選ばれたのはケモナーでした

竹端景

文字の大きさ
4 / 229
第一章 棒人間の神様とケモナー

神様は…え?

しおりを挟む
 真っ白かと思ったら真っ黒に。ぐるぐると、まるで、昼夜を繰り返す空間。

 上かと思えば下で、下かと思えば上。そもそも、上下がない。触れるべき大地も、見上げる天すらなく、ただぐるぐると、まわる。

 洗濯機の中とでもいえば、いいのか?しかし、洗濯機というほど、一定の速さはなく、ただ、ぐるぐると、まわされる。時折、何かが、流れていく感覚も感じるのだが、深く考える前に、霧散していく。
 いつまでも続くのか。そもそも、終わりがあるのか。

 だが、突然、停止した。

 ぽんっという音をたて、青空と海辺のような空間が広がる。いや、その空間に弾き出されたのかもしれない。
 水平線の先を見ようにも、絵画のような、照り返しのない、海としか表現できない場所。

 ふと、自分が立っている場所に、目をやると、砂と思わしきものが、キラキラと光っていた。星々のように、一定に輝いている。とても、綺麗だった。

 だが、足があるはずの砂地すら丸見えだったことで、そんなことはどうでもよくなる。

「え?なに、これ、どういうこと?砂?ってか、足がないって、幽霊?」

 自分の状況を確認しようと、手を見ようと、動かす。動かしている感覚はあれど、あるはずの手は、足と同様に存在していない。
 感覚はあるのだ。けれども存在しない。
 どうしたものかと、混乱していると、水平線の先から、もの凄い速度で光の塊が近づいてきた。

 呆然と、その光を見ていると、光の中に、何かが、いる。確認しようにも、光が強すぎて確認できない。それでも、何か、人だと思うが、いる。

「幽霊ではない。正確には、魂だ」

 光の中の何者かが、バリトンのいい声で、疑問に答えてくる。
 どうも魂の姿らしい。

「魂…おー!これが、魂!ん?誰ですか?」

 感動というか、聞いたことしかない状態に自分がなっている。それに、ふむふむと納得してると声が聞こえる。
 起伏がない調子で、機械的でこそないものの、どのような人間かはわからない。そもそも何者かもわからないが、不思議と警戒心はわかない。それよりも、魂という状況に、意識は集中しているのだ。

「うむ。記憶が浄化されてなお、自我とある程度の知識を残せているか」

 そう呟くようにいいつつ、光を弱める何者か。人間には違いない。そう、人間なのだ。

 見つめた先には、棒人間が腕組みをして、浮いていた。

「棒人間…?」
「否、我はボージィンである」

 即答で否定されてしまった。棒神?棒人間の神様なのかな?

「それも、否。我は円と線を統べる神である」

 あれ?声出してたっけ?

「そもそも、お前には、口はない。体もない。むろん、目もない。あるのは、魂だけである。考えること、全て、我にはわかっている」

 なんと!では、さっきまで考えていたことも、筒抜けだったのか。とりあえず、えっと。

「じゃあ、棒神さま、こんな、俺?私?僕?某?…こんがらがってきた」

 様々な情報が、ないと言われた口から飛び出そうになる。俺で、私で、僕で、某で。天気は晴れで、月が二つで。
 二本の指が生えてて、翼を広げて、そうそう隣の竜の鱗が綺麗で、いや、竜はいない。いや、竜はいる。あれ?何で矛盾が?

「ふむ、今までの転生で得た知識はちゃんと覚えているようだが、知識の統一がまだ上手くできておらぬか…そうだな…性別などないからな…一番最初に出てきた一人称にすればよかろう。『我が認める』」
 
 棒神様ぼうじんさまがそういうと、『俺』という認識が輝いたように感じた。
 押しつぶされそうな波の中で、棒神様の一言がきいたのか、情報の取捨選択…いや、もっと簡単なもので、全て受け入れることにした。

「はい、えっと…俺に神様が用事っていうのは、あれですか?次の世に出る順番がきたとかですか?」

 色んな情報。空想が現実で、現実が空想。そのような感覚が、またぐるぐるとしてきたが、『俺』が認識したことにより、先ほどのような混乱はなかった。

 俺が知る限り、魂は、生まれ変わる。神様の審判だとか、地獄の審判だとか。

「知識としては、そうなるであろうが、実際のところ、神が関与する生まれ直しなど、そうそうあるわけではない」

 え?じゃあ、魂って何だろう?

「疑問に持つか。そもそも、魂になると、何も残らん。根源として、何度も使い、様々なものに移り変わる。世界を越えてな。今のお前のように、ある世では現実であったが、次の世では絵空事になるのもしかり。竜がいる世もあれば、いない世もあるのだ。幾度もの転生の中で、魂の段階で、自我が生じれば、ある程度のものに、生まれ直しをするだけだ」

 ああ、考えが読まれるんだっけ。自我…性格とか、性質とかかな?

「その通りである。馬鹿は死んでも治らないという。全てのものは、性質が変わることはない。神とて、例外はない」

 なるほど。確かに。腕を…たぶん、腕になるんだろうな。組んで話をする棒神様。ふと、思ったことを尋ねる。読まれる前に伝えることをしなければ、いくらなんでも失礼だろう。

「そもそも、棒神様って、円と線の?統べる?神様?それってなんですか?」

 口を動かしたわけでもないが、言葉にすれば、自分の声音がおかしいことに気づく。先ほどは気にしなかったが、冷静になって考えると、老若男女が重なった声のようなのだ。

 棒神様は、気にせず、俺の問いに答える。

「元々、無があり、無より、円と線が産まれた。始まりの点とも呼ばれる。つまり、我は無の一子にして、全ての円と線の神である」
「円と線とは?」
「例えば、世の中の全てに、円と線、どちらかは使われている。また、生み出すもの全ても同じである」

 確かに、人の体や、物体には、円と線が使われいる。どのようなものでも、線があるし、星や卵は楕円、つまりは円だ。
 この世の基本の神様ってことは…つまり。

「すっごく、偉い神様ってことですか?」
「うむ。無の次になるが」

 丸の部分、頭部?が揺れる。うなづいたのだろうか。

「無って、凄いのですか?」

 無とは何もないことだ。その神様が一番偉いのか?

「無とは、名も持たず、ただ、無であった。どのような偶然か、その無から点が産まれた。その点をみた無は、自我を持ち、無であることを弱めようとした。不変である神が変わろうとしたのだ。奇跡すら生ぬるい幸運の結果、点は線になり、円となって、我となった。我はありとあらゆる円と線を作り、他の神々を作った。無によって、全ては認められ、そして許されたのだ」

 そんなに、凄いのだろうか?何もないからこそ無であるはずなのに、無にも自我が生じるのか。なんていう矛盾なんだろう。

「その矛盾こそが全ての始まりだ。仮に無が我を認めなければ、この世のありとあらゆる全ては産まれていなかった。そして、全ては無へと帰る。お前の記憶、いうなれば、知識と併用された感情は無へと帰った」

 記憶…どこの誰で、何をしていたのか。思い出せない。代わりに、絵の描き方、調理、薬剤の調合、洗濯、その他、細々したことは、すぐに思い出せた。誰に教わっただとか、いつ、誰にしてあげたのかは、まったく出てこない。その部分だけが、すっかりそぎ落とされている。

「どうして、俺をここへ?凄い神様が、呼ぶような知識とかもってませんよ!」

 正直、何もない場所に連れて来られて、状況もわからない。偉い神様の話を聞いても俺とは関係がないはずだ。

「そうだな…その前にいくつか、質問をする。嘘偽りは通じぬ…とはいえ、嘘偽りをするような感情もないだろうが」

 まぁ、考えてることは、読まれるし、嘘は、後ろめたいことがあればついてしまうのだろうが、とくにそんなこともない。後ろめたく思う記憶がないんだからな。

「性質は変わらぬ。つまりは、性格は変わらぬのも同義。ただ、感情は、環境によりかわる。性質と知識のみの、お前には、ただ、本質のみを答えるだけであろう」

 ちょっと難しいこと言われているけど、質問されたら、答えられそうな範囲なら答えよう。
 深く考えずに浮かんだ言葉を…あ、心理学?テスト?っていうものみたく即答していけばいいのか。

「それでいい。では、問う。争いは好きか?」
「嫌いです。競うことは大事ですが、争いはしたくないです」

 競うことと、争いは別物だ。何かを比べるのも、優劣を決めるのもわかる。競うことで、より良い物や、思考が生まれると思う。だが、争いは、否定だ。自分の意見も変わってしまうし、誰も得しない。何も残らないし、意味がない。

「そうか。ならば、問う。植物、人工物、どちらが多い方が良い?」
「どちらもほどほどに。多少、植物が多い方がいいですが、植物だけでは、他の生き物は生きれません。人工物も、多すぎては同じです」

 里山の知識からも、いえるだろう。人の手が入らない山はよい環境にはならない。漁礁も、また同じだ。ある程度の共存が、お互いに必要なのだ。

 その後もいくつか質問をされた。

「さらに問う。動物は好きか?」

 淡々と答えていたがその言葉に電流が走ったような衝撃がきた。
 なぜだろう。感情がないはずなのに、沸き立つ、この想いは?知識なんだろうか…?

「好きです。何でもこいです」
「爬虫類、魚類、虫などは?」
「爬虫類は爬虫類のよさ、魚は魚のよさ、虫は…かっこいいじゃないですか」

 虫が苦手という人もいるのはわかっている。俺としては、強要はしない。だが、生き物独特の曲線美というものが、多く感じれるのは、昆虫などだろう。もちろん、毒虫などは見た目は綺麗でも、触ってはいけない。むしろ、綺麗なものだからと、触れたり、閉じ込めるのはよくない。自然の中での優雅さを持っているからこそ、彼らは輝くのだ。

 先達せんだつはいう『触れず愛でよ』『ノータッチ&ピース』

「ふむ、では…動物の中で…猫は好きか?」
「犬も好きです、猫も好きてす、むしろ、差別よくないです。」

 猫のつんってしたとこも、犬の構ってアピールも、亀の考えてないようで一生懸命なとこも、鳥のちょっと照れ屋なとこも、語りだしたら、何日かいるんですけど。

 みんなまとめて。

『モッふるモッふる』

 棒神様と心でしっかり握手したような気持ちになった。同志、同神?との出会いは嬉しい。
 
 でも、ちょっと悲しいのは、なんでだろうか。涙がでそうだ。目玉ないけど。

「ふむ。合格だ。どのように転生をしても、魂に刻まれた、変わらぬケモナーとして、認めよう」

 神様の世界でもケモナーってごうが…いや、号があるんですね。

「いや、待ってください。ケモナー自覚は、残念ながらありますが、凄く残念な感じが」
「我、ボージィンは、この者を『真なる者と認める』」

 待ってって、言ったよね!何か凄い輝きが指先?いや、腕先?から放たれた。すぅっと俺の中に、いや、俺自身という魂に刻まれたような気がするんだけど。
 あと真性のケモナーって!否定できないけど!

「我と志をともにする者よ。これよりお前に、話さねばならないことがある」

 文句をいうよりも先に、棒神様は重々しく告げた。思わず、背筋をのばしてしまうような、真剣な声音だ。俺に背中があるのか謎だが。気持ちとしては、背筋をのばした。

「我はたった一つの星しか管理を認められておらぬ」

 凄く偉い神様なのに?

「強すぎる故、また全てを統一する中で、公平に。されど、一つのみは、関与をせぬかわりに、我が認めている」

 あ、考えたこと読んでますね…管理するってそんなに規約がいるんですか?

「うむ、その方が早いからな。しばらく読ませてもらう。話を続けるぞ?星を管理するもの、その星の中で細分化されて管理するもの。銀河、次元、世界。その全てに我は関与しておるが、管理者は別におる。管理者なきそういった場は、無になる。終焉ではない。無へとなる。また、管理する神々も、己の立場を守るためには、管理をせねばならん」

 えっと…全部に棒神様はいるけど、サブ的立場で、メインの管理する立場が星一つしかないってこと?

「そうだ。そうせねばならん。全てを管理すれば、立場をなくす神も現れるだろう。かといって我も管理せねば己を失う。我が我でなくなれば…全ては無へと戻るだろう。故に、一つの星を管理することになったのだ。そこには、獣と人と、獣の一部を持つ人、ドワーフ、エルフ、竜人。おおよそ、この全ての世界、次元、理。我が関与する要素を含ませた」

 そうか。棒神様は、円と線。この世全ての形あるもの。目に見えないけど、存在しているものの神様だから、棒神様が消えたら、みんな無になるのか。

 しかし、一部獣人か。どのレベルなんだろうか。耳はいるだろう?手とか、足とか?しかし、まさか、同神でありながら、最高の獣人を忘れているようだ。そもそも、そんな浅いので、俺が。

「ちなみに、全てが獣の者もおる」

 なに、その楽園。たぎる。

「そう、楽園だ。無論、争いもあるが、その星の中で、一つの種族も絶滅させられるようなことはなく、自浄作用が効いておった。栄枯盛衰。まさに、円として。以前はな…だが、愚かにも、世界の理を捻じ曲げ、その星にはいなかった者共を呼び寄せたモノがおった。皮肉にも、我が特に愛でていた者たちを使ってな」

 愛でていた…?嫌な予感しかしない。それに、呼び寄せたっていうのは?

「招来、召喚…禁術により、異形、異族。今では、魔物、魔族と呼ばれる者共を呼び寄せたのだ」

 棒神様ならなんとかなったのでは?という疑問も、即答された。

「仮に、我が魔に滅びを与えれば、全てが滅びるだろう。だが、魔だけを滅することはできぬ。魔の神も、魔とされるモノも。何より…魔とは誰の定めとしての魔であろう?魔でないと己で決めれるであろうか?人はそれほどに、己をみているのだろか?神のように不変であればよい。だが、魔が差したなどと嘯く輩はどうなる?等しく魔を滅ぼせば、魔を生み出した我を含め、全てが無へと還るだろう。魔もまた、我より生まれたモノ。また、魔を持たぬものは、世の中にいない。円と線の滅びとは、そのようなものだ」

 そうか。その世界からは異形でも、本来の世界では普通なモノたちだったのか。

「善も悪も、全ては、円と線により成り立つ。我はそれを否定せぬ。己を否定することは、己を無に帰すことよ」
「じゃあ、魔にも神様がいるんですよね?その神様なら、なんとかしてくれるのでは?」

 俺の思い付きででた言葉に、思いっきりため息を吐かれた。肺と口がなくても、深いため息は吐けるようだ。

「無論、魔の神もそう思ったのだろう。何しろ、我の管理する星に、自らの眷属が送られたのだからな。だが、奴は愚かにも、魔を統治するモノを作り、抑えようとした」

 えっと…まさか、やんちゃしている子がいるから、じゃあ、リーダー決めてまとめさせちゃおうとか。

「そうだ。魔王を作ったのだ。自らの力をほんの少々渡してな」

 それってつまり…強化しちゃったってこと?それじゃ、まとまるどころか、酷くなるんじゃないの?

「魔が収まるどころか、余計な力をつけおった」

 本末転倒というか、何でわからなかったの!ドジっ子じゃなくて、ドジっ神なの!どこ狙いなの!ニッチって知ってますか!お腹いっぱいだよ!今はお腹ないけど!

「魔の神の浅はかさにも、困ったものだが、あれも我が子。灸をすえてやった。この手でな」

 にぎりこぶし姿が勇ましいです。見た目棒人間ですが。

「しかし、彼の神のやり方は浅はかであれど、着眼点は、悪くなかった。故に、我は我と同様な者を待っていた。その者ならば、よかろうと。時間すら超え、待っていた」

 棒神様の話からすると…同じような思考、いや性質ではないといけない?

「そうだ。我の力の極々一部、大河の中の砂一つの力とはいえ、同じ性質のものでなければ、器は溢れて壊れる」

 じゃあ、似たような、そうだ!ケモナーの神様とかに、力を渡したり、その神様を作ればいいのでは?

「神は不変であるゆえに、我が力を受けることはできぬ。また、新たに生まれさせることは、できぬ」

 なんでなんだ?他の生物はほいほい作られてたり、力を渡されているのに?

「神の創造とは、無の許す限りでしか行えない。また、無に還ることが可能でなけらばならぬ。それを捻じ曲げれば、歪みでしかなく、様々な魂が、代償を支払うことになるだろう」

 神様を一柱作るだけで、そんなことになるのか。色々と制限があるんだろうな。

「我が管理をする星は、我の力が強く作用する。我が力とは、円と線。全てのスキルと、魔力をお前に与えることが可能だ。幾度も転生を経て得た知識を持ってな」

 えっと、つまり、俺が棒神様の代わりに、魔のモノを退治するなり、大人しくさせろと?

「そうだな、大人しくか…うむ、それもありだ」

 いや、争いとか嫌っていったし、何より、魔物系も、その…余裕でもふるのも、愛でるのもいけるんですが。友好的なのなら。

「そうであるな…面白い。ただし、選ばねばならぬ。どちらも使えるのであれば、それはもはや、人で非ず。少なくない未来において、魂は歪み、または、無にすら還ることなく、永遠に滅び続けるであろう」

 永遠に滅び続ける…怖すぎる。

「我が管理する星。モフーナには、スキルの多さ、魔力、いうなれば、使える魔法の多さが有能である証となる」

 モフーナ…全力でもふってそうな名前だな…そうか、管理してるのは、棒神様だものな。

「何事も全力だ。まぁ、いい。一つ、おおよそ全てのスキルを使えるが、魔力はあまり強くなく、使い方次第では、一人で全てをなしえる」

 勇者タイプってやつだな。でも、孤独な感じがするのは気のせいかな?大きな力か。でも、魔力は少ないと。

「もう一つは、スキルは取れても5つ程度、それ以上は、どのようにしても一つして、身に付かぬ。多いと思うか?モフーナでは、どのようなモノでも、最低でも、十以上のスキルを得ることが可能である。人に限らずな。魔力は無限ではないが、かなり強い」

 かなりスキルが少ないな。平均の半分程度しかないのか。魔法使いタイプといっても、モフーナの魔法使いの持っているスキルの半分だけっていうのは、どうも気にかかる。

 魔法で、スキルのようなことができればいいけど、それも何か違うような気がしてならないんだよな。

「そうだ。魔法で同じようなことも可能であろうが、例えば、剣士がスキルを使い、魔法師が魔法の剣を使って戦えば、剣士のスキルが優位に立ち、剣士が勝つ。しかし、炎などの元素魔法は、スキルよりも優位に立ちやすいが、場所の影響も受けやすい」

 うーん。そうすると、スキルっていうのは、かなり、使い勝手がいいのか?魔法も、知識の中であるのだが、使える者がいた程度なので、自分が使ったような感じがしない。おそらく、生まれなおしても魔法とは無縁だったのだろう。

 代わりに、スキルというものは、なんとなく、わかりやすかった。

 楽器の演奏ができるまでに、反復練習をする。そうすれば、上手い下手は関係なく、演奏はできる。演奏スキルというものが手に入るわけだ。練習すれば、身につくものがスキルであるのだろう。

 ふと、棒神様が、何も言わないことに気づいた。考えたそばから、すぐさま答えてくれたのに、今は、腕を組んだまま動かず、沈黙を保っている。

 選ばないといけないのか。

 前者であれば、人の手をそこまで借りることはないだろう。魔力は少ないが、魔法使いの友達でも作ればいい。
 後者ならば、魔法使いとして、魔法が使える。スキルも友達を沢山作れば、上手くやれるだろう。

 何だ、簡単じゃないか。答えはもう出ていた。

「後者でお願いします」

 英雄になれなくていい。誰かの支えになればいい。何より、魔法を使う知識はない。ないなら、覚えればいい。

「うむ。自らの導きに従え。神の導きなど、あってないようなものだ。選別だ。スキルの希望を申してみよ」

 顔がないけど、にんまりと笑ったような棒神様。

「スキルは…よくわからないんですが、病気は怖いので病気になりにくいのと、あと、物作りに関係するものの二つでいいです」
「力を使うものでなくていいのか?」
「その、戦うのはわかっているんですが…できれば、それを避けて、仲良くできたらなぁーって」

 もふるのが目的ではない、とも言い切れないけど、仲良くできればそれでいいし、物作りは、趣味というか、知識がやたらと芸術系に偏っている為、せっかくの知識を生かしておきたかった。

「そうか…そのように思考したか。仲良くか。それがお前の道なのだろうな。ならば、身体強化と、造物の二つがよい。残りのスキルは、我が適当なものを後程与えるとしよう」

 神様にお任せっていうのは、どうかとも思ったが、急に使いたいものといわれても、浮かばないものだ。なら、文字通り神頼みしよう。

「身体強化は、そのままだ。身体を強化し、戦いにも使えるが、基本、病気知らずになる。珍しくはないどころか基本みな持っている。造物は、全ての物を作るというスキルであるが、自らの手によってという、制限がある。造物以上のものは、神の域になるのでな、我は認めぬ。が、お前が作るものならば、ある程度は認めよう。他にも何かあるか?産まれる場所も選べるぞ?」
「できれば、家族が仲の良い人達で、それから、似てるような性質のある人達がいいです。あ、物作りが許される環境だと、さらにいいです」
「そうだな…では、精霊に委ねるとしよう。精霊の判断によるが、良き所へ産まれるだろう」

 精霊様!知識の中にも精霊様の話はあるが、下手な神様よりもかなり身近な存在に思える。もちろん、そんなものはいないという知識の矛盾もあるのだが。

「精霊様にも、会えますか?」
 
 神様に会っているのに精霊様の方がドキドキしてしまう。見た目が動物要素あると思うからな。ドキドキしてしまうだろ。

「そのうち会えるであろう。では、その時まで、記憶を封印する。五歳の祝福前には、思い出すようにしておく。では、良い円と線がお前を祝福するだろう」

 祝福って?とか、まだ聞きたいことが山ほどあるのに、詳しくたずねる前に、星のような砂浜に、魂が引っ張られる。遠ざかる棒神様は、腕を曲げ、ゆらゆらと腕をゆらす。手を振ってる?と思った瞬間。

 また、ぐるぐると、まわる空間へと戻った。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
旧題:神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜  ※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!  電子書籍は、2026/3/9に発売です!  書籍は2026/3/11に発売(予約受付中)です!メロンブックス様より、特典の描き下ろしSSペーパーがあります。詳しくは、メロンブックス様へお願い致します。  イラストは、にとろん様です。よろしくお願い致します!  ファンタジー小説大賞に投票して頂いた皆様には、大変感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...