僕と彼の話

竹端景

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ひだまり

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 天気もよくて、布団を干すには最高の日だ。
 僕も彼も休みだからなんとなくテレビをつけて、なんとなくコーヒーをいれて、なんとなく同じソファに座る。

 なんとなく雑誌を眺めていれば、ふとももに圧力が加わる。

「もちもち」
「はいはい」

 にやにやしながら、僕のふともも触る彼の喉をなでれば、猫のようにそのまま僕の腕の中に入ってくる。

「重い」
「軽いっしょ?」

 ほほにキスを受けながら、大きな猫を抱き上げて、乗りやすい形にしてあげる。

「猫だね」
「…どっちの意味だ?」
「どっちでも可愛い」

 わりと有名になった隠語でも、猫みたいな彼だからって意味でも僕にとっては可愛い猫だ。
 近所のボス猫みたいな仏頂面をしながら、低めな声で耳元で囁く。

「にゃー」

 僕からは彼の耳が見えているんだけど、真っ赤もいいところだ。
 甘噛みすればんにゃなんて、また可愛い声だった。

「か、噛むのは別のプランで料金が発生します」
「料金制なの」

 がばっと顔をあげて仕事で使う言葉だからすらすらいえてて面白かった。いつもはこちらのプランは別料金ですとかいってるからね。営業マンだから。

「いい大人のすることじゃないね」
「子供の頃の俺らじゃできないから、今するんだよ」

 顔を赤くした彼がすねたようにいう。
 子供の頃の僕らは大人に変な期待をしていた。大人だったらこうする。大人はこれができる。
 別に大人でなくてもこのささやかな空間や、あふれてこぼれる気持ちを口にするぐらいできただろうに。子供の頃なら今以上に口にできたはずだ。
 もったいないことをしてきた。

「ねぇ」
「ん?」

 耳を気にする彼の手を握って顔を見る。

「好きだよ」
「…知ってる。俺だって好きだし…」

 最後の方はあまり聞こえないほど、ぼそぼそといっているけど、僕の顔をちらちら見ている。

「それこそずっと知ってるよ」

 中学校からずっと僕をみて、高校も同じにするぐらい好きだったってことは知っている。最初は友達だからかと思っていたのは内緒だけど。

「外に行くか?」
「もうちょっとしたらね。ほら、なでさせて」
「…うん」

 大きな猫とゴロゴロしたら、買い物にでかけよう。一緒に何か作って食べたらまたゴロゴロすればいい。
 大人だからできることってのは、こんなことでいいんだよって、子供の頃の僕や変に悩んでた…今でもたまになるけど…彼に教えてあげたい。
 僕らは自由だよって。
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