86 / 229
第三章 運命の出会いとケモナー
王城
しおりを挟む
「すごーい!」
広いなぁ…なんだここ。
庭から離れて、ようやく現在の場所がどのような場所かとわかった。
とにかく、広い。庭もだが、建物が異常なほど広いのだ。うちの屋敷が…両手でぎりぎりか?すっぽり入るほどだ。
なにせ、馬車で移動をしているのだ。庭だというのに。
いや、皇太后様や王様がいるんだから、当たり前かもしれないんだが、あきらかに建物の中にも馬車で侵入していたぞ。
しかもすぐに外に出たと思ったら中庭だとか…王族ってすげぇとしかいえない。
リディ様とは、あの場で別れた。王城にむかうのは立場的に厳しいらしい。それで馬車の中にはエレス様とケルンしかいない。
王様と二人っきりだ。護衛というか、馬車をひいているのは、あの青白い鎧の女の人の同僚らしき人だ。
実はあの女の人はエレス様が王城にむかうといったとたん、気絶してしまったのだ。よほど体調が悪くなったのか、ひきずられていってしまったのだ。
かわりにフィオナぐらいの護衛が熟練らしい女の人がやってきた。エレス様から自分が子供のときから護衛をしていると教えてもらったから、間違いない。
しかし、王城はここじゃないのか?王城の一部かと思ったが、そうではないらしい。
そのエレス様はというと、ケルンの驚いている声に驚いている。
「そうかなぁ?離宮はこれでも縮小したんだけどぉ…ほらぁ、王城はあそだよぉ」
「うわぁ…きれい…」
なんだ…あれ…すげぇ。本当にすげぇしか出てこないなぁ…他に言葉があるか?
エレス様が馬車の窓から指差した先には、天を突き刺すようにそびえ立つ何本ものガラスの塔がみえた。さらに、金色に輝く鐘楼もみえる。
だが、それだけではない。光の屈折で王城が虹色に輝いてみえるのだ。
コレクションそのまま…いや、あれ以上にきれいだ。
「お城のおもちゃよりもすごいねー!」
ケルンも口を閉じてはいつのまにか、開けているを繰り返してしまっている。
王城が一つの芸術になっている。
そして、まったく同じ姿をみせることはできなくなる芸術だ。
光の加減や、天候、空気の湿度に左右されて虹色のかかりかたも、その度に変わっている。
王城はクウリィエンシア皇国ができてから二千年以上もそのままの建造物だ。
クリスタルのような城の外壁は、現在では精製不可能の未知の素材らしい。初代国王や初代建国貴族たちが持ち寄って建てられたもので、どのような、攻撃も効かず、マジックミラーのように、中から外はみえるが、外から中はみえない。
また、仮に傷をつけても自動修復機能がついてる。
同じものを作ろうとするならば、どれほどの時間や資材がいるか検討もつかない。なにしろ、どこで素材を見つけてきたのか、どうやって精製して、建てたのか誰も知らないのだ。どの家にも伝わっていないということで、クゥリエンシア皇国の最大にして最も長い不思議だと本に書いてあった。
ご先祖様たちのすごさがわかる代物だった。
もちろんあのミニチュアもよく似ているが、実物にはやはり敵わない。
エレス様も知っているようだが、王都で流行ったものなんだろうな。
「おもちゃ?…もしかしてぇ、王城を小さくしたあれのことかなぁ?」
「はい!僕の家にあります!」
「へぇぇ…どこで買ったの?」
「ポルティです!」
あのときは三兄弟のお給料を心配したけど、今でも思う。買ってもらってよかったって。あれで王城のことを知っていたから、まだ意識を保てている。そうじゃなかったら、エレス様の存在を忘れてぼぉーとしているだろうからな。
ケルンだけでなく、俺ですら思考が停止するようなものだ。あんなものを人間が作れるなんて、昔の人は天才だったんだな。
「売ってたのはドワーフかなぁ?」
「え?んーと…いつものおじさんでした。雑貨屋の」
「そう…ということは、土地代がわりに質として流れたか?…彼も誘拐されてしまったというわけか…何が目的なのだ?」
「エレス様?」
ドワーフの作品であるとは聞いていたが、ヴェルムおじさんに会うまでドワーフに会ったことはなかったのだ。
それだというのに、ドワーフの話が一番に出るのはどうも気になった。
「ごめんねぇ、ケルン君。偏屈なドワーフの職人が売らないといった作品だったからさぁ、びっくりしたんだよぉ」
エレス様はにこりと笑って話をそらした。
「その職人さんは今は何を作っているんですか?」
「さぁ?…最近見ないが、生きてはいるだろう…それよりぃ、もう王城に入るよぉ。ほら、目指しているのはあの鐘楼がある馬車だよぉ」
エレス様はそれ以上。なにもいわないし、こちらからもなにもいえない。
窓から外をみながら、エレス様は何か別なことに意識を持っていっている。
沈黙の中でも馬車の音は響く。
堀がめぐっている王様の入り口の前に行くと、橋がすぐにかかり、待つこともなく、王城の中へと入っていく。
エレス様が触れたくない案件。十中八九例のドワーフの誘拐の件だろう。
この件についてはリンメギン国内でもかなり苦労しているようだ。リンメギン国王様の手紙でも少しだったが情報をもらっている。
傑物といわれた天才、幾人も弟子がいる師匠、パトロンもたくさんいた新進気鋭の職人。
そういった人たちが、国内外を問わず、何も痕跡を残さずこつぜんと消えてしまった。
誘拐と判断されたのは、失踪する理由がないからだ。彼らはみな社会的に成功している人物ばかりだ。
それゆえ、彼らの才能を狙っての犯行だろう。だから、エフデも気を付けてほしいと、リンメギン国王様からもいわれた。
何だか嫌な気持ちになりつつも、俺たちをのせた馬車は金色に輝く鐘楼にどんどん近づいていく。
それに合わせてぽつぽつとローブ姿の人が増えだした。
誰もが何かしらの荷物を持っていたり、包帯を巻いている。
何かあったのだろうか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ブックマークが二百人をこえ、しかも減っていない!ありがとうございます!
なので、明日は二話更新をします。三章ももうすぐ終わります。
三章の裏話のあとには四章を始めたいと思います。
広いなぁ…なんだここ。
庭から離れて、ようやく現在の場所がどのような場所かとわかった。
とにかく、広い。庭もだが、建物が異常なほど広いのだ。うちの屋敷が…両手でぎりぎりか?すっぽり入るほどだ。
なにせ、馬車で移動をしているのだ。庭だというのに。
いや、皇太后様や王様がいるんだから、当たり前かもしれないんだが、あきらかに建物の中にも馬車で侵入していたぞ。
しかもすぐに外に出たと思ったら中庭だとか…王族ってすげぇとしかいえない。
リディ様とは、あの場で別れた。王城にむかうのは立場的に厳しいらしい。それで馬車の中にはエレス様とケルンしかいない。
王様と二人っきりだ。護衛というか、馬車をひいているのは、あの青白い鎧の女の人の同僚らしき人だ。
実はあの女の人はエレス様が王城にむかうといったとたん、気絶してしまったのだ。よほど体調が悪くなったのか、ひきずられていってしまったのだ。
かわりにフィオナぐらいの護衛が熟練らしい女の人がやってきた。エレス様から自分が子供のときから護衛をしていると教えてもらったから、間違いない。
しかし、王城はここじゃないのか?王城の一部かと思ったが、そうではないらしい。
そのエレス様はというと、ケルンの驚いている声に驚いている。
「そうかなぁ?離宮はこれでも縮小したんだけどぉ…ほらぁ、王城はあそだよぉ」
「うわぁ…きれい…」
なんだ…あれ…すげぇ。本当にすげぇしか出てこないなぁ…他に言葉があるか?
エレス様が馬車の窓から指差した先には、天を突き刺すようにそびえ立つ何本ものガラスの塔がみえた。さらに、金色に輝く鐘楼もみえる。
だが、それだけではない。光の屈折で王城が虹色に輝いてみえるのだ。
コレクションそのまま…いや、あれ以上にきれいだ。
「お城のおもちゃよりもすごいねー!」
ケルンも口を閉じてはいつのまにか、開けているを繰り返してしまっている。
王城が一つの芸術になっている。
そして、まったく同じ姿をみせることはできなくなる芸術だ。
光の加減や、天候、空気の湿度に左右されて虹色のかかりかたも、その度に変わっている。
王城はクウリィエンシア皇国ができてから二千年以上もそのままの建造物だ。
クリスタルのような城の外壁は、現在では精製不可能の未知の素材らしい。初代国王や初代建国貴族たちが持ち寄って建てられたもので、どのような、攻撃も効かず、マジックミラーのように、中から外はみえるが、外から中はみえない。
また、仮に傷をつけても自動修復機能がついてる。
同じものを作ろうとするならば、どれほどの時間や資材がいるか検討もつかない。なにしろ、どこで素材を見つけてきたのか、どうやって精製して、建てたのか誰も知らないのだ。どの家にも伝わっていないということで、クゥリエンシア皇国の最大にして最も長い不思議だと本に書いてあった。
ご先祖様たちのすごさがわかる代物だった。
もちろんあのミニチュアもよく似ているが、実物にはやはり敵わない。
エレス様も知っているようだが、王都で流行ったものなんだろうな。
「おもちゃ?…もしかしてぇ、王城を小さくしたあれのことかなぁ?」
「はい!僕の家にあります!」
「へぇぇ…どこで買ったの?」
「ポルティです!」
あのときは三兄弟のお給料を心配したけど、今でも思う。買ってもらってよかったって。あれで王城のことを知っていたから、まだ意識を保てている。そうじゃなかったら、エレス様の存在を忘れてぼぉーとしているだろうからな。
ケルンだけでなく、俺ですら思考が停止するようなものだ。あんなものを人間が作れるなんて、昔の人は天才だったんだな。
「売ってたのはドワーフかなぁ?」
「え?んーと…いつものおじさんでした。雑貨屋の」
「そう…ということは、土地代がわりに質として流れたか?…彼も誘拐されてしまったというわけか…何が目的なのだ?」
「エレス様?」
ドワーフの作品であるとは聞いていたが、ヴェルムおじさんに会うまでドワーフに会ったことはなかったのだ。
それだというのに、ドワーフの話が一番に出るのはどうも気になった。
「ごめんねぇ、ケルン君。偏屈なドワーフの職人が売らないといった作品だったからさぁ、びっくりしたんだよぉ」
エレス様はにこりと笑って話をそらした。
「その職人さんは今は何を作っているんですか?」
「さぁ?…最近見ないが、生きてはいるだろう…それよりぃ、もう王城に入るよぉ。ほら、目指しているのはあの鐘楼がある馬車だよぉ」
エレス様はそれ以上。なにもいわないし、こちらからもなにもいえない。
窓から外をみながら、エレス様は何か別なことに意識を持っていっている。
沈黙の中でも馬車の音は響く。
堀がめぐっている王様の入り口の前に行くと、橋がすぐにかかり、待つこともなく、王城の中へと入っていく。
エレス様が触れたくない案件。十中八九例のドワーフの誘拐の件だろう。
この件についてはリンメギン国内でもかなり苦労しているようだ。リンメギン国王様の手紙でも少しだったが情報をもらっている。
傑物といわれた天才、幾人も弟子がいる師匠、パトロンもたくさんいた新進気鋭の職人。
そういった人たちが、国内外を問わず、何も痕跡を残さずこつぜんと消えてしまった。
誘拐と判断されたのは、失踪する理由がないからだ。彼らはみな社会的に成功している人物ばかりだ。
それゆえ、彼らの才能を狙っての犯行だろう。だから、エフデも気を付けてほしいと、リンメギン国王様からもいわれた。
何だか嫌な気持ちになりつつも、俺たちをのせた馬車は金色に輝く鐘楼にどんどん近づいていく。
それに合わせてぽつぽつとローブ姿の人が増えだした。
誰もが何かしらの荷物を持っていたり、包帯を巻いている。
何かあったのだろうか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ブックマークが二百人をこえ、しかも減っていない!ありがとうございます!
なので、明日は二話更新をします。三章ももうすぐ終わります。
三章の裏話のあとには四章を始めたいと思います。
20
あなたにおすすめの小説
【完結】長男は悪役で次男はヒーローで、私はへっぽこ姫だけど死亡フラグは折って頑張ります!
くま
ファンタジー
2022年4月書籍化いたしました!
イラストレータはれんたさん。とても可愛いらしく仕上げて貰えて感謝感激です(*≧∀≦*)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
池に溺れてしまったこの国のお姫様、エメラルド。
あれ?ここって前世で読んだ小説の世界!?
長男の王子は悪役!?次男の王子はヒーロー!?
二人共あの小説のキャラクターじゃん!
そして私は……誰だ!!?え?すぐ死ぬキャラ!?何それ!兄様達はチート過ぎるくらい魔力が強いのに、私はなんてこった!!
へっぽこじゃん!?!
しかも家族仲、兄弟仲が……悪いよ!?
悪役だろうが、ヒーローだろうがみんな仲良くが一番!そして私はへっぽこでも生き抜いてみせる!!
とあるへっぽこ姫が家族と仲良くなる作戦を頑張りつつ、みんなに溺愛されまくるお話です。
※基本家族愛中心です。主人公も幼い年齢からスタートなので、恋愛編はまだ先かなと。
それでもよろしければエメラルド達の成長を温かく見守ってください!
※途中なんか残酷シーンあるあるかもなので、、、苦手でしたらごめんなさい
※不定期更新なります!
現在キャラクター達のイメージ図を描いてます。随時更新するようにします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる