な首都である。

そんな、活気あふれる本村に、ガタイの良い立派な身なりの男が愛馬に騎乗して領内を視察している。

「さあ、ケイブ。ここが兵たちの修練場だ。我らブラジュ領の宝であり、力の源泉だ。」

男は、小さな男の子を抱えており、いつもより目線の高くなった男の子は目の前の光景を眺めていた。
まだ日が昇って間もなく、加えて標高が高いために、夏であっても寒さが痛覚に訴えるこの時間。

にもかかわらず目の前に広がるのは、元気に軍事教練をしている領民の姿だ。

(普通の領民が、職業軍人でもないのに自ら率先して軍事調練をする…
生首も庭に転がっていたから薄々思ってたけど、間違いない…!
戦闘民族だ!)

「す、すごい、みんな、げんきだね。。」
「はっはっは!ケイブもブラジュ家の男だ。将来必ず良き兵になるんだぞ!」

剣タコにまみれたゴツい手で頭をなでる父親と、少しの痛みに耐えつつ、されるがままの息子。
初めて見学する調練に、息子は驚いたというより、呆然としている様子だ。

目の前で雄たけびを上げている領民たちは、誰もが、鉄の剣を握りしめている。
一般的な日本刀よりも少々大きい。
あまり詳しくはないが、野太刀というものだろうか?
一応、刃がついているようだが、どちらかというと「ドでかい棍棒」に近い気がする。
ただ、大柄なブラジュ人にとっては、むしろちょうど良い大きさなのかもしれない。

といっても、そんな鉄の塊なんて、人が振り回せる重さじゃないはずだが、それを軽々と振り回す様は、なんとも現実離れしている。
FF7の〇ラウドが、バスターソードを機敏に振り回しているような感覚だ。
あれはフィクションだが、ここでは現実の人間がやってのけている。

また、彼らが「ドでかい棍棒のような剣」で打ち込んでいる相手は、ただの鉄の塊だ。
ちょうど人型サイズの円柱形のそれに向かって、
奇声を発しながら一心不乱に上段の構えから連撃を繰り出す様は、気が狂ったようにしか見えない。

ごく一部の人は、鉄の塊ではなく、太い丸太に打ち込んでいるが、丸太が持たないのだろう。
徐々に、丸太だったものは、不揃いの「薪」に代わっていく。

以前から、農作業や家事をしているブラジュ領民の姿を見かけていたが、やけに力持ちな人ばかりだと思っていた。

本来なら、農耕馬に轢かせるような、どでかくて重い農耕具を、鼻歌交じりに曳く男。
水が満杯に入った、大人が一抱えするような大きい甕を、平然と運搬する女性。
道行く人は、それをブラジュ領のごく一般的な日常風景として疑問にも思わないらしい。
誰もが力持ちなのだろう。

しかし、そんな光景で耐性ができていたケーヴァリンであっても、目の前で起きている光景は予想の範囲外だった。

「お館様、おはようございます!」
「「「おはようございます!!」」」

「ああ、おはよう。気張ってやるように」
「「「「「はい!!」」」」」

立派な身なりの男、ヒムシン=シャッド=ブラジュは、そのまま領民にまぎれて調練に参加する。
あの殺気だってるようにしか見えない集団に、父親が当たり前のように混じっていくのを、ただ見送るしかない息子、ケーヴァリン。
調練を始めた父親のヒムシンの動きを見れば、彼も相当な使い手であることは、素人でもわかる。

「立てぇ!死ぬまで戦え!!」
「ウラアアアア!!」
(え、ナニコレ。領主と領民が殺し合いやってる?反乱でも起きてんの?)

しかし、これが反乱でも何でもなく、普段通りであることは、周りがさしてヒートアップをするわけでもなく、淡々と教練という名の死闘を繰り広げていることからもわかる。
…というより、領主を相手に、一切手加減をする気のない領民も領民だが、容赦なくぶちのめして血の雨を降らせる領主も領主である。

彼らの戦いは、見るからに攻撃的だ。
あれでは「寸止め」ができない。
それでも、対人同士で切り合う(叩き潰しあう?)場合には、さすがに配慮しているのだろう。
鉄製ではなく、木製か竹製の武器を握っている。
それでも、あちらこちらで、けが人が続出しているが、これが鉄製武器で模擬戦でもやろうものなら、数十分でこの集団は壊滅だ。

また、怪我人は怪我に慣れているのだろう。
自分たちで器用に応急手当をしている。

「ありゃ、木刀が頭に入っちゃったか。」
「ああ、こりゃ自分で手当ては無理じゃな。とりあえず脇に寄せよう。」
「おおい!こっちに怪我人一人!」

仲には、泡吹いて白目をむいている領民がいる。

…えっと、大丈夫だよね?

知らない人が見たら、警察に通報しているところだろう。
どう見ても殺人が起きたようにしか見えない。
しかし、ここには警察はおらず、代わりに衛生兵というやつだろうか。
縫合用の針やハサミ、添え木にちょうど良い木材などを持参している人たちが、怪我人のところに向かっている。

「頭に木刀が入っちまった。」
「…頭蓋も割れてないし、出血も無し。これは怪我に入らん。おい次。」

…あれは、怪我人ではないようだ。
てきぱきと瘤になった場所に軟膏を塗り、包帯を巻いて立ち去る衛生兵。
どうやらここは、とんでもないところらしい。

ここに集まった男たちは、ざっと100人は超えている。
中には年端も行かない少年も混ざっている。
また、別のところでは女性も弓や薙刀の教練をしているそうだから、どれだけの人間が戦闘訓練をしているのか想像がつかない。
ただ少なくとも、千人の人口を考えると、ほぼ戦える全員が教練しているのだろう。

―――とんでもない所に生まれちゃったなあ…
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