疾風迅雷アルティランダー

エルマー・ボストン

文字の大きさ
13 / 33
第ニ話 因果は動き出す

5

しおりを挟む
坂田家の呼び鈴が、再び鳴る。今回は一回のみだ。訪問者は酷暑の中汗もかかず、眉一つ動かさず、笑顔を絶やさずにただジッと待っていた。
やがて、松葉杖を突く音とたどたどしい足音が、玄関まで近づいてきた。

「はぁい、どなたですかーっと。」

めんどくさそうに総司が戸を開けると

「あっ、どぉーもこんにちは!あなたが東郷総司さん?ワタクシ、スタークラウン社から参りました、ジャック=西条と申します!」

爽やかな笑顔を振りまく、若干胡散臭い男が、名刺を手に立っていた。
総司の顔は、あからさまに引きつっていく。

「麦茶しかないんですけど。」

製鉄所での作業を中断し、士郎がまたも麦茶を振る舞う。扇風機の風が、汗でてかった士郎の頭の少ない毛髪を、ユラユラと揺らす。

「やぁわざわざすみません、頂きます。・・・ぶへぇっ!!コレ麺つゆじゃないですか!!」

西条は、口に含んだ麦茶だと思っていたものを盛大に吐き出し、総司にぶちまけた。

「うわあっ汚ねえ!!・・・え?麺つゆ?!あっホントだシール貼ってあ・・・え?!さっきのヤツは涼しい顔で飲んでたぞ?!」

次々に襲い来る衝撃は止まらず、軽くパニックになる総司。
南の舌は、えげつないレベルで馬鹿だった。

「と、とにかくお話を聞きたくてですね。アナタ方のロボットの。」

西条が口元をハンカチで拭いながら、一気に本題を投げかける。
士郎と総司は、例の金額が思い浮かび、 ビクッと身体を震わせるのであった。

「あ、あのぉ~、返せと言われても、ウチご覧の通りでして、すぐに用意はできなくて・・・。」

大柄なオヤジは、ガクガクと怯えながら土下座の準備を始めた。が、糸目は首を傾げ

「?あー、なんか社長たち、そんなこと言ってたかも。まー私の用件、それじゃないんで!あんまり気にしないでください!」

ヘラヘラと笑うのみであった。
それを見て、士郎と総司は、目を皿のように丸くし、ホッと肩を落とした。

「ええーっとですね。社長と山・・・南さんの話は置いといて。私の調べによりますと、社からデータが漏洩したような記録も無ければ、物理的に忍び込まれた形跡もね、無いんですよ。だから、ねぇ?私はとにかく、『坂田さんのロボット』に興味があった!」

西条はケラケラと笑いながら、自らの白い髪に覆われた頭をポリポリとかいて見せた。それを聞いた2人は目を見合わせて、ホッと胸を撫で下ろす。

「私ゃ、誓ってそんな悪いことはしとりゃせんです。ロボットを作るのが昔からの夢だった、それだけですわ。まぁ、おたくのロボットと・・・まさか同時期に完成するとは思わなんだ。」

士郎は、まるで子どものような屈託のない笑顔で、西条の言葉に応えた。それを見た総司、そして西条も、自然と頰が緩むのであった。

「素晴らしいことです。夢のために、真っ直ぐ進んで来られたのがよくわかりますよ。・・・で、本題なんですけど。」

テーブルに肘を立て、真顔で、言葉に力を込めて、西条は言い放つ。

「坂田さん、アレを作るとき『声』に導かれませんでしたか?不思議な『声』に・・・。」

糸目を見開いて、テーブルに肘をつき睨むように士郎を見つめる。その眼光には、何か得体の知れない輝きがあった。

「声?急に何言ってんだよ兄ちゃん。オカルトならよそで・・・。」

突然の意味深な問いかけに、総司は呆れ顔で対応する。しかし、言いかけて士郎に目をやると

「えぇーっ?!何だよおっちゃんそのリアクション!!」

士郎は、目を見開いてガタガタと震えていた。

「やはり、あるんですね?心当たりが。」

深刻な口ぶりで、西条はゆっくりと士郎を煽る。

「い、いや待ってくれ。そ、それは・・・!」

士郎は震える指先で西条を指差し、何かを言いかける。

その時だった。
突然、何かに気付いた西条は、飛ぶように立ち上がり、坂田家の固くて重い窓を一気に開けた。

「お話中すみません。・・・あのロボット、今すぐ出せますか?」

西条が少し慌てた様子で、2人に持ちかけた。士郎も総司も、いきなりの方向転換に動揺を隠せない。

「忙しない人だなぁアンタ・・・。またいきなり何だよ?俺、着いてけねぇよ・・・。」

総司は耳をほじりながら、疑いの眼差しを向け、問い掛ける。

「・・・あ、いえね。通報があったみたいなんですわぁ。宇宙人が出て暴れてる、ってね。アッハハハハ!」

崩れた笑顔で、右手をヒラヒラと振って見せる西条。その間、左手はスマホを素早く操作している。スタークラウン社に連絡を入れたのであろう。

「良いけどよ・・・アンタはいいのか?俺たちに出られたらマズいんじゃないの?立場的に。」

「そんな悠長な事言ってられませんよぉ~。大きな被害出てからじゃ遅いですもぉん。」

棒読みくさいその言葉とは裏腹に、西条は妙に笑顔を絶やさない。それを聞いた総司はチッ、と舌打ちし、モタモタと立ち上がる。

「ま、確かに放っておけないな。けど、アンタらの会社の言いなりにはならないぜ。こっちにはこっちの都合ってモンがあるんだ。」

そう言って、総司は士郎に目線を送る。すると士郎は頷いて、同じくモタモタと立ち上がるのだった。

「西条さんよ。後でゆっくりと話そう。俺からも聞きたいことができた。」

「ええ、待ってまぁす。麺つゆでも飲みながらね。」


総司は早着替えを済ませ、車椅子兼アルティランダーのコックピットに飛び乗ろうとしたが、流石にそれは無理だったので普通に座った。そして、コックピットはアルティランダーの胸部に、みるみる飲み込まれていく。

「じゃあおっちゃん、頼むぜ!」

「おう!頑張ってこい!安全、確認!」

ガレージのシャッターが、ガラガラと開いていく。

「よっしゃあ!GOー!アルティランダァァァァ…ストライクモォォード!!エンジン全開で行くぞォォ!!」


アルティランダーは、一気に風と化す。

・・・場所は聞いていないが。

が、そんな中

(総司さん、大変!品川駅の方に宇宙人が!)

コックピットに装着したスマホに、百合子からLINEが入る。

「百合ちゃん何で知ってんの?!まぁいいや品川だな、ようし!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、10人の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

処理中です...