75 / 81
第六章 カラマス編
第七十一話 先が見えない4人組
しおりを挟む
「さあ!そんなわけでダリル!!後はあんたの魔法で終わりにしようぜ!!」
その一連の流れを見ていたダリルは、呆然とした表情のままボソボソと呟く。
「なんなの、あんたのほとんど博打みたいな作戦は。無鉄砲にも程があるでしょう。だけど……あそこからここまで状況を整えられたら、出来ませんとは言えないな」
ふぅとひとつ息を吐き出し、言葉を続ける。
「この町全体に浄化をかけるのと、あの爺さんを倒すことの両方できる方法はないかっつったじゃん?それでさ――ひとつ、やってみたいのがあるんだ」
ダリルはそう言うと、胸の前で両手のひらを上に向けた。
すると、そこにちょうど手のひらがすっぽり隠れるほどの小さな魔法陣が展開される。
その魔法陣からゆっくりと虹色に輝く小さなラッパのような物が現れ、ダリルの手のひらに降りてくる。
それを見た瞬間、ヴェルデやデイモス、そしてアッタマルドが息を呑んで身構えたのが伝わってきた。
けど俺は、あれが何なのか全く分からないし、みんながめちゃくちゃビビってる理由もよく分からん。
「――ねぇ、あれって何?なんでそんなに身構えてんの?」
俺はこのシリアスな雰囲気を思いっきり無視して、小声で2人に聞いてみた。
「俺もあれが何かは分かってるわけじゃない。ただ――」
「あの笛に込められた魔力量や質は、さっきダリルが撃っていた魔法や私の魔法とは次元が違う……」
そう語るデイモスとヴェルデ二人の表情は、今まであんまり見たことないくらい真剣なものだった。
「なんだっけ……本来は世界に終末がうんぬんかんぬんの笛だったはず、確か。……もういいや、何でも。ごちゃごちゃ話すのもあれだから、早いとこ終わらせちゃおう」
なんだか一瞬とんでもなく不吉なワードが聞こえた気がしたが、俺は何も聞かなかったことにした。
ダリルがその笛の吹き口を口元へ近づける。
だが、それをアッタマルドは黙って見ているわけもなく。
「――悪ィが、黙ってやられてやるほど行儀よくねェんでなァ、こっちも全力で抵抗させてもらうぜ?……『飛びかかれ』ッ!!」
その瞬間、ゾンビ達が俺たちに向かって一斉に襲い掛かってきた。
周囲360度を完全に包囲されているため逃げることは出来ないし、ものすごい勢いで迫ってくるゾンビの迫力に思わず失神しそうになる。
けど、今の俺たちにはダリルがいる!
「ダリル!後は任せた!」
……しかし、魔法はまだ発動しない。
あれ?まだか?まだか?と待っている間に、ゾンビ達はすぐそこまで来ている。
軽くパニックになっている俺とデイモス、ヴェルデ。
「ダリル……ダリル!?ちょっ、どうしたの!?ヤバいって!もうそこまで来てるよ!?」
「うるせぇぞ太郎!きっとギリギリまで引き付けるつもりなんだ!……だろ!?そうなんだろ!?」
「お前もうるさいって!!……ヴェルデはヴェルデで悟ったような目で空見てるし!!やめて?不安になるからその目やめて!?」
俺たちの間で阿鼻叫喚が繰り広げられている時も、ゾンビ達の動きは止まることはない。その距離はみるみる無くなり、手を伸ばせば届きそうなところまで来ている。
もうダメだと頭を覆った瞬間、高いラッパの音が俺たちの周囲を……いや、街全体に響き渡る。
思わず顔を上げると、目の前にガパリと大きく口を開けたゾンビの顔面がドアップで飛び込んでくる。
誇張無しで視界の9割が暗転したが、かろうじて意識を繋ぎとめる。
よく見るとそのゾンビの動きは口を開けた状態で停止しており、周囲のゾンビ達も同様にその動きを止めていた。
一瞬、俺の脳も停止し状況を飲み込めずにいたが、すぐにダリルの魔法が発動しそれが上手くいったのだと理解した。
そして、俺が理解すると同時にゾンビ達は糸の切れた人形のように地面に崩れ落ちる。
すると、倒れたゾンビ達の身体から先程も見た光の粒子が現れ、それらは宙へ舞い上がりやがて霧散した。
「……すげぇ」
周囲を見回した後、改めてダリルを見ながら俺はポツリと呟いた。
それ以外の言葉が思いつかない。
さっきまで俺たちを殺そうとしていた数万という人々は、ダリルが作った笛の一吹きで完全に無力化した。
「ま、ざっとこんなもんよ」
ダリルは得意げな表情でこちらを見て、不敵な笑みを浮かべた。
しかし、まだ終わりではない。
「へっ……こいつァ参った。まさか本当に全部やられちまうとはな」
俺たちは一斉に声のした方向を振り向く。
すると、光の粒子が霧散した向こうから、アッタマルドの姿が現れた。
その身体からはゾンビと同じ光の粒子が現れ、そして空に消えていく。彼自身の終わりが近いことは誰の目にも明らかだった。
アッタマルドは仕込み刀を右手側の地面に置き、胡座をかいてじっと目を瞑った。
「ワイもただ歳を重ねてきた訳じゃねェ、自分のことは自分が一番分かってらァ。……にしても、ワイの全てを出し切ってもここまで痛快に負けちまうたァ、逆に笑えてくるってもんだ」
そう言ってアッタマルドは微かに笑い、ゆっくりと目を開けた。
「散り際くれェは潔く逝くさ、それにワイに残された時間ももうほとんどないしな。……そうだ、最期にひとつ聞かせてくれ」
「おめェさん達は人間の……てっぺんにいる王が腹の底で何を考えてるか分かってるのか?」
他の3人は首を横に振り、分からないことを伝えた。俺も3人と同様に首を横に振る。
「……いや、全然分からない。そういうあんたは一体何を知ってるんだ?」
「……悪ィな、ワイも知らねェんだ。何となく、聞いてみただけだ」
アッタマルドは少し何かを考えるような表情を見せた後、言葉を続ける。
「ただ……もしかしたら、おめぇらとはまたどこかで会うかもしれねぇな」
その意味深な言葉に、デイモスは「ヒッ」と悲鳴を漏らし、怯えた顔で首を両手で隠した。
そんなデイモスの姿は俺以外誰も反応することなく、ダリルがアッタマルドを睨みつける。
「上等さ、次はタイマンであんたを叩き潰してやるよ」
「へっ、それも面白そうだけどな――」
そこまで話したところでついに時間が来たらしく、アッタマルドは僅かに笑みを浮かべながら身体は完全に光の粒子になって消えていった。
◆◆◆◆
その後、街の人々は徐々に意識を取り戻していった。
それからしばらくして、この街の異変を察知して応援に駆けつけた近隣の討伐隊が到着した。
アンパン魔人の件で俺たち3人は討伐隊の方々に覚えられていたというのもあるのか、かくかくしかじかと状況の説明をした時、割とすんなり理解してもらう事ができた。
その後、顔がボコボコになっている討伐隊の奴らをぐるぐるに縛った状態のまま引き渡し、あとは討伐隊に引き継いでもらった。
さあ、そんなわけで!
「――デイモスにヴェルデ、そしてダリル。本当にありがとう、マジで助かった。一時は本気で死ぬかと思ったが、今はこうしてピンピンしてるし、ゾンビ映画を観たらPTSDを発症するくらいの被害で済んだ!奇跡的だよ!」
「それって精神面にだいぶ深手を負ってない?」
ヴェルデからの問いかけは華麗にスルーし、言葉を続ける。
「ダリルはこれからどうするん……あっ、隣町のパチスロイベントに行くんだっけか。……そういえば、本当に街から金かっぱらってきたの?」
段々と声が小さくなる俺。
「いや、流石にあれは嘘よ。ギャンブルするんなら、限られた金でギリギリの勝負をする方がさ、ゾクゾクしない?賭け事っつーのはスリルよスリル」
それを聞いてホッとした部分もありつつ、大分ヤバめなギャンブラーの根幹を垣間見てしまったことの恐ろしさを感じながら、「なるほどなるほど」と意味不明な相槌を打つ。
「でさ、実はひとつお願いしたいことがあって」
改まった様子でダリルが話し始める。
何を言われるか検討もつかない俺たちは、頭の上に『?』を浮かべながら顔を見合わせた。
「実は私、賢者関係の奴らから追われててさ、多分今回の騒動で場所がバレちゃうと思うんだよね。そんなわけで、私を仲間にしてほしいの!私があなたの仲間に入れば『勇者一行』っていう隠れ蓑ができるじゃん?」
「そんなストレートに言うの!?しかもあんた……お尋ね者かよ」
デイモスが訝しげな表情を浮かべ言った。
「そうそう!……あ!けど誤解しないでよ!別に人を殺したりとかそういうヤバい理由じゃないから!ちょっと禁忌とされてる神の祝福を多用しすぎただけだから!なんならさっき使ったのも禁忌になってるやつだしダイジョーブダイジョーブ」
一体なにが大丈夫なのか全く分からないが、自信満々な様子。
そんな中、ヴェルデが徐に口を開いた。
「あの……なんでそんなに正直に全部話したんですか?先に誘ったのはこちらなんですから『諦めない熱に負けた』とか『気が変わった』と言われれば、誰も何も文句言わなかったと思うのですが……」
確かにそれはちょっとだけ気になった。
その問いにダリルは顎に手を当て、一瞬考えるような動作をしたが、すぐに返答した。
「うーん、まあね。けどさ、仲間になるんなら、後々重要になりそうな事は事前に伝えておいた方が何かと楽でしょ?それに、隠して入ったら騙してるみたいでモヤモヤするしさ」
「ま、それでダメってんならしょーがない、諦めるよ。ただ、あんたらの仲間になりたいって思ったのは隠れ蓑にしたいからってだけじゃないぞ?」
そこまで話したところでダリルは3人の顔を見回し、裏表のない笑顔を浮かべる。
「あんたらと一緒にいれば、なにかと面白いことに巻き込まれそうだからね」
そう語るダリルの眼には一切の曇りもなく、真っ直ぐに俺たちを見つめていた。
俺もその眼を真っ直ぐに見返した後、緊張が緩んだようにフッと笑い、右手を差し出した。
「命を助けてもらった恩もあるし、なにより最初に誘ったのはこっちからだからな」
「改めて、これからよろしく頼む!」
「こっちこそ!」
俺とダリルはガッチリと固く握手した。
――かくして、俺たちの仲間に賢者のダリルが加わった。
彼女の強力な魔法は、これから先の旅の中で現れるであろう、これまで以上に手強い敵との戦いできっと助けになってくれるはずだ!
それに!俺には他にも心強い仲間がいる!
そう!心強い仲間が……仲間が……。
…………。
元は人間であるが、現在は人類の敵である魔族に分類されるアンデッド。
使える魔法は限られた条件下でしか発動できないものや効果が意味不明なもので、魔法のことになると倫理観が欠如する魔法使い。
酒・薬物・ギャンブルの中毒に加え、禁忌とされる魔法の使用で追われる身となっている賢者。
そんで、そもそも一番論外な魔法も何も使えないガチ無能かつスライムに殺されかける最弱勇者。
…………。
まるで就職先の見つからない無職ニートのような、未来に対する漠然とした不安を抱えながら、俺たちは肩を並べて当てもなく彷徨い歩く。
いったいこれから先、この4人でどうやって魔王を含めた魔王軍を倒していくのか、今の俺にはまるで検討もつかない。
その一連の流れを見ていたダリルは、呆然とした表情のままボソボソと呟く。
「なんなの、あんたのほとんど博打みたいな作戦は。無鉄砲にも程があるでしょう。だけど……あそこからここまで状況を整えられたら、出来ませんとは言えないな」
ふぅとひとつ息を吐き出し、言葉を続ける。
「この町全体に浄化をかけるのと、あの爺さんを倒すことの両方できる方法はないかっつったじゃん?それでさ――ひとつ、やってみたいのがあるんだ」
ダリルはそう言うと、胸の前で両手のひらを上に向けた。
すると、そこにちょうど手のひらがすっぽり隠れるほどの小さな魔法陣が展開される。
その魔法陣からゆっくりと虹色に輝く小さなラッパのような物が現れ、ダリルの手のひらに降りてくる。
それを見た瞬間、ヴェルデやデイモス、そしてアッタマルドが息を呑んで身構えたのが伝わってきた。
けど俺は、あれが何なのか全く分からないし、みんながめちゃくちゃビビってる理由もよく分からん。
「――ねぇ、あれって何?なんでそんなに身構えてんの?」
俺はこのシリアスな雰囲気を思いっきり無視して、小声で2人に聞いてみた。
「俺もあれが何かは分かってるわけじゃない。ただ――」
「あの笛に込められた魔力量や質は、さっきダリルが撃っていた魔法や私の魔法とは次元が違う……」
そう語るデイモスとヴェルデ二人の表情は、今まであんまり見たことないくらい真剣なものだった。
「なんだっけ……本来は世界に終末がうんぬんかんぬんの笛だったはず、確か。……もういいや、何でも。ごちゃごちゃ話すのもあれだから、早いとこ終わらせちゃおう」
なんだか一瞬とんでもなく不吉なワードが聞こえた気がしたが、俺は何も聞かなかったことにした。
ダリルがその笛の吹き口を口元へ近づける。
だが、それをアッタマルドは黙って見ているわけもなく。
「――悪ィが、黙ってやられてやるほど行儀よくねェんでなァ、こっちも全力で抵抗させてもらうぜ?……『飛びかかれ』ッ!!」
その瞬間、ゾンビ達が俺たちに向かって一斉に襲い掛かってきた。
周囲360度を完全に包囲されているため逃げることは出来ないし、ものすごい勢いで迫ってくるゾンビの迫力に思わず失神しそうになる。
けど、今の俺たちにはダリルがいる!
「ダリル!後は任せた!」
……しかし、魔法はまだ発動しない。
あれ?まだか?まだか?と待っている間に、ゾンビ達はすぐそこまで来ている。
軽くパニックになっている俺とデイモス、ヴェルデ。
「ダリル……ダリル!?ちょっ、どうしたの!?ヤバいって!もうそこまで来てるよ!?」
「うるせぇぞ太郎!きっとギリギリまで引き付けるつもりなんだ!……だろ!?そうなんだろ!?」
「お前もうるさいって!!……ヴェルデはヴェルデで悟ったような目で空見てるし!!やめて?不安になるからその目やめて!?」
俺たちの間で阿鼻叫喚が繰り広げられている時も、ゾンビ達の動きは止まることはない。その距離はみるみる無くなり、手を伸ばせば届きそうなところまで来ている。
もうダメだと頭を覆った瞬間、高いラッパの音が俺たちの周囲を……いや、街全体に響き渡る。
思わず顔を上げると、目の前にガパリと大きく口を開けたゾンビの顔面がドアップで飛び込んでくる。
誇張無しで視界の9割が暗転したが、かろうじて意識を繋ぎとめる。
よく見るとそのゾンビの動きは口を開けた状態で停止しており、周囲のゾンビ達も同様にその動きを止めていた。
一瞬、俺の脳も停止し状況を飲み込めずにいたが、すぐにダリルの魔法が発動しそれが上手くいったのだと理解した。
そして、俺が理解すると同時にゾンビ達は糸の切れた人形のように地面に崩れ落ちる。
すると、倒れたゾンビ達の身体から先程も見た光の粒子が現れ、それらは宙へ舞い上がりやがて霧散した。
「……すげぇ」
周囲を見回した後、改めてダリルを見ながら俺はポツリと呟いた。
それ以外の言葉が思いつかない。
さっきまで俺たちを殺そうとしていた数万という人々は、ダリルが作った笛の一吹きで完全に無力化した。
「ま、ざっとこんなもんよ」
ダリルは得意げな表情でこちらを見て、不敵な笑みを浮かべた。
しかし、まだ終わりではない。
「へっ……こいつァ参った。まさか本当に全部やられちまうとはな」
俺たちは一斉に声のした方向を振り向く。
すると、光の粒子が霧散した向こうから、アッタマルドの姿が現れた。
その身体からはゾンビと同じ光の粒子が現れ、そして空に消えていく。彼自身の終わりが近いことは誰の目にも明らかだった。
アッタマルドは仕込み刀を右手側の地面に置き、胡座をかいてじっと目を瞑った。
「ワイもただ歳を重ねてきた訳じゃねェ、自分のことは自分が一番分かってらァ。……にしても、ワイの全てを出し切ってもここまで痛快に負けちまうたァ、逆に笑えてくるってもんだ」
そう言ってアッタマルドは微かに笑い、ゆっくりと目を開けた。
「散り際くれェは潔く逝くさ、それにワイに残された時間ももうほとんどないしな。……そうだ、最期にひとつ聞かせてくれ」
「おめェさん達は人間の……てっぺんにいる王が腹の底で何を考えてるか分かってるのか?」
他の3人は首を横に振り、分からないことを伝えた。俺も3人と同様に首を横に振る。
「……いや、全然分からない。そういうあんたは一体何を知ってるんだ?」
「……悪ィな、ワイも知らねェんだ。何となく、聞いてみただけだ」
アッタマルドは少し何かを考えるような表情を見せた後、言葉を続ける。
「ただ……もしかしたら、おめぇらとはまたどこかで会うかもしれねぇな」
その意味深な言葉に、デイモスは「ヒッ」と悲鳴を漏らし、怯えた顔で首を両手で隠した。
そんなデイモスの姿は俺以外誰も反応することなく、ダリルがアッタマルドを睨みつける。
「上等さ、次はタイマンであんたを叩き潰してやるよ」
「へっ、それも面白そうだけどな――」
そこまで話したところでついに時間が来たらしく、アッタマルドは僅かに笑みを浮かべながら身体は完全に光の粒子になって消えていった。
◆◆◆◆
その後、街の人々は徐々に意識を取り戻していった。
それからしばらくして、この街の異変を察知して応援に駆けつけた近隣の討伐隊が到着した。
アンパン魔人の件で俺たち3人は討伐隊の方々に覚えられていたというのもあるのか、かくかくしかじかと状況の説明をした時、割とすんなり理解してもらう事ができた。
その後、顔がボコボコになっている討伐隊の奴らをぐるぐるに縛った状態のまま引き渡し、あとは討伐隊に引き継いでもらった。
さあ、そんなわけで!
「――デイモスにヴェルデ、そしてダリル。本当にありがとう、マジで助かった。一時は本気で死ぬかと思ったが、今はこうしてピンピンしてるし、ゾンビ映画を観たらPTSDを発症するくらいの被害で済んだ!奇跡的だよ!」
「それって精神面にだいぶ深手を負ってない?」
ヴェルデからの問いかけは華麗にスルーし、言葉を続ける。
「ダリルはこれからどうするん……あっ、隣町のパチスロイベントに行くんだっけか。……そういえば、本当に街から金かっぱらってきたの?」
段々と声が小さくなる俺。
「いや、流石にあれは嘘よ。ギャンブルするんなら、限られた金でギリギリの勝負をする方がさ、ゾクゾクしない?賭け事っつーのはスリルよスリル」
それを聞いてホッとした部分もありつつ、大分ヤバめなギャンブラーの根幹を垣間見てしまったことの恐ろしさを感じながら、「なるほどなるほど」と意味不明な相槌を打つ。
「でさ、実はひとつお願いしたいことがあって」
改まった様子でダリルが話し始める。
何を言われるか検討もつかない俺たちは、頭の上に『?』を浮かべながら顔を見合わせた。
「実は私、賢者関係の奴らから追われててさ、多分今回の騒動で場所がバレちゃうと思うんだよね。そんなわけで、私を仲間にしてほしいの!私があなたの仲間に入れば『勇者一行』っていう隠れ蓑ができるじゃん?」
「そんなストレートに言うの!?しかもあんた……お尋ね者かよ」
デイモスが訝しげな表情を浮かべ言った。
「そうそう!……あ!けど誤解しないでよ!別に人を殺したりとかそういうヤバい理由じゃないから!ちょっと禁忌とされてる神の祝福を多用しすぎただけだから!なんならさっき使ったのも禁忌になってるやつだしダイジョーブダイジョーブ」
一体なにが大丈夫なのか全く分からないが、自信満々な様子。
そんな中、ヴェルデが徐に口を開いた。
「あの……なんでそんなに正直に全部話したんですか?先に誘ったのはこちらなんですから『諦めない熱に負けた』とか『気が変わった』と言われれば、誰も何も文句言わなかったと思うのですが……」
確かにそれはちょっとだけ気になった。
その問いにダリルは顎に手を当て、一瞬考えるような動作をしたが、すぐに返答した。
「うーん、まあね。けどさ、仲間になるんなら、後々重要になりそうな事は事前に伝えておいた方が何かと楽でしょ?それに、隠して入ったら騙してるみたいでモヤモヤするしさ」
「ま、それでダメってんならしょーがない、諦めるよ。ただ、あんたらの仲間になりたいって思ったのは隠れ蓑にしたいからってだけじゃないぞ?」
そこまで話したところでダリルは3人の顔を見回し、裏表のない笑顔を浮かべる。
「あんたらと一緒にいれば、なにかと面白いことに巻き込まれそうだからね」
そう語るダリルの眼には一切の曇りもなく、真っ直ぐに俺たちを見つめていた。
俺もその眼を真っ直ぐに見返した後、緊張が緩んだようにフッと笑い、右手を差し出した。
「命を助けてもらった恩もあるし、なにより最初に誘ったのはこっちからだからな」
「改めて、これからよろしく頼む!」
「こっちこそ!」
俺とダリルはガッチリと固く握手した。
――かくして、俺たちの仲間に賢者のダリルが加わった。
彼女の強力な魔法は、これから先の旅の中で現れるであろう、これまで以上に手強い敵との戦いできっと助けになってくれるはずだ!
それに!俺には他にも心強い仲間がいる!
そう!心強い仲間が……仲間が……。
…………。
元は人間であるが、現在は人類の敵である魔族に分類されるアンデッド。
使える魔法は限られた条件下でしか発動できないものや効果が意味不明なもので、魔法のことになると倫理観が欠如する魔法使い。
酒・薬物・ギャンブルの中毒に加え、禁忌とされる魔法の使用で追われる身となっている賢者。
そんで、そもそも一番論外な魔法も何も使えないガチ無能かつスライムに殺されかける最弱勇者。
…………。
まるで就職先の見つからない無職ニートのような、未来に対する漠然とした不安を抱えながら、俺たちは肩を並べて当てもなく彷徨い歩く。
いったいこれから先、この4人でどうやって魔王を含めた魔王軍を倒していくのか、今の俺にはまるで検討もつかない。
0
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる