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第ニ話 因果は動き出す
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「おい、こちらを見ながら出るセリフがそれか?!他にもっとあるだろう!」
イラッとしたようだ。
「ねぇよ!腹減ったからとっとと帰りてぇんだよ!」
「総司さん、素麺でいいかしら?なんか、作り置きの麺つゆが減ってるから…使っちゃって新しいの作ろうと思って。」
「あ、東郷さん?ジャックでーす。いやぁお見事でした!また詳しくお話し聞かせてもらえません?」
「おお、じゃアンタも食ってけ!素麺。」
「いいねおじいちゃん!僕はスタークラウンの話、聞かせてほしいな!」
アルティランダーのコックピットが、途端にやかましくなる。だが総司は微笑んでそれを聞いていた。
天涯孤独の総司だが、坂田家の人々は、できることなら家族と呼びたい。
「たくさん茹でといてよ百合ちゃん!めっちゃ食うぜ、俺!じゃ、すぐ帰る!」
そしてアルティランダーはすぐさま変形し、夕焼けの中、心踊らせながら猛スピードで帰路につく。メタリックボディを、紅く輝かせて。
「総司さん、お帰りなさい!」
蒸し暑い中、わざわざ玄関の外で、制服にエプロン姿で待っていた百合子が、アルティランダーの姿を見つけると嬉しそうに手を振ってくる。介助をするため、というのが名目であろう。
「ただいま、百合ちゃん。なんだ、待っててくれたのか?この暑いのに…。」
ガレージに格納を終え、コックピットから出た総司は、気恥ずかしく鼻の頭を掻く。
「だって、心配だったんだもの。はい、つかまってくださいね。」
玄関の戸を開けると、百合子は総司が立ち上がるのを支えようと、一段上から介助を試みる。
「いや、大丈夫だよ一人で…!俺今、汗臭いだろ?全身びしょびしょだし。」
「あら、細かいこと気にするのね。そんなの大丈夫よ。あっ、じゃあ先にお風呂にします?背中、流してあげる!」
百合子はニコッと微笑む。
「えっ?!なっ、いやっ!い、いいよ!一人で平気だって!」
「ふふ、冗談よ。総司さんったらもう!」
慌てふためく総司の脇で、百合子はまたもや、しかし悪戯に微笑んで見せた。たじたじである。
「は、はは…参ったな。敵わないよ百合ちゃんには。」
「おやおや東郷さん、湯加減どうでした?あ、坂田さん?私もこの後ひとっ風呂、お借りしてよろしいですかねぇ…?」
タンクトップにトランクスで、肩にタオルをかけながらヨロヨロと居間に現れた総司が見たのは、白スーツのままわりと馴染んでいるジャックの姿であった。
「いや、なんでいんの。」
「まぁそう言うなよ総司。いろいろと話をしとったんだ。あ、減るもんじゃないし、ええですよ!追加で素麺、自腹で買って来てくれたし。」
「なんだ!いいやつじゃん!めっちゃあるな素麺!」
「兄ちゃん僕お腹空いたよ!早く食べようよ!こんな妙な量の素麺見たことないよ!」
「大人を甘く見ちゃいけませんよ坊っちゃん!私もね、実は大勢で大量の素麺を囲むのが、密かな夢だったんですよ!やぁー嬉しいなぁ!」
「はっはっは、いつでも遊びに来なさいな。だいたい誰かいるから!」
「総司さん、薬味いる?ジャックさんは?」
「百合ちゃん俺!わさび入れる人ー!」
「私は生姜かなー!」
団欒は、総司を癒す。しかしその日に限って言えば、もう一人。心の底から楽しんでいた男がそこにいた。
ジャック=西条。彼が何者であるのかを知る人間は、地球上でただ一人となった。
しかしそれは、重要なことであると同時に、この時ばかりは、非常に些細なことになっていたのである。
こうして、密かに宇宙規模の出来事が動き始めるのであった。
思惑のある者と、全く無い者。
多くの感情と思考、いわゆる「想い」が膨れ上がる。「想い」とは「力」であるが、
それがこの後、地球の平和を脅かすことになるとは、この時はまだ、地球人の誰もが知る由もなかった。
「悠長なことは言っていられません。ご決断を!」
「いやぁ、もう少し様子を見ていたかったんですがねぇ…。仕方ありませんか。」
イラッとしたようだ。
「ねぇよ!腹減ったからとっとと帰りてぇんだよ!」
「総司さん、素麺でいいかしら?なんか、作り置きの麺つゆが減ってるから…使っちゃって新しいの作ろうと思って。」
「あ、東郷さん?ジャックでーす。いやぁお見事でした!また詳しくお話し聞かせてもらえません?」
「おお、じゃアンタも食ってけ!素麺。」
「いいねおじいちゃん!僕はスタークラウンの話、聞かせてほしいな!」
アルティランダーのコックピットが、途端にやかましくなる。だが総司は微笑んでそれを聞いていた。
天涯孤独の総司だが、坂田家の人々は、できることなら家族と呼びたい。
「たくさん茹でといてよ百合ちゃん!めっちゃ食うぜ、俺!じゃ、すぐ帰る!」
そしてアルティランダーはすぐさま変形し、夕焼けの中、心踊らせながら猛スピードで帰路につく。メタリックボディを、紅く輝かせて。
「総司さん、お帰りなさい!」
蒸し暑い中、わざわざ玄関の外で、制服にエプロン姿で待っていた百合子が、アルティランダーの姿を見つけると嬉しそうに手を振ってくる。介助をするため、というのが名目であろう。
「ただいま、百合ちゃん。なんだ、待っててくれたのか?この暑いのに…。」
ガレージに格納を終え、コックピットから出た総司は、気恥ずかしく鼻の頭を掻く。
「だって、心配だったんだもの。はい、つかまってくださいね。」
玄関の戸を開けると、百合子は総司が立ち上がるのを支えようと、一段上から介助を試みる。
「いや、大丈夫だよ一人で…!俺今、汗臭いだろ?全身びしょびしょだし。」
「あら、細かいこと気にするのね。そんなの大丈夫よ。あっ、じゃあ先にお風呂にします?背中、流してあげる!」
百合子はニコッと微笑む。
「えっ?!なっ、いやっ!い、いいよ!一人で平気だって!」
「ふふ、冗談よ。総司さんったらもう!」
慌てふためく総司の脇で、百合子はまたもや、しかし悪戯に微笑んで見せた。たじたじである。
「は、はは…参ったな。敵わないよ百合ちゃんには。」
「おやおや東郷さん、湯加減どうでした?あ、坂田さん?私もこの後ひとっ風呂、お借りしてよろしいですかねぇ…?」
タンクトップにトランクスで、肩にタオルをかけながらヨロヨロと居間に現れた総司が見たのは、白スーツのままわりと馴染んでいるジャックの姿であった。
「いや、なんでいんの。」
「まぁそう言うなよ総司。いろいろと話をしとったんだ。あ、減るもんじゃないし、ええですよ!追加で素麺、自腹で買って来てくれたし。」
「なんだ!いいやつじゃん!めっちゃあるな素麺!」
「兄ちゃん僕お腹空いたよ!早く食べようよ!こんな妙な量の素麺見たことないよ!」
「大人を甘く見ちゃいけませんよ坊っちゃん!私もね、実は大勢で大量の素麺を囲むのが、密かな夢だったんですよ!やぁー嬉しいなぁ!」
「はっはっは、いつでも遊びに来なさいな。だいたい誰かいるから!」
「総司さん、薬味いる?ジャックさんは?」
「百合ちゃん俺!わさび入れる人ー!」
「私は生姜かなー!」
団欒は、総司を癒す。しかしその日に限って言えば、もう一人。心の底から楽しんでいた男がそこにいた。
ジャック=西条。彼が何者であるのかを知る人間は、地球上でただ一人となった。
しかしそれは、重要なことであると同時に、この時ばかりは、非常に些細なことになっていたのである。
こうして、密かに宇宙規模の出来事が動き始めるのであった。
思惑のある者と、全く無い者。
多くの感情と思考、いわゆる「想い」が膨れ上がる。「想い」とは「力」であるが、
それがこの後、地球の平和を脅かすことになるとは、この時はまだ、地球人の誰もが知る由もなかった。
「悠長なことは言っていられません。ご決断を!」
「いやぁ、もう少し様子を見ていたかったんですがねぇ…。仕方ありませんか。」
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