疾風迅雷アルティランダー

エルマー・ボストン

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第四話 あなたの思い出

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「そうか、やっぱりな。なんか、そんな気がしてたんだよな。」

坂田家では、ジャックと士郎が神妙な面持ちで、麦茶をすすっていた。

「単刀直入におうかがいします。士郎さん、アナタ、異能力お持ちじゃないですか?まぁつまり、私が思うにテレパシー…地球外から発信されている通信脳波をキャッチできるような…。」

ジャックは確信を持って、士郎に迫る。が。

「ええ、何それ…こわ…それこそこわいわ…そんなわけないじゃん…。どういうことよ…。」

あまりの話の飛躍っぷりに、動揺を隠せない士郎。

「え、嘘。私の前提全部崩れますよそれだと…。ロレーナ星のマリーさんの『声』をキャッチして、交信されたのでは…?」

「誰それ…マジでこわいわ…。」

ドン引きである。いきなり知らない人の、しかも宇宙のどこにいるかもわからない人の話を出されて、理解が追いつくはずがなかった。

「ん、待てよ?ロレーナ星?なんか聞き覚えが…。」


*******


「お待たへー!」

「レ、レナちゃん…す、すごい服装だね…。」

「そーぉ?フツーだと思うけどなぁ。」

地球の文化に慣れていないジャネットは、現地の風土に合わせつつも、ギリギリでピチピチのミニスカート、肩はおろか、胸の谷間ギリギリまで露わになった、かなり露出度の高い服装で現れた。
食文化を気に入ったジャネットに頼み込まれ、百合子と桃は、ジャネットを案内するべく渋谷に来ていた。

「ああ…これがかき氷…美味しい…!冷たぁい…!」 

マンゴー果肉たっぷり、練乳まみれのかき氷を口いっぱいに頬張り、満面の幸せな笑みを浮かべる宇宙人の少女。
それを尻目に、百合子は心ここに在らず、とでも言いたげに俯き加減であった。

「…百合、なんか元気なくない?何かあったの?」

桃はなんだかよくわからないほどシロップでダバダバになったかき氷を、まるで飲むように口に運びながら、百合子の異変を気遣う。

「そ、そうかな。そんなことないと思うけど…。」

百合子はハッとしてその場を取り繕うも、表情は晴れない。
やはり桃には、それが引っかかるらしい。

「百合の悪いクセだよ、そういうの相談しないの。レナちゃんも言ってやって!」

「なんだよー百合ー。気になるぞー、何悩んでんだよー。言ーえーよー。」

ジャネットはニヤニヤしながら、満面の幸せ笑顔のまま、片肘で百合子を小突く。

「な、何にもないってばぁ!もう…。」





「あっ!百合ちゃんこんなところにいたのか!急に出て行くから心配したんだぜ!」

「ぶっ!!」

総司が現れた瞬間、ジャネットは、気に入ってまた飲みに飲んでいたタピオカを吹き出した。

「(あっ!!あ、あの時の…?!)」

初戦の後、渋谷を彷徨っていたジャネットに声をかけた男が、今度は松葉杖を突いて今、目の前に立っている。正体がバレるのではないかと、流石に恐れ慄くというものだ。

「おっと、お友達かな?初めまして、東郷総司っていうっス!百合ちゃんには大変お世話になってるっス!」

総司は、バランスを崩さない程度に深々と頭を下げる。

「こんにちは、山野辺桃っていいます!百合子の彼氏さんですか?」

桃は何の悪意もなく、バッサリ切り込んだ。

「ぶっ!!」

今度は百合子がタピオカを吹き出した。

「あっはっは!!俺の歳で高校生と付き合ったら、捕まっちまうよ!!」

爽やかに笑って見せ、さらっとかわす総司。
しかし、その顔は満更でも無さそうだ。
そして総司はあることに気が付いた。

「・・・あれ?!なんかどっかで見たと思ったら、この前アルティランダーから降りた時に会った、迷子さんじゃないか!百合ちゃんの友達だったの?!すごい偶然だなぁ!いやー無事でよかったぜ!」

総司は喜び、目を輝かせながら口を滑らせた。

「え、そ、そうだったの?!でも総司さん!その話、あんまり人前でしない方が…!」

総司がアルティランダーに乗っていると知られたら諸々面倒だと知っている百合子は、咄嗟に総司に近付いて耳打ちした。

「あっやべそうだった!スンマセンナンデモナイデス。・・・じゃあ百合ちゃん、お先!この後バイトだろ、頑張ってな!」

下手な棒読みで誤魔化そうとした総司は、慌ててその場を後にする。人混みの中での松葉杖捌きも手慣れたものだ。

「あ、うん。気をつけてね総司さん。」

百合子は、自分でも気付かないうちに微笑みながら、喧騒に消えていく総司の後ろ姿を見送った。

「・・・はっはぁん。百合の悩みのタネはあの人か。」

この手の話題によく食いつく桃である。
そんな百合子の顔つきを、見逃すはずがなかった。桃はこれでもかと言わんばかりのニヤけ顔で、百合子の脇から茶化しを入れた。

「なっ…!何言ってるの?!そんなんじゃないよ!!た、ただの幼なじみみたいなものよ!」

「えぇ~?私まだ何も言ってないのにィ~?」

「うぅっ…!」

桃には格好の餌食だ。

「それに、レナちゃんも東郷さんと知り合いだったなんて、なんかすごい偶然だね!もしかして、2人はライバルだったり…?」

「えっ?!そ、そうなのレナちゃん?!」

さらに燃料を投下する桃と、つい本心が出てしまう百合子。
片や楽しげに、片や取り乱して、ジャネットに迫る。

「ちょっ…勝手に盛り上がんないでよ!私は地きゅ…んんっ!ゲフンゲフン!そういうのは…ないって…あ、あはは、あははは…!」

ジャネットはそう言ってその場をやり過ごしたものの、自分でも不本意なほどに眼は泳ぎ、内心は狼狽えに狼狽えていた。
この感情、この心の騒めき。正体の掴めない心臓の鼓動。

「あ、あれ…?何か急に、とっても悪い予感がする…。」

それは、あまりに突然だった。
それまでの楽しげな空気が、百合子の中で大きく変わっていく。
自分でも何の確証もない、違和感に次ぐ違和感が百合子を襲う。虫の知らせと呼ぶにしても、あまりに拙い。だが、それは百合子の中で大きく、確実に膨らんでいく。

「ん?どうしたの百合、なんか変…」

「2人とも!ここから離れよう!」

咄嗟に椅子から立ち上がり、連れ去らんばかりの勢いで肩を引き、桃とレナに必死の形相で促す百合子。

「百合、ちょ、ちょっとどうしたの…?え?何が…」

あまりに普段とかけ離れた百合子の姿に、流石の桃も異常を察し始めていた。

「早く!お願い!」

その時だった。
スクランブル交差点に、突如として、ガッツやジャネットたちのものとは二回りほど大きな戦艦が空中から現れ、バーニアをゆっくりとふかしながら着陸したのだった。
かと思えば、着陸とほぼ同時に、艦橋らしき箇所の上空に、ホログラムが浮かび上がった。

「おで、宇宙、きた!ここ、あれ、いる、知る!どこ!どこいる!出す!」

ヒューマノイドタイプではあるが、地球人やガッツたちとは全く見た目の違う、目も鼻も、耳も無い、クラゲのような頭をした宇宙人だ。
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