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第四話 あなたの思い出
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「なぁ。姐さんは、何でまたロボット作ろうなんて思ったの?」
汗と油に塗れた恵里に向かい、書類の整理に明け暮れる総司が、目を輝かせながら問いかける。
「…何だい?突然。そんなこと聞いてどうすんのさ。」
機体の下でメンテナスをしながら、気怠そうに恵里は答えた。
「いやいいじゃんか!いくら企業秘密だ、って言われてもよ?自分が関わってるモンのことくらい、俺だってちっとは知りたいぜ。」
総司は、スタークラウン社における現在のジャックの管轄の部署である、種岡の下でアルバイトをすることになったのだが…。
業務内容はあくまでも「雑用」であり、ロボットを製造している、ということ以外には何も知らされていなかった。
一体どんな経緯で、どんなコンセプトで設計された機体なのか?
パイロットとして、大いに興味をそそられるというものだ。
「まぁ…確かにね。中身に関わらないことなら、少しゃぁいいか。」
ふっ、と呆れたような顔で、恵里が機体の下から身を躍らせ、ゆっくりと立ち上がり、額に光る汗を拭う。
「憧れの先輩がいてね。その人の影響だよ。」
普段から割りとイカツい恵里の顔が、僅かに緩む。
「アタシの手本みたいな人さ…。
ロボットアニメが大好きで、やたら他人を気にかけて…。荒れてた昔のアタシを、救ってくれた。そんな人が『ロボットを作るのが夢だ!』なんて言うモンだから、私もつられて、ね。
その人との約束なんだよ、コイツは。
だからアタシは、何としても完成させてみせる。例え周りから、どんなに否定されても!」
両手を腰に添えながら、恵里の口からは、つらつらと気持ちが漏れ出でる。その様は、普段の大雑把な彼女からは想像ができない姿のように、総司の目には映っていた。
「へぇ…別に疑ってたワケじゃないけど、やっぱりちゃんとした理由があるんだな。
俺、ちょっとうるっと来ちゃった!…で、その人は今何してんの?」
総司はデスクで書類を纏めながら、徐々に完成しつつある、未知の夢の塊を見上げ、瞳を輝かせながら尋ねた。
「へっ、アンタ。それは…聞いたら野暮ってモンだよ…。」
そう言い放ち、総司に背を向けた姿を見て、総司も何かを察した。
「あっ、わ、悪ィ…。」
咄嗟に顔を背ける。
「ま、いいってことよ。それにしても、アンタも変なやつだね。アンタにとっちゃ、アタシらはライバルみたいなもんじゃないか。それを、何の邪心も無く手伝うなんでさ。」
「ライバルかぁ。うーん、ライバルなのか?そうなるのかな。
ま、いろんな人たちの夢が集まって、こうやって大きなモノになっていくのって…胸が熱くなるだろ?俺も負けてらんねーな!って気になるんだよ。だから別に、敵とか味方とか、そういのはあんまり。」
似た者同士というべきか、2人は馬が合うらしく、打ち解けるのにそう時間は掛からなかったようである。
「こんにちは、ゆーりーイーツです!総司さん!お弁当届けに来…。」
夏休みで学校が無いものの、家計のためにバイトに明け暮れている百合子が、合間を縫って工場に現れた。
「はは…お?百合ちゃん!わざわざありがとう!っと、こちら俺の上司の種岡さんだ!」
「ああ、キミがウワサの!種岡恵里だよ、よろしくね!」
楽しげな会話を中断し、2人は百合子に挨拶を交わす。その姿には、もちろん悪びれる素振りはない。
「あ、あの、えっと、は、初めまして…。
じゃあお弁当、ここに置いとくので…し、失礼しますね!お邪魔しました…。」
百合子は、まるで見てはいけないものを見てしまったかのように慌て始め、脱兎の如くその場を去った。
「あれ…もう少しゆっくりしてきゃいいのに。どうしたんだ…?俺、汗臭かったかな?」
そう言って、自分の身体をクンクンする総司を横目に、恵里はニヤニヤしながら
「なんだアンタ…幸せモンだったんだねぇ。」
「あ、そう思う?そうなんだよ!いいだろ!」
汗と油に塗れた恵里に向かい、書類の整理に明け暮れる総司が、目を輝かせながら問いかける。
「…何だい?突然。そんなこと聞いてどうすんのさ。」
機体の下でメンテナスをしながら、気怠そうに恵里は答えた。
「いやいいじゃんか!いくら企業秘密だ、って言われてもよ?自分が関わってるモンのことくらい、俺だってちっとは知りたいぜ。」
総司は、スタークラウン社における現在のジャックの管轄の部署である、種岡の下でアルバイトをすることになったのだが…。
業務内容はあくまでも「雑用」であり、ロボットを製造している、ということ以外には何も知らされていなかった。
一体どんな経緯で、どんなコンセプトで設計された機体なのか?
パイロットとして、大いに興味をそそられるというものだ。
「まぁ…確かにね。中身に関わらないことなら、少しゃぁいいか。」
ふっ、と呆れたような顔で、恵里が機体の下から身を躍らせ、ゆっくりと立ち上がり、額に光る汗を拭う。
「憧れの先輩がいてね。その人の影響だよ。」
普段から割りとイカツい恵里の顔が、僅かに緩む。
「アタシの手本みたいな人さ…。
ロボットアニメが大好きで、やたら他人を気にかけて…。荒れてた昔のアタシを、救ってくれた。そんな人が『ロボットを作るのが夢だ!』なんて言うモンだから、私もつられて、ね。
その人との約束なんだよ、コイツは。
だからアタシは、何としても完成させてみせる。例え周りから、どんなに否定されても!」
両手を腰に添えながら、恵里の口からは、つらつらと気持ちが漏れ出でる。その様は、普段の大雑把な彼女からは想像ができない姿のように、総司の目には映っていた。
「へぇ…別に疑ってたワケじゃないけど、やっぱりちゃんとした理由があるんだな。
俺、ちょっとうるっと来ちゃった!…で、その人は今何してんの?」
総司はデスクで書類を纏めながら、徐々に完成しつつある、未知の夢の塊を見上げ、瞳を輝かせながら尋ねた。
「へっ、アンタ。それは…聞いたら野暮ってモンだよ…。」
そう言い放ち、総司に背を向けた姿を見て、総司も何かを察した。
「あっ、わ、悪ィ…。」
咄嗟に顔を背ける。
「ま、いいってことよ。それにしても、アンタも変なやつだね。アンタにとっちゃ、アタシらはライバルみたいなもんじゃないか。それを、何の邪心も無く手伝うなんでさ。」
「ライバルかぁ。うーん、ライバルなのか?そうなるのかな。
ま、いろんな人たちの夢が集まって、こうやって大きなモノになっていくのって…胸が熱くなるだろ?俺も負けてらんねーな!って気になるんだよ。だから別に、敵とか味方とか、そういのはあんまり。」
似た者同士というべきか、2人は馬が合うらしく、打ち解けるのにそう時間は掛からなかったようである。
「こんにちは、ゆーりーイーツです!総司さん!お弁当届けに来…。」
夏休みで学校が無いものの、家計のためにバイトに明け暮れている百合子が、合間を縫って工場に現れた。
「はは…お?百合ちゃん!わざわざありがとう!っと、こちら俺の上司の種岡さんだ!」
「ああ、キミがウワサの!種岡恵里だよ、よろしくね!」
楽しげな会話を中断し、2人は百合子に挨拶を交わす。その姿には、もちろん悪びれる素振りはない。
「あ、あの、えっと、は、初めまして…。
じゃあお弁当、ここに置いとくので…し、失礼しますね!お邪魔しました…。」
百合子は、まるで見てはいけないものを見てしまったかのように慌て始め、脱兎の如くその場を去った。
「あれ…もう少しゆっくりしてきゃいいのに。どうしたんだ…?俺、汗臭かったかな?」
そう言って、自分の身体をクンクンする総司を横目に、恵里はニヤニヤしながら
「なんだアンタ…幸せモンだったんだねぇ。」
「あ、そう思う?そうなんだよ!いいだろ!」
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