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第四章 学園に行くケモナー
魔法のあれこれ
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魔法に関係する講義ということで外に集まっていた。
人の形をした土人形に鎧を着せて的のようにしているが、教材なんだろうか?
「それでは、みなさん。魔法とは何でしょうか?」
杖作りに集まった生徒が全員いるんだろうけど、大人もちらほら見える。制服を着ているところをみると、聴講しているのか?初級の授業なのに。
杖の流れのままサーシャ先生が、やるのかと思っていたんだけど、なんと、ナザドが教えるようだ。
「はい、そこの君。答えてくれるかな?」
ナザドはそういって、ケルンとは別のクラスの男の子を指差した。がり勉タイプというか、賢そうな子だ。
「魔法とは、精霊に魔力を渡すことで、世界を改変する事象です」
へぇー。やっぱり賢いんだな。全然知らなかったんだけど。
「精霊様に頼んでしてよかったらいいんじゃないの?」
そうなんだが、改変ってのは知らなかったんだ。
「かいへんって?」
んー。例えばそこの石の存在を変えるってことだな。魔力ってのは結構なんでもありなのかもな。
「もしかして…ミルデイとか?」
そうだな。ミルデイの体を作ったときは改変っていえるな。
「そっか…魔力…」
珍しいことに、ケルンが真剣に魔法のことを学ぼうとしている。嬉しい反面、その気持ちがわからないのはつらい。
ケルンは日ごとに成長しているが、こうして考えが伝わってこないことが増えた。
少しだけさびしく思うが、今は授業を真面目に受けよう。しかし、授業ってのは知らないことを学ぶことかと思うのだが、学園ってのは確認作業が基本みたいなもんなんだろうか?男の子は、当然ですって顔をしてるし。周りも似たり寄ったりだ。
「うん。教科書通りな解答をありがとう!」
笑顔できっぱりいいきったナザドを叱りかけた。男の子は、傷付いた顔をしてるし、大人がいうことじゃないだろ!ってか、先生がそんなこといっていいのか!
ナザドは、それではといって、何事もなかったように、授業を進めていくつもりのようだ。
「普段、僕たちが使っていて目にする魔法は二種類あることを知っていますか?」
注意はあとにして…いや、叱ろう。ケルンを通して説教だ。
ひとまずそれは置いとくとして、二種類?魔法が?攻撃とか防御とかか?
周囲をちらっとみると、ミケ君とかは、知っているようだ。他にも何人か知っているような顔をしているな。
ナザドは、問いの答えを自ら答えた。
「二千六百年以上前に、それまで使われていた魔法よりも強力な魔法が広まりました。クウリィエンシア皇国が発祥ともいわれておりますね!」
クウリィエンシアが発祥?
引っ掛かって仕方ないのだが、次の言葉で、その引っ掛かっていた謎は解けた。
「名前をアブァロン式といいます。テストに出しますから、覚えてくださいね」
アブァロン式ね。
アブァロン。訛っているが、アバロンとか、アヴァロンということだろうな。林檎の島だったか?この世界にないはずの言葉だ。人名なら別だがな。
俺のような知識があれば、異世界との関係などが結び付くかもしれない。
異世界といっても、同じ言葉はある。だが、まったく無関係な言葉が、ぽんっと出てくることはないはずだ。
「それまで使われていた魔法は複雑で、必要とする魔力量も多く必要な魔法であり、今では使える者はほとんどいません。公式で使えることが確認されているのは、フェスマルク家当主であり、首席ロイヤルメイジでもあられるティストール・フェスマルク様と、そして、時の精霊と契約を交わしておられるルワント様ぐらいですね」
へー。昔の魔法を父様と司祭様は使えるのか。父様が、そんな凄い魔法を使っているのは見たことがない。ひょっとして、祝福の儀式の時の詠唱とか、ヒントになるかもしれないな。
他の生徒達も、何やら考えているようだ。
「ぴんときてないようですね…治癒の魔法が使える人は手をあげてもらえますか?」
ほとんどの生徒が手をあげた。ケルンもだ。
「中級が使える人は?」
これには、僅かに、手が上がるだけになった。
中級の治癒は、魔力の高さと、本人の系統によって使える者が限られてくるそうだ。
上級にいたっては、それだけで、商売ができると少しだけ聞きかじっている。
ケルンの場合は、魔力をごり押せば、初級でも中級と同じくらいには使えることが、わかってはいるが、あまり多用はできない。本来の効果よりも強いということは、なんらかの副作用があるかもしれないからだ。
緊急事態をのぞいて、過ぎた治癒魔法は、かえって体を害する。ザクス先生が怪我をしたケルンに、そういって湿布をしながら、父様にいっていったけ。
ちょっとつまづいて、ひねっただけなのにザクス先生呼んだり、魔法をかけようとする程度には治癒魔法は身近だ。
ケルンの場合は過保護すぎるが、わりとどこの家庭でも初級の治癒魔法は使われているほどではある。
中級の治癒魔法が使える子をみて、ナザドは、満足そうに頷いた。
「なかなか優秀ですね!では、中級の治癒を使える人に尋ねます。初級の『リターンヒール』と中級の『リターンヒール』上級の『リターンヒール』の違いは何ですか?」
今度は、委員長タイプの女の子が手をあげて答えた。勉強できそうな子だけど…Sクラスのバッチをつけたままだから、性格がよくないとも思うがな。
「回復率の違いと、魔力の消費率の違いでしょうか?」
「うんうん。そんなのは、当たり前ですね!」
だから!ナザド!言い方がキツいし、もっと優しくしてあげろよ!
どうにか、ナザドに優しく!と伝わらないかと、見ていると、目線があった。
「では…君、わかりますか?」
そういって、ケルンに尋ねる。
お、坊っちゃまといわないとは、あとで、褒めよう…いや、褒めるほどでもないか。
「えっと…言葉が違っていて…精霊様も違う…とか?」
この質問は、魔法が使えるようになってから、疑問というか、そう感じていたことが、そのまま答えなような気がした。
『リターンヒール』って、言葉が同じに聞こえても、俺には意味が違って聞こえる。
ケルンがミケ君にかけた『リターンヒール』は、『健康促進』といえばいいのかな?精霊様の力は特に使わず、魔力をガンガン垂れ流しで使っていたようなものだ。
父様が怪我をしたランディにかけた『リターンヒール』は、いうならば『原点治癒』という風に、最初っから怪我がない状態に戻すし、たぶん、強い精霊様の力を借りてるのもあるのか、すぐに効果が出ていた。
「大正解です!なんて、素晴らしい!流石ですね!」
誉めてくれるのは嬉しい。
ただ、さっきまでの温度差を考えて欲しい。
叱るのではなく、説教をカルドに頼もうと決めた。
「同じ『リターンヒール』という、詠唱ですが、これは、アブァロン式が、簡略化されて、同一の詠唱が使われています。また、初級は、自らの魔力を主としています。中級は、契約の相性で異なりますが、地、水、風、火の順番で、回復率が上がります。もちろん、使い手の少ない光ならば断トツの回復量です」
なるほどな。魔法の原理がわかってきた。
つまり、今使っている魔法というのは、精霊魔法と、自分の魔力だけの魔法の二種類ということかもしれないな。
どちらも精霊様を通してはいるが、精霊魔法の方が効果は高い。というよりも、魔力の循環が上手くいくのかもしれないな。
「治癒魔法の場合、上級は光の精霊の力だけで、回復が行われます。また、魔力の消費率もかなり増えます。そうですね…上級なら、古傷だろうと手足の欠損であろうと治りますね」
んー…精霊様に直接治してもらう対価が魔力とするなら、魔力消費は高まるのか。
いや、魔力を変化してなのかもしれない。
思考を繰り返していると、誰かがナザドに「先生は上級が使えますか?」と尋ねるのが聞こえた。そういや、ナザドが、どこまで魔法が使えるのかを知らないな。
「僕ですか?治癒魔法も一応、上級もできますよ?疲れるんで、やりませんけど」
さらっといった。
生徒達が驚いているが、ミケ君やメリアちゃん、それにアシュ君は、当然という顔をしている。
まぁ、先生だから、当然なんだろうな。
「最上級の治癒は、死者をも癒すといわれております。蘇生魔法です。ただ、蘇生魔法を使えたといわれた人物はかなり少ないです」
蘇生魔法か…お伽噺では、聞いたことがあるのだけど、あまりにも悲しい話ばかりだったな。
「確認された使い手で、一番古いのは、アブァロン式を広められた方でもある、フェスマルク家初代当主であるフェスマルク様が有名ですね」
うちのご先祖か!
「他にも、エルフの女王であった、輝きの森のスピアネリアス。サナギッシュ国の巫女フセ・ヤナギラ。ドラルインの聖騎士アルファイドなど歴史上、何人かいます」
エルフの女王は、お伽噺でも聞いた名前だった。
不治の病で、幼い我が子を亡くした彼女は、七日間七晩泣き続けて、棒神様に祈りを捧げて、幼い我が子の命を再度授けられた。
自分の命と引き換えに。
他の名前は知らないが、似たような名前がお伽噺に出てくるから、モデルとなった人物達なんだろう。
その全員が命と引き換えに蘇生させている。
「フェスマルク様を除いて、自らの命と引き換えに蘇生魔法を成功させたということを考えれば、どれほど蘇生魔法が、現代では再現できないことか、わかるかと思います」
命と引き換えにか。
こういってはなんだが、それなら、誰でも使えるのではないのか?
ほとんどの生徒が、同じことを思ったようで、それにナザドが気付いた。
「ん?もしかして、勉強不足ですかね?…二千年年の間に、魔力の平均値が下がってしまい、今では十分の一程度の魔力平均になっています。そんな中で蘇生魔法が、発動するわけがありません。そこで、最近はみなさんも使っている、精霊付与式が今の魔法の主流となっています」
そうか。最低でも発動する魔力に足りていないから、蘇生魔法は、使えないのか。
精霊付与式か。
やはり、魔力に精霊様を付与して魔法が使うのが主流…ん?
もしも、魔力だけで、魔法を使うということをしたらどうなるんだろうか?魔法が発動しないのだろうか?それとも、使えるのか?
あとで、質問の機会があればナザドに聞いてみよう。
「代わりに、スキル使いは、細分化され増えましたが…良いことか悪いことかはわかりませんね。魔力が減れば、それだけ精霊も離れますから」
嘆かわしい…といいつつ、どこか鼻で笑っているような気もするな。
我が家の人達は、スキルの多いことは、優秀であるという考えが、嫌いだ。スキルがたくさんあるからではなく、本人をみて判断するべきだからだ。
まぁ、ケルンがスキル少ないのもあるし、父様もスキルは少ない。ナザドもスキルは少ないのだ。だからか、スキルが多いから、優秀だとはいわない。反対に魔力が多いからと、優秀とも思わない。適材適所で、使えるならなんでもいいだろうと差別はしない。
「さてと…では、みなさん。杖は持ってきてますね?」
そういうなり、何人もが、ポケットや懐、腰元などから、杖を取り出していく。
その形状をみてやらかしたと思った。
マジか。
「あれ?」
この言葉に全てが込められているといっても過言ではない。
授業をやめて、部屋に戻りたくなった。今すぐに。
人の形をした土人形に鎧を着せて的のようにしているが、教材なんだろうか?
「それでは、みなさん。魔法とは何でしょうか?」
杖作りに集まった生徒が全員いるんだろうけど、大人もちらほら見える。制服を着ているところをみると、聴講しているのか?初級の授業なのに。
杖の流れのままサーシャ先生が、やるのかと思っていたんだけど、なんと、ナザドが教えるようだ。
「はい、そこの君。答えてくれるかな?」
ナザドはそういって、ケルンとは別のクラスの男の子を指差した。がり勉タイプというか、賢そうな子だ。
「魔法とは、精霊に魔力を渡すことで、世界を改変する事象です」
へぇー。やっぱり賢いんだな。全然知らなかったんだけど。
「精霊様に頼んでしてよかったらいいんじゃないの?」
そうなんだが、改変ってのは知らなかったんだ。
「かいへんって?」
んー。例えばそこの石の存在を変えるってことだな。魔力ってのは結構なんでもありなのかもな。
「もしかして…ミルデイとか?」
そうだな。ミルデイの体を作ったときは改変っていえるな。
「そっか…魔力…」
珍しいことに、ケルンが真剣に魔法のことを学ぼうとしている。嬉しい反面、その気持ちがわからないのはつらい。
ケルンは日ごとに成長しているが、こうして考えが伝わってこないことが増えた。
少しだけさびしく思うが、今は授業を真面目に受けよう。しかし、授業ってのは知らないことを学ぶことかと思うのだが、学園ってのは確認作業が基本みたいなもんなんだろうか?男の子は、当然ですって顔をしてるし。周りも似たり寄ったりだ。
「うん。教科書通りな解答をありがとう!」
笑顔できっぱりいいきったナザドを叱りかけた。男の子は、傷付いた顔をしてるし、大人がいうことじゃないだろ!ってか、先生がそんなこといっていいのか!
ナザドは、それではといって、何事もなかったように、授業を進めていくつもりのようだ。
「普段、僕たちが使っていて目にする魔法は二種類あることを知っていますか?」
注意はあとにして…いや、叱ろう。ケルンを通して説教だ。
ひとまずそれは置いとくとして、二種類?魔法が?攻撃とか防御とかか?
周囲をちらっとみると、ミケ君とかは、知っているようだ。他にも何人か知っているような顔をしているな。
ナザドは、問いの答えを自ら答えた。
「二千六百年以上前に、それまで使われていた魔法よりも強力な魔法が広まりました。クウリィエンシア皇国が発祥ともいわれておりますね!」
クウリィエンシアが発祥?
引っ掛かって仕方ないのだが、次の言葉で、その引っ掛かっていた謎は解けた。
「名前をアブァロン式といいます。テストに出しますから、覚えてくださいね」
アブァロン式ね。
アブァロン。訛っているが、アバロンとか、アヴァロンということだろうな。林檎の島だったか?この世界にないはずの言葉だ。人名なら別だがな。
俺のような知識があれば、異世界との関係などが結び付くかもしれない。
異世界といっても、同じ言葉はある。だが、まったく無関係な言葉が、ぽんっと出てくることはないはずだ。
「それまで使われていた魔法は複雑で、必要とする魔力量も多く必要な魔法であり、今では使える者はほとんどいません。公式で使えることが確認されているのは、フェスマルク家当主であり、首席ロイヤルメイジでもあられるティストール・フェスマルク様と、そして、時の精霊と契約を交わしておられるルワント様ぐらいですね」
へー。昔の魔法を父様と司祭様は使えるのか。父様が、そんな凄い魔法を使っているのは見たことがない。ひょっとして、祝福の儀式の時の詠唱とか、ヒントになるかもしれないな。
他の生徒達も、何やら考えているようだ。
「ぴんときてないようですね…治癒の魔法が使える人は手をあげてもらえますか?」
ほとんどの生徒が手をあげた。ケルンもだ。
「中級が使える人は?」
これには、僅かに、手が上がるだけになった。
中級の治癒は、魔力の高さと、本人の系統によって使える者が限られてくるそうだ。
上級にいたっては、それだけで、商売ができると少しだけ聞きかじっている。
ケルンの場合は、魔力をごり押せば、初級でも中級と同じくらいには使えることが、わかってはいるが、あまり多用はできない。本来の効果よりも強いということは、なんらかの副作用があるかもしれないからだ。
緊急事態をのぞいて、過ぎた治癒魔法は、かえって体を害する。ザクス先生が怪我をしたケルンに、そういって湿布をしながら、父様にいっていったけ。
ちょっとつまづいて、ひねっただけなのにザクス先生呼んだり、魔法をかけようとする程度には治癒魔法は身近だ。
ケルンの場合は過保護すぎるが、わりとどこの家庭でも初級の治癒魔法は使われているほどではある。
中級の治癒魔法が使える子をみて、ナザドは、満足そうに頷いた。
「なかなか優秀ですね!では、中級の治癒を使える人に尋ねます。初級の『リターンヒール』と中級の『リターンヒール』上級の『リターンヒール』の違いは何ですか?」
今度は、委員長タイプの女の子が手をあげて答えた。勉強できそうな子だけど…Sクラスのバッチをつけたままだから、性格がよくないとも思うがな。
「回復率の違いと、魔力の消費率の違いでしょうか?」
「うんうん。そんなのは、当たり前ですね!」
だから!ナザド!言い方がキツいし、もっと優しくしてあげろよ!
どうにか、ナザドに優しく!と伝わらないかと、見ていると、目線があった。
「では…君、わかりますか?」
そういって、ケルンに尋ねる。
お、坊っちゃまといわないとは、あとで、褒めよう…いや、褒めるほどでもないか。
「えっと…言葉が違っていて…精霊様も違う…とか?」
この質問は、魔法が使えるようになってから、疑問というか、そう感じていたことが、そのまま答えなような気がした。
『リターンヒール』って、言葉が同じに聞こえても、俺には意味が違って聞こえる。
ケルンがミケ君にかけた『リターンヒール』は、『健康促進』といえばいいのかな?精霊様の力は特に使わず、魔力をガンガン垂れ流しで使っていたようなものだ。
父様が怪我をしたランディにかけた『リターンヒール』は、いうならば『原点治癒』という風に、最初っから怪我がない状態に戻すし、たぶん、強い精霊様の力を借りてるのもあるのか、すぐに効果が出ていた。
「大正解です!なんて、素晴らしい!流石ですね!」
誉めてくれるのは嬉しい。
ただ、さっきまでの温度差を考えて欲しい。
叱るのではなく、説教をカルドに頼もうと決めた。
「同じ『リターンヒール』という、詠唱ですが、これは、アブァロン式が、簡略化されて、同一の詠唱が使われています。また、初級は、自らの魔力を主としています。中級は、契約の相性で異なりますが、地、水、風、火の順番で、回復率が上がります。もちろん、使い手の少ない光ならば断トツの回復量です」
なるほどな。魔法の原理がわかってきた。
つまり、今使っている魔法というのは、精霊魔法と、自分の魔力だけの魔法の二種類ということかもしれないな。
どちらも精霊様を通してはいるが、精霊魔法の方が効果は高い。というよりも、魔力の循環が上手くいくのかもしれないな。
「治癒魔法の場合、上級は光の精霊の力だけで、回復が行われます。また、魔力の消費率もかなり増えます。そうですね…上級なら、古傷だろうと手足の欠損であろうと治りますね」
んー…精霊様に直接治してもらう対価が魔力とするなら、魔力消費は高まるのか。
いや、魔力を変化してなのかもしれない。
思考を繰り返していると、誰かがナザドに「先生は上級が使えますか?」と尋ねるのが聞こえた。そういや、ナザドが、どこまで魔法が使えるのかを知らないな。
「僕ですか?治癒魔法も一応、上級もできますよ?疲れるんで、やりませんけど」
さらっといった。
生徒達が驚いているが、ミケ君やメリアちゃん、それにアシュ君は、当然という顔をしている。
まぁ、先生だから、当然なんだろうな。
「最上級の治癒は、死者をも癒すといわれております。蘇生魔法です。ただ、蘇生魔法を使えたといわれた人物はかなり少ないです」
蘇生魔法か…お伽噺では、聞いたことがあるのだけど、あまりにも悲しい話ばかりだったな。
「確認された使い手で、一番古いのは、アブァロン式を広められた方でもある、フェスマルク家初代当主であるフェスマルク様が有名ですね」
うちのご先祖か!
「他にも、エルフの女王であった、輝きの森のスピアネリアス。サナギッシュ国の巫女フセ・ヤナギラ。ドラルインの聖騎士アルファイドなど歴史上、何人かいます」
エルフの女王は、お伽噺でも聞いた名前だった。
不治の病で、幼い我が子を亡くした彼女は、七日間七晩泣き続けて、棒神様に祈りを捧げて、幼い我が子の命を再度授けられた。
自分の命と引き換えに。
他の名前は知らないが、似たような名前がお伽噺に出てくるから、モデルとなった人物達なんだろう。
その全員が命と引き換えに蘇生させている。
「フェスマルク様を除いて、自らの命と引き換えに蘇生魔法を成功させたということを考えれば、どれほど蘇生魔法が、現代では再現できないことか、わかるかと思います」
命と引き換えにか。
こういってはなんだが、それなら、誰でも使えるのではないのか?
ほとんどの生徒が、同じことを思ったようで、それにナザドが気付いた。
「ん?もしかして、勉強不足ですかね?…二千年年の間に、魔力の平均値が下がってしまい、今では十分の一程度の魔力平均になっています。そんな中で蘇生魔法が、発動するわけがありません。そこで、最近はみなさんも使っている、精霊付与式が今の魔法の主流となっています」
そうか。最低でも発動する魔力に足りていないから、蘇生魔法は、使えないのか。
精霊付与式か。
やはり、魔力に精霊様を付与して魔法が使うのが主流…ん?
もしも、魔力だけで、魔法を使うということをしたらどうなるんだろうか?魔法が発動しないのだろうか?それとも、使えるのか?
あとで、質問の機会があればナザドに聞いてみよう。
「代わりに、スキル使いは、細分化され増えましたが…良いことか悪いことかはわかりませんね。魔力が減れば、それだけ精霊も離れますから」
嘆かわしい…といいつつ、どこか鼻で笑っているような気もするな。
我が家の人達は、スキルの多いことは、優秀であるという考えが、嫌いだ。スキルがたくさんあるからではなく、本人をみて判断するべきだからだ。
まぁ、ケルンがスキル少ないのもあるし、父様もスキルは少ない。ナザドもスキルは少ないのだ。だからか、スキルが多いから、優秀だとはいわない。反対に魔力が多いからと、優秀とも思わない。適材適所で、使えるならなんでもいいだろうと差別はしない。
「さてと…では、みなさん。杖は持ってきてますね?」
そういうなり、何人もが、ポケットや懐、腰元などから、杖を取り出していく。
その形状をみてやらかしたと思った。
マジか。
「あれ?」
この言葉に全てが込められているといっても過言ではない。
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