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俺の話を聞いてくれ
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状況整理のために独り言に付き合ってもらいたい。
俺は国民番号53698247765。アジア圏に居を構えている。
個体名ヒサト。年齢は29になったばかりだ。
未婚かつ同居人はいない。ペットの類いも世話が面倒だからいない。
苗字は使わないから忘れたが…問題はないだろう。父親という遺伝子の型番だから興味がなくてな。
性別は男だ。まったく同じ遺伝子の女もいるらしいが、男性体は楽でよかった。どこぞで生きている同じ遺伝子の女には感謝だ。
男女でもまったく同じ遺伝子を持つなんて一昔前ではありえないことだ。今では当たり前な技術として行われている。男性体と女性体で得意なことが違うからどちらも用意をしている。
苗字や親が記号でしないのには色々と理由がある。
『人類社会の発展のため』
そのスローガンのもとに、人種や性別なんてものがなくなったとき、名字や信仰は全て不要になった。血筋なんて遺伝子をいじればどうとでもなるんだから、一番最初に廃れた。
信仰はもめにもめたが、よその星へと旅だって布教をするという名目で宗教家がいなくなったら、信仰がなくなった。
そこら辺から歯止めが効かなくなったんだろう。
遺伝子情報の解析から数百年。人類は貪欲にも進化を目指した。
その結果、遺伝子工学の発展によって、天才は簡単に生まれるようになった。それこそ、どの分野においてもだ。結果、親族というものの利点はなくなった。親の跡を継ぐよりも優秀な者を用意する方が低コストで確実になったからだ。
遺伝子の組み換えなんて当たり前になってしまい、子供は人工子宮から取り出され、工場から出荷された部品と変わらない。
愛情や家族という概念が希薄してしまっていた。
蜂の巣があるだろ?決まった部屋に卵を産んで生まれたら働き蜂が幼虫の世話をする。
あれが今の人類のライフスタイルだ。
俺も生まれてすぐに部屋を与えられその部屋の中で人生のほとんどを過ごしていた。
それに対して困ったと思ったことはない。
いつからか人工知能が統合国家の元首として人類を管理し、さらに人類の質を高めようとしいたぐらいだ。
人と交流するのは、仮想空間、とりわけ電脳会議とよばれる自分の分身のアバターを使って話す空間が主流になった。
学校というものがある地域もあるが、直接頭に書き込めば覚えれることを自力でしようなんて、暇をもて余している人間がやることだ。
何でもやれる。何でもできる。
それが人類だ。
ただ一つ。人類はまだ死に勝てない。外部記憶をクローンに植えつけても本人の記憶があるクローンができるだけで、本人ではない。
姿形や記憶は本人そのまはまでも、そこから未来はないのだ。過去の行動なら上手くいく。しかし、新たに行動をさせれば、上手くいかない。
例えば物語の続きを書かせようとしても、書けない。あるいは独創的な料理を作らせようとしてもできない。
感性。あるいは心のような物がクローンにも芽生えているのだろう。
死の完全なる克服はまだ時間がかかることだろう。心の研究をしている人間は徐々に減っている。
何せ心だ。一番不要なものだと俺はお前。
常に変動している物を予測するなどまだ人類には早いのかとしれない。
人は進化をすることで心を失ってしまった。行く先は破滅しかない。
なんて昔の哲学者がいっていたそうだが、目に見えないものを考える容量は、俺の中には存在しない。
人類はほぼ優秀な者しか残っていない。数は全盛期の頃よりもだいぶ減ってしまい、人口は数億ほどだが、そのほぼ全員が知能も身体も飛び抜けている。
ほぼと表しているのは少数だが懐古主義の者たちがおり、原始的な生活をしている者たちがいるからだ。
交流はしているが、彼らはどこか俺らと違う。
そんな中でも飛び抜けて優秀な者たち…俺もその中の一人だが…がいた。年齢や人種、性別などが無意味になった世の中においても、かなり変わった集団だっただろう。
医学、物理学、遺伝子工学から電子工学多岐にわたる専門家の中で、俺はソフトウェア工学において世界中でも二番手にいた。
あるとき、特に優秀でどの分野でも一番という、化け物じみた俺たちのリーダーのような男がこういった。
「ちょっと退屈だから新しい世界でも創らない?」
自堕落に、下手をすれば人類でも滅ぼす?なんてうっかりやらかしそうな犯罪予備軍ともいえる俺たちにそんな指針を打ち出した。
単純に面白そうだとその提案は、電脳会議で即決されたぐらいだ。
そういってできたのがVRMMO『エタニティア』だ。
現実とは反対で科学は発展していない、剣と魔法といったファンタジーという誰も見向きがしないゲームを作った。
そう。懐古主義者がしている生活を模倣したゲームだ。
そこには便利さはなく、人が一人では生きていけないというほど過酷な環境。
リーダーの願いに沿って、AIは人類が進化する前の旧人類のような、人との繋がりを求めたり、家族や仲間といった概念を教え、自己進化を促すように構築した。
AI同士のやりとりで新たなAIを生み出すようにするなど、俺たちすら把握できないほど、ゲームの『世界』は発展していた。
売れるはずがない。そうリーダー以外は思っていた。現代でこんな気持ちの悪い距離間…愛だの友情だの…目に見えない付加価値など無意味。
ただの暇つぶし。それだけで作った。
が、非常に売れた。本当にびっくりするほど売れた。
統合国家から配給された趣味や課題としての『仕事』の報酬としてたんまり貯めていた金をほとんど放出するようになるなんて、リーダー以外は予想していなかった。
ゲーム内の進化していくAIは、人間社会が破綻してしまった現代人にとってかなり新鮮味があるらしい。
家族というものを見直して、結婚という極々一部地域にしか残っていなかった風習が再評価されるようにもなった。
「エタニティアの人々は暖かい。我々現代人こそAIのようだ」
そういったレビューがついたほどだ。
正直、くだらないと思ってはいたが、仲間と作ったゲームが評価されたのは嬉しかったし、初めて誇らしい気持ちになれた。
それまでの俺は優秀ではあるった。だがその優秀さってのは、出された問題を解決することだけだ。自分から何かをしたり、作ったりはしなかった。
それが仲間たちとああでもない、こうでもないと話し合いながら作っていたのだ。
仲間といえど、世界のはみ出し者が群れていただけの集団。それがいつの間にか本当の仲間になっていた。
自覚を持つようになってからは、俺や他の仲間たちもさらに『エタニティア』を現実になるようにアップデートを繰り返した。
そのおかげもあって、およそ十五年弱も人々を魅了して、すでに別の世界と認識されるようになったのだ。
関連商品や、エタニティアの収入は俺たち開発者たちに分配された。その額は、旧人類史上にあった小さな国の国家予算をはるかに越えていた。
とはいえ、仲間たちはエタニティアで得た収入はそのままエタニティアへと還元していた。俺もかなりの額をつぎ込んだから、あまり実感はないが、まぁ、使いすぎってことはないだろう。
正直なところ、振り込まれた金額をみても、適当に組んだプログラムの特許で得ている金額に見慣れてしまい大金を手にしても、まったく心が踊ることはない。そんな冷めたガキであったことは認めよう。
くっそ生意気で恥ずかしいガキだった。自分が選ばれた人間だと本気で思っていて、他人を見下していた。
そうだ。そのときの俺は仲間の中でも最年少の十四歳だった。
俺は国民番号53698247765。アジア圏に居を構えている。
個体名ヒサト。年齢は29になったばかりだ。
未婚かつ同居人はいない。ペットの類いも世話が面倒だからいない。
苗字は使わないから忘れたが…問題はないだろう。父親という遺伝子の型番だから興味がなくてな。
性別は男だ。まったく同じ遺伝子の女もいるらしいが、男性体は楽でよかった。どこぞで生きている同じ遺伝子の女には感謝だ。
男女でもまったく同じ遺伝子を持つなんて一昔前ではありえないことだ。今では当たり前な技術として行われている。男性体と女性体で得意なことが違うからどちらも用意をしている。
苗字や親が記号でしないのには色々と理由がある。
『人類社会の発展のため』
そのスローガンのもとに、人種や性別なんてものがなくなったとき、名字や信仰は全て不要になった。血筋なんて遺伝子をいじればどうとでもなるんだから、一番最初に廃れた。
信仰はもめにもめたが、よその星へと旅だって布教をするという名目で宗教家がいなくなったら、信仰がなくなった。
そこら辺から歯止めが効かなくなったんだろう。
遺伝子情報の解析から数百年。人類は貪欲にも進化を目指した。
その結果、遺伝子工学の発展によって、天才は簡単に生まれるようになった。それこそ、どの分野においてもだ。結果、親族というものの利点はなくなった。親の跡を継ぐよりも優秀な者を用意する方が低コストで確実になったからだ。
遺伝子の組み換えなんて当たり前になってしまい、子供は人工子宮から取り出され、工場から出荷された部品と変わらない。
愛情や家族という概念が希薄してしまっていた。
蜂の巣があるだろ?決まった部屋に卵を産んで生まれたら働き蜂が幼虫の世話をする。
あれが今の人類のライフスタイルだ。
俺も生まれてすぐに部屋を与えられその部屋の中で人生のほとんどを過ごしていた。
それに対して困ったと思ったことはない。
いつからか人工知能が統合国家の元首として人類を管理し、さらに人類の質を高めようとしいたぐらいだ。
人と交流するのは、仮想空間、とりわけ電脳会議とよばれる自分の分身のアバターを使って話す空間が主流になった。
学校というものがある地域もあるが、直接頭に書き込めば覚えれることを自力でしようなんて、暇をもて余している人間がやることだ。
何でもやれる。何でもできる。
それが人類だ。
ただ一つ。人類はまだ死に勝てない。外部記憶をクローンに植えつけても本人の記憶があるクローンができるだけで、本人ではない。
姿形や記憶は本人そのまはまでも、そこから未来はないのだ。過去の行動なら上手くいく。しかし、新たに行動をさせれば、上手くいかない。
例えば物語の続きを書かせようとしても、書けない。あるいは独創的な料理を作らせようとしてもできない。
感性。あるいは心のような物がクローンにも芽生えているのだろう。
死の完全なる克服はまだ時間がかかることだろう。心の研究をしている人間は徐々に減っている。
何せ心だ。一番不要なものだと俺はお前。
常に変動している物を予測するなどまだ人類には早いのかとしれない。
人は進化をすることで心を失ってしまった。行く先は破滅しかない。
なんて昔の哲学者がいっていたそうだが、目に見えないものを考える容量は、俺の中には存在しない。
人類はほぼ優秀な者しか残っていない。数は全盛期の頃よりもだいぶ減ってしまい、人口は数億ほどだが、そのほぼ全員が知能も身体も飛び抜けている。
ほぼと表しているのは少数だが懐古主義の者たちがおり、原始的な生活をしている者たちがいるからだ。
交流はしているが、彼らはどこか俺らと違う。
そんな中でも飛び抜けて優秀な者たち…俺もその中の一人だが…がいた。年齢や人種、性別などが無意味になった世の中においても、かなり変わった集団だっただろう。
医学、物理学、遺伝子工学から電子工学多岐にわたる専門家の中で、俺はソフトウェア工学において世界中でも二番手にいた。
あるとき、特に優秀でどの分野でも一番という、化け物じみた俺たちのリーダーのような男がこういった。
「ちょっと退屈だから新しい世界でも創らない?」
自堕落に、下手をすれば人類でも滅ぼす?なんてうっかりやらかしそうな犯罪予備軍ともいえる俺たちにそんな指針を打ち出した。
単純に面白そうだとその提案は、電脳会議で即決されたぐらいだ。
そういってできたのがVRMMO『エタニティア』だ。
現実とは反対で科学は発展していない、剣と魔法といったファンタジーという誰も見向きがしないゲームを作った。
そう。懐古主義者がしている生活を模倣したゲームだ。
そこには便利さはなく、人が一人では生きていけないというほど過酷な環境。
リーダーの願いに沿って、AIは人類が進化する前の旧人類のような、人との繋がりを求めたり、家族や仲間といった概念を教え、自己進化を促すように構築した。
AI同士のやりとりで新たなAIを生み出すようにするなど、俺たちすら把握できないほど、ゲームの『世界』は発展していた。
売れるはずがない。そうリーダー以外は思っていた。現代でこんな気持ちの悪い距離間…愛だの友情だの…目に見えない付加価値など無意味。
ただの暇つぶし。それだけで作った。
が、非常に売れた。本当にびっくりするほど売れた。
統合国家から配給された趣味や課題としての『仕事』の報酬としてたんまり貯めていた金をほとんど放出するようになるなんて、リーダー以外は予想していなかった。
ゲーム内の進化していくAIは、人間社会が破綻してしまった現代人にとってかなり新鮮味があるらしい。
家族というものを見直して、結婚という極々一部地域にしか残っていなかった風習が再評価されるようにもなった。
「エタニティアの人々は暖かい。我々現代人こそAIのようだ」
そういったレビューがついたほどだ。
正直、くだらないと思ってはいたが、仲間と作ったゲームが評価されたのは嬉しかったし、初めて誇らしい気持ちになれた。
それまでの俺は優秀ではあるった。だがその優秀さってのは、出された問題を解決することだけだ。自分から何かをしたり、作ったりはしなかった。
それが仲間たちとああでもない、こうでもないと話し合いながら作っていたのだ。
仲間といえど、世界のはみ出し者が群れていただけの集団。それがいつの間にか本当の仲間になっていた。
自覚を持つようになってからは、俺や他の仲間たちもさらに『エタニティア』を現実になるようにアップデートを繰り返した。
そのおかげもあって、およそ十五年弱も人々を魅了して、すでに別の世界と認識されるようになったのだ。
関連商品や、エタニティアの収入は俺たち開発者たちに分配された。その額は、旧人類史上にあった小さな国の国家予算をはるかに越えていた。
とはいえ、仲間たちはエタニティアで得た収入はそのままエタニティアへと還元していた。俺もかなりの額をつぎ込んだから、あまり実感はないが、まぁ、使いすぎってことはないだろう。
正直なところ、振り込まれた金額をみても、適当に組んだプログラムの特許で得ている金額に見慣れてしまい大金を手にしても、まったく心が踊ることはない。そんな冷めたガキであったことは認めよう。
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