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第ニ話 因果は動き出す
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品川駅前は、再び混乱に包まれた。
既に人々は、自主的に安全そうなところに避難していたり、ガッツのアカウントが避難を推奨するツイートを連投していたためか、人的被害は無かった。
しかし、あちこちでスマホのシャッター音が止めどなく聞こえてくる状況は、混乱、としか形容のしようがない。
「くっそぉぉ!!どいつもこいつも、俺様をバカにしやがってェェェ!!」
ペインロアーは八つ当たりでもするかのように、マシンキャノンを街灯や標識、街路樹に放ちながら前進を続けた。待てども待てども、偉い人からのDMは来ない。
そこへ、ガッツには聞き覚えのあるエンジン音が聞こえてきた。どんどん近づいてくるその音とシンクロするように、ガッツは機嫌を悪くしていく。
「アイツかぁ・・・イラつく田舎ロボめ!」
「チェーンジ!!アタックモォード!」
アルティランダーの変形しながらの突進を、ペインロアーは真正面から受け止めた。
「待たせたぜ!地味にやってるなぁ、宇宙帝王さんよ!」
総司は上機嫌でガッツを煽る。
「待っていないし、余計なお世話だ!これから派手になるんだよ!」
乱射の限りを尽くしていた銃口を、忌々しい田舎星人に向け、発砲を繰り返すガッツ。
しかし、アルティランダーはそれを高速ダッシュでスイスイとかわし、ペインロアーの目前へと迫る。
どちらも怯まない。
「チョロチョロと・・・調子に乗りおって!」
「もらったァっ!」
華麗なテクニックを駆使し、ついに総司はペインロアーに噛みつく。
地球と異星のロボット同士の、取っ組み合いがはじまった。
ガンガンと、まるで喧嘩のように殴り合う2機。鉄の拳の応酬は止まらない。
が、ペインロアーは接近戦に主軸を置いていないためか、徐々に押され始めるのであった。
「どうしたよ、こんなもんか宇宙帝王!」
操縦桿と歯を軋ませながら、苦々しくアルティランダーと機体越しに睨み合う宇宙帝王。その顔に、あまり余裕は感じられない。
「いい気になるなよ地球人!たとえZキャノンが無くとも・・・貴様など!」
「ちぃっ!距離を取る気だな?!させるか!」
総司はその瞬間、動きを封じようとペインロアーに掴みかかり、そして両腕を抑え、機体の脇腹に何発も蹴りを入れた。
ガイン!ガイン!と金属音がこだまする。
「ぐぅ!このまま好きにさせるかよ!」
ペインロアーも負けじとアルティランダーに蹴りを入れ、吹き飛ばそうと試みた。が、何とか防ぎ体勢を崩すに留まった総司は、そのまま機体ごと組み倒そうと、前のめりに突っ込む。しかし・・・
「ミク!プレッシャーガン、転送だ!」
「了解です、ガッツくん。」
一瞬にして、ペインロアーの胸部に小型の銃が現れた。
「んげぇっ、そんなのアリかよ!」
ひるんだ総司は急ブレーキをかけ、すぐさま回避体勢を取るが・・・
「この距離、もう遅い!」
至近距離で、アルティランダーの頭部に向け、轟音と共に弾丸が発射された。ガアン!という金属音、立ち上る煙。それが晴れたかと思えば、アルティランダーの頭部は、無残にも粉々になっていた。
「ち!悪運の強いヤローだ!ミク、次弾装填、急げ!」
プレッシャーガンの欠点は、連射ができないことである。しかしもう一発喰らったら、今度はコックピットが危ないだろう。
「うわ、何がどうなったんだ?!・・・げぇっ!おっちゃんゴメン!頭無くなったたくさい!」
「気にするな!頭はほとんど飾りだ!それよりもあの火力は危険だ、一旦距離を置いた方が!」
「えっそうなの?!確かに、メインカメラはやられてない…別のところにあるのか…。っと、確かに直撃はヤバいな!」
頭の存在意義を考えながらも、切り替えて集中する総司。目の前には今も、ペインロアーの黒いボディが眩しく光っている。至近距離の宇宙人をどう御するか。転送のような、未知の脅威がまだあるであろう。一瞬の隙も命取りのように思えた。
「よし、一か八かだ!」
窮地の一瞬の中で、総司はトリガーを引く。
焦りや不安、恐怖と喜び、様々な感情をその目に映しながら。
すると、アルティランダーの腰部にマウントされたランチャーの俯いていた銃口が、ペインロアー相手に跳ね起きたかと思うと、次の瞬間。
パスン、という弱々しい音と共に、銛が発射される。
銛は鈍い音を立て、頭部へ直撃。だが、破壊するまでは至らない。
窮鼠の抵抗は、猫を仰け反らせるのみに留まった。
だが。
「こなくそォォォォォォォォ!!」
アルティランダーはその瞬間、ペインロアーの体勢を崩し、一気にダッシュモードに変形、バックで距離を取った。
「ズルくない転送なんて!あんなチマチマした使い方してるの、なんでなんだよ!」
ミクの転送機能は、ペインロアーへの武装の転送が主であり、それ以外の箇所・場所への物体転送はできない。大規模な転送はおろか、ワープなども無理だ。
意図せず地球人の、宇宙人の技術力=とてつもないもの、というイメージが揺らぐ結果となった。
「それならこっちも飛び道具だ!銛を使うぞ!」
総司はちゃっちゃと腰から発射装置を取り外し、構える。
「・・・なんかモリモリって、カッコ悪いんだよな。もう任せるからほれ、名前付けろお前。」
士郎が溜め息混じりにつぶやく。
「あー、そういうモンか…じゃあ!ガンスピナーだ!いっけぇ!」
銛発射装置改めガンスピナーの引き金は引かれ、バシュッ、と軽快な音を響かせ、恐らくスピナー部分は狙い通り真っ直ぐに、ガッツの機体目掛け飛んで行く。
「そう何度も同じ手を食うか、ちょこざいな!」
総司の必死の抵抗虚しく、ペインロアーは軌道を見切り、右手で恐らくスピナー部分を弾き飛ばす。
しかし、そこにアイツが現れた。
「ドレッド!フォォーーール!!」
南の駆る、スタードレッドである。
ドレッドはビルの合間を縫い、宙を舞って現れた。そして落下に合わせ、弾かれた恐らくスピナー部分をキャッチし、ペインロアーに見舞ったのである。
鈍い金属音。そして、ガッツの叫びが響き渡る。
「ぐあァッ!!・・・ええい!また赤いヤツか!なめおって!」
ペインロアーは吹き飛び、道路に頭部をぶつけ、擦れていく。
それを瞬時に追い、距離を詰めるスタードレッド。その手にはドレッドランスと、総司が外した恐らくスピナー部分が握られている。
「さぁ、大人しく降参することだ。今時しつこく地球侵略なんて流行りませんよ。」
倒れたペインロアーの胸にランスを突きつけ、一喝する南。どうしても異星のテクノロジーを手中に収めるため、平静を装ってはいるが必死である。
だが、その背後にいろいろと納得のいっていない男が鬼の形相で迫る。
「てんめー!何がドレッドフォォール!だ俺の武器掴んで落ちてきただけじゃねーかふざけやがって!良いとこ持ってくんじゃねー!」
「あぁ、いたんですか。ご覧の通りです、ここからは私にお任せを。というわけでお引き取りください。」
一瞥し、ジリジリとランスを押し進めていく。もちろん、宇宙人の生命を奪うつもりも、機体を破壊するつもりもない。しかし、その先端は、突きつけられた本人にとっては、地球人の意思表示として受け止めるには十分な処遇であった。
「少し黙っていれば未開の猿どもめ、俺様を差し置いて勝手なことをほざきおって!侵略ではないと言うに!ミク!フォトンブレード、てんそ」
「させません!」
ガッツが言い終わる前に、南はペインロアーの両腕を、ランスと恐らくスピナー部分で即座に押さえつけ、その上胸部を踏み付けにした。これで、想像し得る転送箇所を封じ込めた、というわけである。。
「くっそ!何故転送が読まれたのだ?!」
「あっ!お前!・・・さっきの見てたろ!」
「見てましたが?」
南は、ドレッドの望遠スコープで敵の武装・火力など、あらゆる情報を分析した上で乱入してきたのであった。武装の転送は腕と胸部など、装着しやすい部位に限定される、ということを読み、警戒し続けていたのだ。
「さて、どうする?この状況。最早あなたに抜け出す術は・・・。」
その時だった。
スタードレッドの背後に、突如としてバンキッシュが現れた。
「んもー!機体丸ごとの転送はエネルギー喰うのに!」
そう言うと、煙幕を撒き散らしながら、南の機体に思い切り蹴りを入れた。けたたましい金属音と共に、スタードレッドは盛大に吹き飛ぶ。
「この前の恨み、ホントはこんなもんじゃないんだからね!アニキ、とりあえず退こう!」
ジャネットはバンキッシュを操り、火花を上げるペインロアーを急いで抱え起こす。腕の銃口を、総司たちに向けたまま。
「なぁ…!あの質量の物体が、転送だと?!油断した!駆動系がやられたか…凄まじいパワーだっ…!」
スタードレッドは先ほどの一撃で、再起不能になるほどのダメージを負った。ナメてかかりすぎた南の落ち度である。
「おい逃げる気か?!俺との勝負ついてね…と思ったが、その状態じゃムリか。」
総司はアルティランダーを構えさせるが、ふと考えて緊張を解いた。ボロボロの宇宙帝王を見て、これ以上は無意味、と察したためである。
「・・・追い討ちはかけんと言うのか?ちきう人風情が。」
疲労を露わにして、苦々しくガッツが呟く。しかし、総司は意に介さない。
「こういうのに地球人も宇宙人もないだろ。俺もボロボロだしな、また今度勝負しようぜ。周りに迷惑かからないように、よ。」
総司は、何となく感じていた。
宇宙人たちの人となりを。彼らの抱えている、何かを。
「・・・勝負だと。くそっ!何なんだ貴様は。」
感情が複雑に揺らぐ。
プライド、と呼ぶには小さなものかもしれないが、ガッツの中で、何か今までにない気持ちが渦巻き始めていた。
自分は一体、何をしているのだろうか?
「アニキ。悔しいかもだけど、その状態じゃヤバいよ。また今度にしよ。」
ジャネットは気怠そうに、兄をなだめる。
ガッツは歯を食いしばり、辛うじてペインロアーの体勢を立て直し、バンキッシュの肩に掴まる。
「・・・おいちきう人。名は何という。」
「あれ、名乗らなかったっけ?東郷総司だ。なんか、アンタもワケありみたいだが・・・もっと他にやり方があるんじゃねえのか。」
その言葉を聞いたガッツは、ふ、と頭を垂らし、機体と共に異次元へと消えた。
削られたアスファルトによる砂埃が立ち込める中、総司はスタードレッドに目を向ける。
「・・・さて、帰るか!」
既に人々は、自主的に安全そうなところに避難していたり、ガッツのアカウントが避難を推奨するツイートを連投していたためか、人的被害は無かった。
しかし、あちこちでスマホのシャッター音が止めどなく聞こえてくる状況は、混乱、としか形容のしようがない。
「くっそぉぉ!!どいつもこいつも、俺様をバカにしやがってェェェ!!」
ペインロアーは八つ当たりでもするかのように、マシンキャノンを街灯や標識、街路樹に放ちながら前進を続けた。待てども待てども、偉い人からのDMは来ない。
そこへ、ガッツには聞き覚えのあるエンジン音が聞こえてきた。どんどん近づいてくるその音とシンクロするように、ガッツは機嫌を悪くしていく。
「アイツかぁ・・・イラつく田舎ロボめ!」
「チェーンジ!!アタックモォード!」
アルティランダーの変形しながらの突進を、ペインロアーは真正面から受け止めた。
「待たせたぜ!地味にやってるなぁ、宇宙帝王さんよ!」
総司は上機嫌でガッツを煽る。
「待っていないし、余計なお世話だ!これから派手になるんだよ!」
乱射の限りを尽くしていた銃口を、忌々しい田舎星人に向け、発砲を繰り返すガッツ。
しかし、アルティランダーはそれを高速ダッシュでスイスイとかわし、ペインロアーの目前へと迫る。
どちらも怯まない。
「チョロチョロと・・・調子に乗りおって!」
「もらったァっ!」
華麗なテクニックを駆使し、ついに総司はペインロアーに噛みつく。
地球と異星のロボット同士の、取っ組み合いがはじまった。
ガンガンと、まるで喧嘩のように殴り合う2機。鉄の拳の応酬は止まらない。
が、ペインロアーは接近戦に主軸を置いていないためか、徐々に押され始めるのであった。
「どうしたよ、こんなもんか宇宙帝王!」
操縦桿と歯を軋ませながら、苦々しくアルティランダーと機体越しに睨み合う宇宙帝王。その顔に、あまり余裕は感じられない。
「いい気になるなよ地球人!たとえZキャノンが無くとも・・・貴様など!」
「ちぃっ!距離を取る気だな?!させるか!」
総司はその瞬間、動きを封じようとペインロアーに掴みかかり、そして両腕を抑え、機体の脇腹に何発も蹴りを入れた。
ガイン!ガイン!と金属音がこだまする。
「ぐぅ!このまま好きにさせるかよ!」
ペインロアーも負けじとアルティランダーに蹴りを入れ、吹き飛ばそうと試みた。が、何とか防ぎ体勢を崩すに留まった総司は、そのまま機体ごと組み倒そうと、前のめりに突っ込む。しかし・・・
「ミク!プレッシャーガン、転送だ!」
「了解です、ガッツくん。」
一瞬にして、ペインロアーの胸部に小型の銃が現れた。
「んげぇっ、そんなのアリかよ!」
ひるんだ総司は急ブレーキをかけ、すぐさま回避体勢を取るが・・・
「この距離、もう遅い!」
至近距離で、アルティランダーの頭部に向け、轟音と共に弾丸が発射された。ガアン!という金属音、立ち上る煙。それが晴れたかと思えば、アルティランダーの頭部は、無残にも粉々になっていた。
「ち!悪運の強いヤローだ!ミク、次弾装填、急げ!」
プレッシャーガンの欠点は、連射ができないことである。しかしもう一発喰らったら、今度はコックピットが危ないだろう。
「うわ、何がどうなったんだ?!・・・げぇっ!おっちゃんゴメン!頭無くなったたくさい!」
「気にするな!頭はほとんど飾りだ!それよりもあの火力は危険だ、一旦距離を置いた方が!」
「えっそうなの?!確かに、メインカメラはやられてない…別のところにあるのか…。っと、確かに直撃はヤバいな!」
頭の存在意義を考えながらも、切り替えて集中する総司。目の前には今も、ペインロアーの黒いボディが眩しく光っている。至近距離の宇宙人をどう御するか。転送のような、未知の脅威がまだあるであろう。一瞬の隙も命取りのように思えた。
「よし、一か八かだ!」
窮地の一瞬の中で、総司はトリガーを引く。
焦りや不安、恐怖と喜び、様々な感情をその目に映しながら。
すると、アルティランダーの腰部にマウントされたランチャーの俯いていた銃口が、ペインロアー相手に跳ね起きたかと思うと、次の瞬間。
パスン、という弱々しい音と共に、銛が発射される。
銛は鈍い音を立て、頭部へ直撃。だが、破壊するまでは至らない。
窮鼠の抵抗は、猫を仰け反らせるのみに留まった。
だが。
「こなくそォォォォォォォォ!!」
アルティランダーはその瞬間、ペインロアーの体勢を崩し、一気にダッシュモードに変形、バックで距離を取った。
「ズルくない転送なんて!あんなチマチマした使い方してるの、なんでなんだよ!」
ミクの転送機能は、ペインロアーへの武装の転送が主であり、それ以外の箇所・場所への物体転送はできない。大規模な転送はおろか、ワープなども無理だ。
意図せず地球人の、宇宙人の技術力=とてつもないもの、というイメージが揺らぐ結果となった。
「それならこっちも飛び道具だ!銛を使うぞ!」
総司はちゃっちゃと腰から発射装置を取り外し、構える。
「・・・なんかモリモリって、カッコ悪いんだよな。もう任せるからほれ、名前付けろお前。」
士郎が溜め息混じりにつぶやく。
「あー、そういうモンか…じゃあ!ガンスピナーだ!いっけぇ!」
銛発射装置改めガンスピナーの引き金は引かれ、バシュッ、と軽快な音を響かせ、恐らくスピナー部分は狙い通り真っ直ぐに、ガッツの機体目掛け飛んで行く。
「そう何度も同じ手を食うか、ちょこざいな!」
総司の必死の抵抗虚しく、ペインロアーは軌道を見切り、右手で恐らくスピナー部分を弾き飛ばす。
しかし、そこにアイツが現れた。
「ドレッド!フォォーーール!!」
南の駆る、スタードレッドである。
ドレッドはビルの合間を縫い、宙を舞って現れた。そして落下に合わせ、弾かれた恐らくスピナー部分をキャッチし、ペインロアーに見舞ったのである。
鈍い金属音。そして、ガッツの叫びが響き渡る。
「ぐあァッ!!・・・ええい!また赤いヤツか!なめおって!」
ペインロアーは吹き飛び、道路に頭部をぶつけ、擦れていく。
それを瞬時に追い、距離を詰めるスタードレッド。その手にはドレッドランスと、総司が外した恐らくスピナー部分が握られている。
「さぁ、大人しく降参することだ。今時しつこく地球侵略なんて流行りませんよ。」
倒れたペインロアーの胸にランスを突きつけ、一喝する南。どうしても異星のテクノロジーを手中に収めるため、平静を装ってはいるが必死である。
だが、その背後にいろいろと納得のいっていない男が鬼の形相で迫る。
「てんめー!何がドレッドフォォール!だ俺の武器掴んで落ちてきただけじゃねーかふざけやがって!良いとこ持ってくんじゃねー!」
「あぁ、いたんですか。ご覧の通りです、ここからは私にお任せを。というわけでお引き取りください。」
一瞥し、ジリジリとランスを押し進めていく。もちろん、宇宙人の生命を奪うつもりも、機体を破壊するつもりもない。しかし、その先端は、突きつけられた本人にとっては、地球人の意思表示として受け止めるには十分な処遇であった。
「少し黙っていれば未開の猿どもめ、俺様を差し置いて勝手なことをほざきおって!侵略ではないと言うに!ミク!フォトンブレード、てんそ」
「させません!」
ガッツが言い終わる前に、南はペインロアーの両腕を、ランスと恐らくスピナー部分で即座に押さえつけ、その上胸部を踏み付けにした。これで、想像し得る転送箇所を封じ込めた、というわけである。。
「くっそ!何故転送が読まれたのだ?!」
「あっ!お前!・・・さっきの見てたろ!」
「見てましたが?」
南は、ドレッドの望遠スコープで敵の武装・火力など、あらゆる情報を分析した上で乱入してきたのであった。武装の転送は腕と胸部など、装着しやすい部位に限定される、ということを読み、警戒し続けていたのだ。
「さて、どうする?この状況。最早あなたに抜け出す術は・・・。」
その時だった。
スタードレッドの背後に、突如としてバンキッシュが現れた。
「んもー!機体丸ごとの転送はエネルギー喰うのに!」
そう言うと、煙幕を撒き散らしながら、南の機体に思い切り蹴りを入れた。けたたましい金属音と共に、スタードレッドは盛大に吹き飛ぶ。
「この前の恨み、ホントはこんなもんじゃないんだからね!アニキ、とりあえず退こう!」
ジャネットはバンキッシュを操り、火花を上げるペインロアーを急いで抱え起こす。腕の銃口を、総司たちに向けたまま。
「なぁ…!あの質量の物体が、転送だと?!油断した!駆動系がやられたか…凄まじいパワーだっ…!」
スタードレッドは先ほどの一撃で、再起不能になるほどのダメージを負った。ナメてかかりすぎた南の落ち度である。
「おい逃げる気か?!俺との勝負ついてね…と思ったが、その状態じゃムリか。」
総司はアルティランダーを構えさせるが、ふと考えて緊張を解いた。ボロボロの宇宙帝王を見て、これ以上は無意味、と察したためである。
「・・・追い討ちはかけんと言うのか?ちきう人風情が。」
疲労を露わにして、苦々しくガッツが呟く。しかし、総司は意に介さない。
「こういうのに地球人も宇宙人もないだろ。俺もボロボロだしな、また今度勝負しようぜ。周りに迷惑かからないように、よ。」
総司は、何となく感じていた。
宇宙人たちの人となりを。彼らの抱えている、何かを。
「・・・勝負だと。くそっ!何なんだ貴様は。」
感情が複雑に揺らぐ。
プライド、と呼ぶには小さなものかもしれないが、ガッツの中で、何か今までにない気持ちが渦巻き始めていた。
自分は一体、何をしているのだろうか?
「アニキ。悔しいかもだけど、その状態じゃヤバいよ。また今度にしよ。」
ジャネットは気怠そうに、兄をなだめる。
ガッツは歯を食いしばり、辛うじてペインロアーの体勢を立て直し、バンキッシュの肩に掴まる。
「・・・おいちきう人。名は何という。」
「あれ、名乗らなかったっけ?東郷総司だ。なんか、アンタもワケありみたいだが・・・もっと他にやり方があるんじゃねえのか。」
その言葉を聞いたガッツは、ふ、と頭を垂らし、機体と共に異次元へと消えた。
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