最強武器「本」を片手に異世界生活!

マグロのたたき

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3.宿屋にて

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「……それで、レナさんはもう帰っていただいても……」
「……」

 連行する最中、俺の後ろただついてきていた。
 帰る道とたまたま被っている……なんてこということはなさそうだが。

 ――そして学園につき先生に報告、引渡しをする際も同行して来た。

「あの……」
「……」

 ただただ無言が帰ってくる。
 なんだかとても気まずい。

「もう暗いですし、明日も早い……ですよ? 親も心配するから……」

 もう既に月の淡い光が差し掛かってきている。

「……アズヤくんが帰らないなら……私も帰らない」

 赤くなった頬を隠すように俯く。

 可愛すぎるんだよ……卑怯だろそんなのさぁ……。
 いや待て俺。平常心、平常心を忘れるな俺!

「まあ俺にもやることはあるからな。家までは送ろうか?」
「……別にいい」

 やっと口を開いてくれたが、話が続く気がこれっぽっちもしない。
 コミュ力はそこまでないんだよ……。

「じゃあホントにもうすぐで俺帰っちゃうからな?」
「……うん」
「一人で帰れるんだな?」
「……うん」

 ……何をそこまで心配する必要があるのだろうか。仮にも冒険者を目指す学園生の一人、夜道ぐらい余裕でなければならない。
 だがそれでも心配してしまう。無駄な心配なのだろうが。

「……ここ、宿屋だけど……」
「ここで寝泊まりしてるんだ」

 一見してみると質素な何処にでもある宿屋だが、設備は充分。
 国から無償で提供されるのにはもう一つ理由があり、この地下には今では珍しい未攻略ダンジョンがあることが大きい。
 そしてこのダンジョンの攻略は俺に託されている。魔法や剣技のいい練習になるのが大きい。

「じゃあまた明日」

 宿屋のドアに手をかけ、ゆっくりと開ける。
 ある人にバレないように――

「ア~ズ~ヤ~! どこほっつき歩いてたの!?」
「……あっどうも此度は」

 今、俺を叱っている女性はルフェア。この宿屋の店主。
 人寄りの獣人。謎に包まれた存在だが、宿の経営技術は確かなもので、多くの信頼と支持を得ている。歳は俺の一個下。若くして両親からこの宿を受け継いだらしい。
 金と赤が混じった様な毛と夕暮れをそのまま取ったかのような鮮やかな目の色をしている。
 獣人とはいえ、猫耳が非常に可愛らしい。

「あのねぇ~! 国からの依頼でアズヤの保護者役をしている訳だけどね? もしアズヤの身に何かあったら私の責任になるんだから!」
「本当のところは?」
「心配したんだよもおお! 死んでたらどうしようってぇ!」

 そう言って泣きわめきながら抱きついてくる。仕事に忠実ではある一方で、過度な心配性でもあるのだ。

「まあご飯は出来ているし、今日は早めに寝たらどう? ダンジョンには湧きが悪いのか魔物が全く居なかったし」
「そうだな……そうさせてもらうよ」

 何時もならダンジョンで鍛えてからなのだが、流石に時間もそうない。
 仮にダンジョンより外に魔物が出たら、ここの宿を借りている冒険者が狩り尽くしてくれることだろうから今日はゆっくり休もう。

 慣れない事をしたからだろうか、やけに身体が重たい。

「……書撃スキル……かあ」

 ベットの上に寝転がり、天井を眺めてぽつりと呟く。

 今まで一回も使って来なかったが、剣や魔法なんかよりもずっとしっくり来たんだよな……。
 ただ本で殴るだけなのに、出来ることが多そうだ。

「……こうしちゃ居られん! 試し殴りだ!」

 本棚からあの時打撃に使った本と同じぐらいの分厚さの本を持って、地下にあるダンジョンへ侵入する。

「さあとことん付き合って貰うぞ。ただの魔導書!」

 複雑に入り組んだ洞窟型ダンジョンも、何度も潜れば何処にどう繋がるのかなんて手に取るようにわかる。

「おっ……出てきた出て来た」
 
 まだ浅いところだからか低級の魔物が出てくる。とは言え湧きが悪いと言うのは本当らしくただのゴブリン程度であっても中々出てこなかったが、ここに来てやっと出てきたのだ。

 相手はこれでもかと敵意マシマシ。

「では……遠慮なく!」

 本を持ち、踏み込む。

 次の瞬間、ゴブリンとの距離を一瞬で詰めていた。

「うおぉおっ!」

 間髪入れずに本の角で思い切り頭部を上から殴る。

 ドンと鈍い音が辺りに響き渡り……次第に収まる。

 足元にはそのゴブリンの頭部がもげた非常に生々しい死体が転がっていた。

 ……一歩間違えてたらアイツらを殺していた。それほどまでに強力で危険な力という事か。

 ―もう少しだけ練習しておきたいな。
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