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勇者なんて俺は知らない
魔物、倒さなきゃダメ?
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一瞬だった。
名称をしっかり口に出したからだろうか。
それとも、俺が集中し、練度を上げたからだろうか。
魔物…野を埋め尽くしていたおびただしいサイクロプスの群れは、まるで地獄の業火の如き強大な炎に包まれ、あっという間に跡形も無く消滅した。
先日、あの街の時と違うのは、
サイクロプスたちに、断末魔を上げる間すら与えなかったことである。
天を貫くような紅蓮の炎が上がり、そして何事もなかったかのように消える。
その後には、魔物の気配など微塵もなかった。
「う、うそ…。」
その光景を見たミレットが、口をポカンと開けて、肩を落としたような姿勢で茫然とする。
「こ、これは…いくらなんでも…ヤバすぎるね…。」
「はい、師匠…。」
シャミィとナナも同様だ。
「勇者様、すご、い。やっぱり、アナタ、が、この、世界、希、望…。」
アミアは、無理に魔法を連発した影響か、事が終わると同時にその場にへたり込んだ。俺は慌てて駆け寄り、安否を問う。
「だ、大丈夫…?ご、ごめんな。俺がもっと早く魔法を使えていれば…。」
「うう、ん。大丈夫。勇者様、無事、よかった。」
汗だくで、そして肩で息をしながら、アミアは座りこんだまま俺を見上げると、力無く微笑んで見せた。
それを見て、俺も僅かに頬を緩ませるのであった。
「正直、ア、アミアさんの魔法もトンデモでしたけど…失礼ながら、ユージーン様のはレベルが違いますね…。」
「ああ、アンタらがいなきゃヤバかったよ。ま、今回は間違いなく、アイツらユージーンを狙って来たっぽいけど、ね。」
ミレット達も、その場にペタリと座り込んだ。疲れたのであろう。
皆が無事で、よかったと思う。だけど、俺にはどうしても腑に落ちないことがあった。
「あ、あのさ。魔物とは、仲良くなれたりしないのかな。」
俺は俯いて、拳を軽く握ってみる。
特に痛みはないけれど。
それを聞いた面々は、各々の主張を口にし始めた。
「無理でしょうね。魔物は、人間を…激しく憎んでいますから。それこそ、人間を滅ぼしつくそうとするほどに…。」
ミレットは、魔物の内情を知っているのだろうか。
悲しそうな面持ちで、口角を僅かに上げながら、はにかんでいるようだ。
だが、その眼は何かを物語っているようだ。
魔物との間に、何かがあったのだろうか。
「そうさね…魔物ってのは、数は少ないとは言え、個体は人間よりも遥かに強いからね。『数が少ない』って弱点さえ克服しちまえば、この世界の覇権を握るのなんざ、容易だろうよ。なのに、人間側とわざわざ仲良くする、なんて利点、無いだろうねぇ。」
「はい、師匠。」
シャミィとナナのその口ぶりから、これまでの魔物との戦いの壮絶さを垣間見ることができるような気がした。
何か、後ろ暗さを感じさせる…そんな印象。
「私、わからない。勇者様、ごめんなさい。でも、私、勇者様になら、従う。勇者様、魔物と仲良くする、言うなら…。」
アミアは困り顔で、杖を抱えて項垂れた。言葉の真意が、俺にはよくわからない。けど、アミアはその可能性を否定はしていない、ということなのだろうか。
勇者だなんだと言われても、俺は結局何もわからないままだ。そしてその結果、周囲を何度も危険に晒した。
だけど、この世界ではイレギュラーな存在であるはずの俺が、そこに生きる者たちを、どうにかしてしまっていいのだろうか。
俺には、本当にまだ何も、わからないんだ。
しばらくの沈黙の後、ミレットがその場でおもむろにこちらに身を乗り出し、谷間を強調して俺に問うてきた。
「ユージーン様、差し支えなければ、ステータスを拝見したいのですが…。
スキルや魔法の使い方とか、詳細がわかれば…私、少しはお役に立てると思うんです!」
ミレットは、眼を輝かせながら楽しげに叫んだ。
「ステータス?何だいそりゃ?」
「シャ、シャミィさんご存知ないんですか?神々の加護を授かった伝説の勇者には、その加護を把握するための補助魔法…すなわち『ステータス』が使える、という伝承…。」
「ふぅん、初耳だねぇ。」
「はい、師匠。」
「ミレット、物知り。私も、知らない。」
ミレット以外の一同は、眼を丸くしている。
ステータス、って、この世界での一般的なモノかと思っていたけど、違うのか。
「み、皆さんが不勉強なんですよ…。
私これでも、王国立騎士養成学校・マヌクルァルの卒業生ですから!」
ミレットはすくっと立ち上がり、鼻をフンっと鳴らして、腰に両手を当てるお決まりのキメポーズをとって見せた。
この世界でも、それあるんだ。
「はぁん、人は見かけによらないモンだ。アタシはステータスなんて聞いたことなかったけど、学校で教えてくれるのか今時は。」
「いいからいいから!というワケでユージーン様、いかがです?」
そう言ってミレットは、眩いほどの笑顔をこちらに向ける。断りづらい。
でもまぁ、確かに知らないことばかりだ。
俺はまず、この世界について、そして自分と、その周りについて。
少しずつでも知っていかねばならないのだろう。
「じゃ、みんなで見てよ。そんで助言してほしい。
『ステータス・オープン』。」
前回と同じ画面が現れる。
そして俺は、
※その他のスキル
のあたりをタップし、全てのスキルを眼前に表示した。
名称をしっかり口に出したからだろうか。
それとも、俺が集中し、練度を上げたからだろうか。
魔物…野を埋め尽くしていたおびただしいサイクロプスの群れは、まるで地獄の業火の如き強大な炎に包まれ、あっという間に跡形も無く消滅した。
先日、あの街の時と違うのは、
サイクロプスたちに、断末魔を上げる間すら与えなかったことである。
天を貫くような紅蓮の炎が上がり、そして何事もなかったかのように消える。
その後には、魔物の気配など微塵もなかった。
「う、うそ…。」
その光景を見たミレットが、口をポカンと開けて、肩を落としたような姿勢で茫然とする。
「こ、これは…いくらなんでも…ヤバすぎるね…。」
「はい、師匠…。」
シャミィとナナも同様だ。
「勇者様、すご、い。やっぱり、アナタ、が、この、世界、希、望…。」
アミアは、無理に魔法を連発した影響か、事が終わると同時にその場にへたり込んだ。俺は慌てて駆け寄り、安否を問う。
「だ、大丈夫…?ご、ごめんな。俺がもっと早く魔法を使えていれば…。」
「うう、ん。大丈夫。勇者様、無事、よかった。」
汗だくで、そして肩で息をしながら、アミアは座りこんだまま俺を見上げると、力無く微笑んで見せた。
それを見て、俺も僅かに頬を緩ませるのであった。
「正直、ア、アミアさんの魔法もトンデモでしたけど…失礼ながら、ユージーン様のはレベルが違いますね…。」
「ああ、アンタらがいなきゃヤバかったよ。ま、今回は間違いなく、アイツらユージーンを狙って来たっぽいけど、ね。」
ミレット達も、その場にペタリと座り込んだ。疲れたのであろう。
皆が無事で、よかったと思う。だけど、俺にはどうしても腑に落ちないことがあった。
「あ、あのさ。魔物とは、仲良くなれたりしないのかな。」
俺は俯いて、拳を軽く握ってみる。
特に痛みはないけれど。
それを聞いた面々は、各々の主張を口にし始めた。
「無理でしょうね。魔物は、人間を…激しく憎んでいますから。それこそ、人間を滅ぼしつくそうとするほどに…。」
ミレットは、魔物の内情を知っているのだろうか。
悲しそうな面持ちで、口角を僅かに上げながら、はにかんでいるようだ。
だが、その眼は何かを物語っているようだ。
魔物との間に、何かがあったのだろうか。
「そうさね…魔物ってのは、数は少ないとは言え、個体は人間よりも遥かに強いからね。『数が少ない』って弱点さえ克服しちまえば、この世界の覇権を握るのなんざ、容易だろうよ。なのに、人間側とわざわざ仲良くする、なんて利点、無いだろうねぇ。」
「はい、師匠。」
シャミィとナナのその口ぶりから、これまでの魔物との戦いの壮絶さを垣間見ることができるような気がした。
何か、後ろ暗さを感じさせる…そんな印象。
「私、わからない。勇者様、ごめんなさい。でも、私、勇者様になら、従う。勇者様、魔物と仲良くする、言うなら…。」
アミアは困り顔で、杖を抱えて項垂れた。言葉の真意が、俺にはよくわからない。けど、アミアはその可能性を否定はしていない、ということなのだろうか。
勇者だなんだと言われても、俺は結局何もわからないままだ。そしてその結果、周囲を何度も危険に晒した。
だけど、この世界ではイレギュラーな存在であるはずの俺が、そこに生きる者たちを、どうにかしてしまっていいのだろうか。
俺には、本当にまだ何も、わからないんだ。
しばらくの沈黙の後、ミレットがその場でおもむろにこちらに身を乗り出し、谷間を強調して俺に問うてきた。
「ユージーン様、差し支えなければ、ステータスを拝見したいのですが…。
スキルや魔法の使い方とか、詳細がわかれば…私、少しはお役に立てると思うんです!」
ミレットは、眼を輝かせながら楽しげに叫んだ。
「ステータス?何だいそりゃ?」
「シャ、シャミィさんご存知ないんですか?神々の加護を授かった伝説の勇者には、その加護を把握するための補助魔法…すなわち『ステータス』が使える、という伝承…。」
「ふぅん、初耳だねぇ。」
「はい、師匠。」
「ミレット、物知り。私も、知らない。」
ミレット以外の一同は、眼を丸くしている。
ステータス、って、この世界での一般的なモノかと思っていたけど、違うのか。
「み、皆さんが不勉強なんですよ…。
私これでも、王国立騎士養成学校・マヌクルァルの卒業生ですから!」
ミレットはすくっと立ち上がり、鼻をフンっと鳴らして、腰に両手を当てるお決まりのキメポーズをとって見せた。
この世界でも、それあるんだ。
「はぁん、人は見かけによらないモンだ。アタシはステータスなんて聞いたことなかったけど、学校で教えてくれるのか今時は。」
「いいからいいから!というワケでユージーン様、いかがです?」
そう言ってミレットは、眩いほどの笑顔をこちらに向ける。断りづらい。
でもまぁ、確かに知らないことばかりだ。
俺はまず、この世界について、そして自分と、その周りについて。
少しずつでも知っていかねばならないのだろう。
「じゃ、みんなで見てよ。そんで助言してほしい。
『ステータス・オープン』。」
前回と同じ画面が現れる。
そして俺は、
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のあたりをタップし、全てのスキルを眼前に表示した。
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