疾風迅雷アルティランダー

エルマー・ボストン

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第三話 夢を追いかけて

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「うっす!新入りのヤベ ミサオっす!よろしくっす!」

ガッツは、工事現場で働いていた。
悟ったのだ。ある程度の金銭を稼がねば、食うに困る、と。
何故彼らは窃盗や略奪をせず、潜伏に徹しているのか?
それは、宇宙人たるガッツたちなりの矜持…なのかもしれない。

アスファルトをガシガシ削るドリルの音にかき消されながら、ガッツに1人の男が話しかける。

「なぁニイちゃん!どこのクニの人やぁ?えろぅ日本語上手いなぁ?!」

「えぇ?!何すかぁ?!聞こえねっす!!」

「おれぁなァ?!大阪から来とるんや?!お笑いやっとんねん!」

「えぇぇ?!お祓い?!取り憑かれてんすかぁ?!つーか、変な喋り方っすねぇ!!宇宙訛りっすかぁ!!」

小型翻訳機も、工事現場の轟音の中では、なかなかに性能が低下してしまう。

「何やニイちゃんオモロいなぁ!!おれぁ檜山っちゅーねん!気軽に勇者って呼んどくれや!!」

「うっす!!キング!!」


異星人たちは、慣れない土地で各々新しい出会いを重ねていた。
彼らはまだ知らない。これが、自分たちの運命を変える遭遇であることを。


その頃主人公は、ボサボサの頭と半裸の状態で、寝ぼけながら歯を磨いていた。ハゲ頭をボリボリとかく、ヒゲのおっさんと共に。

「おっちゃん…俺、思うんだけどさ…。今の俺、完全に穀潰しだよね…。」

総司は、歯ブラシと真剣味を口に含みながら、士郎に問うた。

「何言ってんだ、細かいこと気にすんなよ。お前じゃなきゃ、誰がアルティランダーのデータを取るんだ。何度も言うが俺はな、お前に、俺の夢全部託してンだ。俺の方が礼を言いたいくらいだよ。」

士郎は戯けた口調で返す。

「いや、そう言われるとありがてぇけど、だってさぁ…百合ちゃんだってアルバイト漬けなんだろ。俺だけ何もしないってワケにも…。」

柄にもなく項垂れ、歯を磨く手が止まる。いくら坂田家の面々が底抜けに人が良くても、身体の自由がきかなくても、居候の身でありながら何もしないでのんびりしているのは、非常に心が痛んでいた。

「まぁ、ホラ…テストパイロットだし…?」

「それとこれとは話が違うだろ。車潰した、っていうのも…あるし…。」

沈黙と、普通の汗と変な汗が流れる。
総司はうがいをした後、顔を洗う。

「…よし、決めた。働くぞ。」

両頬を叩いたかと思うと、総司は静かに、力強く息を吐いた。

「そんなこと言ってもよぉお前、どうする気だ?言っちゃ悪いが、その…大丈夫かいな?」

「・・・スタークラウンに聞いてみる、とか・・・?」

総司は、行き当たりばったり感全開で呟く。

「お前、何も考えてねぇな。疑われてるのに雇ってもらえるわけないわ。」

「要はさ、あの赤いやつの部署に関わらなきゃいいんだろ?よし、善は急げだ!ジャックとやらに連絡してみよ。」

口をすすいで、勢いよくペッ!と吐き出した総司は、そのまま慌ただしく士郎の部屋へと戻る。そして、以前ジャックに渡された名刺を、ガサガサと探し始めた。

「総司…本当に大丈夫かいな…。」
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