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恋する勇者君
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世界は神様が決めたことでまわっている。人が自由にできるのは、気持ちだけだ。
少なくても僕のこの気持ちは誰かに決められたものじゃない。
勇者は代々王族の者が勤めている。表向きは村人や孤児としているが実際は王族だ。
神様が選ぶ血筋というのがあってそのことを知っているのは極一部だ。いってしまえば、血筋の者であれば身代わりも許されている。役職者とはそんなものだ。
表だって王族が勇者だといえない理由がある。
例え勇者でも死ぬときは死ぬからだ。みんなの希望が呆気なく死ねばそれだけで王族の権威は下がる。
魔王は自然災害だ。魔物が知性を持って徒党を組んでしまえば勝てない。神様が決めた役割を全うすれば勝てるとみんな信じてきた。
僕は血の繋がりがあっても心のない王族や、顔も知らない人のために強くなったんじゃない。
全ては彼女のためだ。彼女のために僕たちは…僕は戦ってきた。
王族でも身分の低い側室の王子はいないものとされる。母からも旅に出る前から、僕はすでに死んだものとされていた。男だから役に立たないといわれたぐらいだ。
だからこそ魔王の討伐に選ばれた。死んだって構わない存在が僕だ。
神様が選んでなくてもきっと僕が代わりに出されていた。
名前を名乗るのを禁じて、旅の間は役職でのやり取りをするのはそのためだ。勇者が魔王を倒せばいい。僕じゃなくても次の勇者が倒せばいいだけだ。
初めてその人に会ったのは神殿の一室だった。
鍛えぬかれた体に、無駄のない動き。貴族子女みたいに無駄にこびたり、きつい匂いもなく、優しく頬笑む姿に僕は一目で恋に落ちた。
魔法使いさんや僧侶さんも彼女の優しさにすぐ好きになっていた。僕よりも彼女のことが好きになった自信があるというが、僕の彼女へよ愛は負けるつもりはない。
「ほら、泣くんじゃないよ。汚れたら洗えばいいのさ」
初めて魔物が襲ってきたとき、返り血で血だらけになって泣いてしまう僕らに彼女は傷だらけになっても優しくしてくれた。
「洗濯も料理もできない…なるほどね…あたしが教えていってあげるよ」
役割分担を交代しようと彼女にいわれるままにできることをいえば、彼女は考え込んで、料理をしてくれた。
今まで食べてきた中で一番美味しいのは彼女の手料理だ。あんなに優しい味を僕は知らない。ずっと彼女には料理を作ってほしいと願ってしまうほどだ。
身の上話は禁じられていたけれど、勇者が王族から選ばれたこと、賢者の孫や聖者の娘が選ばれたことは知っていた。
戦士だけは軍からではなく、民間のギルドから選ばれたのだが、神様はわかっていらっしゃる。
僕らは彼女がいなければ旅なんてできなかった。
箱入りでなにもできない。戦い方は知っていても生活力は僕らにはなかったのだ。
とはいえ、さすがに好きな人に下着を洗われるのは恥ずかしく…理由も理由で、男の生理現象とはえ…あんな素敵な女性に触らせるのはだめだと失敗しながらも洗濯だけは必死で覚えた。
でも彼女は気にしていなかったのだ。
「若いんだから仕方ないよ…処理できるように一人になれるようにしてあげようか?」
なんていうもんだから、彼女の前だとどんどん恥ずかしく…夢で彼女と…なんて思い出したら、まともに話せなくなっていく。
魔法使いさんや僧侶さんに相談をしだして、ちょっとでも親密になれたと思う。失敗して二人に怒られもしたけれど、上手くいっていた。
お酒の力を使って告白もした。
「あたしも好きだよ?」
一世一代の告白が大成功したと思ったら彼女がいった。
「…眠いから…一緒に寝るかい?」
「い、いいんですか?」
「仲良くするには一緒に寝るのが一番さね」
という彼女に従って彼女の部屋に入った。
初めてのキスをほほにされて舞い上がっていると、彼女は服を脱いでいく。
王族は結婚式で初めて本当のキスをして、それまではほほにキスをする決まりがある。ひょっとしたら、彼女は僕が王族だと知っていたんだろう。
むろん、キスはただの親愛の意味ではない。
もしかしてと思っていると、早く脱げといわれて僕も脱いでいく。
脱ぎながらも心臓は爆発しそうなほど高鳴っていた。とうとう…僕は彼女に…僕を捧げれて男になるときがきたんだ。
守ってもらっていた。そんな彼女を守れるようになって、僕はやっと男として見られるようになった。
「男になったんだな…いつのまになったんだい?」
と彼女がいってくれたときも、慢心せず頑張ってきた。それがついに報われたんだ。
ベッドに横になる彼女と結ばれる喜びの中で…僕は失敗した。お酒と初めての緊張で…まったく反応しない。男女の営みを知らない僕は、王族の性教育で聞いていた初めては不能になりやすいという言葉を実感した。
彼女に謝った。これでは彼女に恥をかかせてしまう。
「ご、ごめんなさい…緊張で…こんなの…初めてで…わからなくて…あの」
「なにがだい?…ああ…いいんだよ…ほら寝な…」
お酒を飲みすぎてたから、眠くなったのだろう。
そういってあの胸を枕に寝かしつけられてしまった。母性が強い彼女と裸で触れているだけで僕は安心と満足感でいっぱいになった。
心は結ばれたんだ。次こそ僕を彼女に捧げる!
夢の中に落ちながら決意した。
目が覚めたら少し肌寒かった。愛しい彼女を抱き締めようと目を開ければ誰もいなかった。
もう用意したのかな?と脱いでいた服を着込みながらふと机の上の書き置きを見つけた。
読み終えてすぐに、今までの冒険でも出したことのない悲鳴をあげてしまった。
少なくても僕のこの気持ちは誰かに決められたものじゃない。
勇者は代々王族の者が勤めている。表向きは村人や孤児としているが実際は王族だ。
神様が選ぶ血筋というのがあってそのことを知っているのは極一部だ。いってしまえば、血筋の者であれば身代わりも許されている。役職者とはそんなものだ。
表だって王族が勇者だといえない理由がある。
例え勇者でも死ぬときは死ぬからだ。みんなの希望が呆気なく死ねばそれだけで王族の権威は下がる。
魔王は自然災害だ。魔物が知性を持って徒党を組んでしまえば勝てない。神様が決めた役割を全うすれば勝てるとみんな信じてきた。
僕は血の繋がりがあっても心のない王族や、顔も知らない人のために強くなったんじゃない。
全ては彼女のためだ。彼女のために僕たちは…僕は戦ってきた。
王族でも身分の低い側室の王子はいないものとされる。母からも旅に出る前から、僕はすでに死んだものとされていた。男だから役に立たないといわれたぐらいだ。
だからこそ魔王の討伐に選ばれた。死んだって構わない存在が僕だ。
神様が選んでなくてもきっと僕が代わりに出されていた。
名前を名乗るのを禁じて、旅の間は役職でのやり取りをするのはそのためだ。勇者が魔王を倒せばいい。僕じゃなくても次の勇者が倒せばいいだけだ。
初めてその人に会ったのは神殿の一室だった。
鍛えぬかれた体に、無駄のない動き。貴族子女みたいに無駄にこびたり、きつい匂いもなく、優しく頬笑む姿に僕は一目で恋に落ちた。
魔法使いさんや僧侶さんも彼女の優しさにすぐ好きになっていた。僕よりも彼女のことが好きになった自信があるというが、僕の彼女へよ愛は負けるつもりはない。
「ほら、泣くんじゃないよ。汚れたら洗えばいいのさ」
初めて魔物が襲ってきたとき、返り血で血だらけになって泣いてしまう僕らに彼女は傷だらけになっても優しくしてくれた。
「洗濯も料理もできない…なるほどね…あたしが教えていってあげるよ」
役割分担を交代しようと彼女にいわれるままにできることをいえば、彼女は考え込んで、料理をしてくれた。
今まで食べてきた中で一番美味しいのは彼女の手料理だ。あんなに優しい味を僕は知らない。ずっと彼女には料理を作ってほしいと願ってしまうほどだ。
身の上話は禁じられていたけれど、勇者が王族から選ばれたこと、賢者の孫や聖者の娘が選ばれたことは知っていた。
戦士だけは軍からではなく、民間のギルドから選ばれたのだが、神様はわかっていらっしゃる。
僕らは彼女がいなければ旅なんてできなかった。
箱入りでなにもできない。戦い方は知っていても生活力は僕らにはなかったのだ。
とはいえ、さすがに好きな人に下着を洗われるのは恥ずかしく…理由も理由で、男の生理現象とはえ…あんな素敵な女性に触らせるのはだめだと失敗しながらも洗濯だけは必死で覚えた。
でも彼女は気にしていなかったのだ。
「若いんだから仕方ないよ…処理できるように一人になれるようにしてあげようか?」
なんていうもんだから、彼女の前だとどんどん恥ずかしく…夢で彼女と…なんて思い出したら、まともに話せなくなっていく。
魔法使いさんや僧侶さんに相談をしだして、ちょっとでも親密になれたと思う。失敗して二人に怒られもしたけれど、上手くいっていた。
お酒の力を使って告白もした。
「あたしも好きだよ?」
一世一代の告白が大成功したと思ったら彼女がいった。
「…眠いから…一緒に寝るかい?」
「い、いいんですか?」
「仲良くするには一緒に寝るのが一番さね」
という彼女に従って彼女の部屋に入った。
初めてのキスをほほにされて舞い上がっていると、彼女は服を脱いでいく。
王族は結婚式で初めて本当のキスをして、それまではほほにキスをする決まりがある。ひょっとしたら、彼女は僕が王族だと知っていたんだろう。
むろん、キスはただの親愛の意味ではない。
もしかしてと思っていると、早く脱げといわれて僕も脱いでいく。
脱ぎながらも心臓は爆発しそうなほど高鳴っていた。とうとう…僕は彼女に…僕を捧げれて男になるときがきたんだ。
守ってもらっていた。そんな彼女を守れるようになって、僕はやっと男として見られるようになった。
「男になったんだな…いつのまになったんだい?」
と彼女がいってくれたときも、慢心せず頑張ってきた。それがついに報われたんだ。
ベッドに横になる彼女と結ばれる喜びの中で…僕は失敗した。お酒と初めての緊張で…まったく反応しない。男女の営みを知らない僕は、王族の性教育で聞いていた初めては不能になりやすいという言葉を実感した。
彼女に謝った。これでは彼女に恥をかかせてしまう。
「ご、ごめんなさい…緊張で…こんなの…初めてで…わからなくて…あの」
「なにがだい?…ああ…いいんだよ…ほら寝な…」
お酒を飲みすぎてたから、眠くなったのだろう。
そういってあの胸を枕に寝かしつけられてしまった。母性が強い彼女と裸で触れているだけで僕は安心と満足感でいっぱいになった。
心は結ばれたんだ。次こそ僕を彼女に捧げる!
夢の中に落ちながら決意した。
目が覚めたら少し肌寒かった。愛しい彼女を抱き締めようと目を開ければ誰もいなかった。
もう用意したのかな?と脱いでいた服を着込みながらふと机の上の書き置きを見つけた。
読み終えてすぐに、今までの冒険でも出したことのない悲鳴をあげてしまった。
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