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第三話 夢を追いかけて

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「おい、おい!大丈夫か宇宙人さんよ!」

呆然と口を開けていた総司は、我に返るとすぐ様ガッツへ呼びかけた。ペインロアーが、立ち上がるどころか、動く気配を見せなかったからである。

「構うな。みっともない…これ以上…恥は晒せん。」

機体を動かすことはできないものの、幸い本人に怪我は無いようだ。だが、それでもガッツは、項垂れずにはいられなかった。

総司は肩透かしを喰らったように、沈黙した。だが、気が済まなくて仕方がないかのように、半ば無理やり、異星人相手に語りかけた。

「あー、そのぉ。俺さぁ?アンタの気持ち、わかる気がするんだ。なんつーか…お前ら、居場所を探してるように、見えるんだよ。
だからさ。そっちの事情…どうして地球に来たのか、とかさ。教えてくれよ。何か些細なことでも、力になれるかもしれないだろ…?」

総司は、総司なりのフォローを入れた。
咄嗟の発言のためか、相手に気を遣ったのか、めちゃくちゃな内容だ。

「…地球人、お前…周りからバカって言われるだろ。」

ガッツは小さく失笑した。

「おう、言われるな!」

それに対し、顔が見えなくとも、笑っていることが余裕で伝わるほどの声で、総司は叫ぶ。

「だが、今は気分じゃない。…悪いが、帰らせてもらう。迷惑かけたな。」

操縦桿を握りしめ、項垂れたままそう言うとガッツは、ミクに命じて転送を開始した。
徐々にペインロアーのシルエットがボヤけていき、消える。

「…なんだ。ただの不器用なヤツか。」

総司は空を仰ぎながら呟き、そして笑った。

「なぁおっちゃん。ゆうげん生命体?のこと、なんか聞いたことある風だったよな?どこで知ったの?」

「ん、いや、まぁその…俺の勘違いかもしれんよ。ロボットアニメの見過ぎかもな。」

「なぁんだ、そっか!つーか呼ばれて飛び出てきたものの、活躍の場、無かったなー。腹だけ減ったよ。百合ちゃん、今日の夕飯なーに?」

伸びをして、腹の音と共に、総司は通信スイッチを入れた。

「うーん、残り物のカレーがまだあるから…カレーうどんにでもしましょうか?」

「えー!ならフツーにカレーライスがいいなぁ僕!」

「えー?じいちゃん流石に3日連続カレーライスはやだなぁ。」

「じゃあこうしよう百合ちゃん…カレーチャーハンだ!」

「そうねぇ…。ご飯炊けば何とかなりそうだものね。」

変形し、その場を離脱したアルティランダーは、今日も騒がしいまま進む。
さながら悲しみの淵にいる宇宙人とは対照的に、今日も地球人の日常は続いていく。
しかし、ありがちだが、これが新たな敵の訪れの前触れであることは、皆知る由も無かった。


「負けちゃいられない…!アイツらにできることが、今のアタシにできないワケが!」
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