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第六章 カラマス編
第七十一話 先が見えない4人組
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「さあ!そんなわけでダリル!!後はあんたの魔法で終わりにしようぜ!!」
その一連の流れを見ていたダリルは、呆然とした表情のままボソボソと呟く。
「なんなの、あんたのほとんど博打みたいな作戦は。無鉄砲にも程があるでしょう。だけど……あそこからここまで状況を整えられたら、出来ませんとは言えないな」
ふぅとひとつ息を吐き出し、言葉を続ける。
「この町全体に浄化をかけるのと、あの爺さんを倒すことの両方できる方法はないかっつったじゃん?それでさ――ひとつ、やってみたいのがあるんだ」
ダリルはそう言うと、胸の前で両手のひらを上に向けた。
すると、そこにちょうど手のひらがすっぽり隠れるほどの小さな魔法陣が展開される。
その魔法陣からゆっくりと虹色に輝く小さなラッパのような物が現れ、ダリルの手のひらに降りてくる。
それを見た瞬間、ヴェルデやデイモス、そしてアッタマルドが息を呑んで身構えたのが伝わってきた。
けど俺は、あれが何なのか全く分からないし、みんながめちゃくちゃビビってる理由もよく分からん。
「――ねぇ、あれって何?なんでそんなに身構えてんの?」
俺はこのシリアスな雰囲気を思いっきり無視して、小声で2人に聞いてみた。
「俺もあれが何かは分かってるわけじゃない。ただ――」
「あの笛に込められた魔力量や質は、さっきダリルが撃っていた魔法や私の魔法とは次元が違う……」
そう語るデイモスとヴェルデ二人の表情は、今まであんまり見たことないくらい真剣なものだった。
「なんだっけ……本来は世界に終末がうんぬんかんぬんの笛だったはず、確か。……もういいや、何でも。ごちゃごちゃ話すのもあれだから、早いとこ終わらせちゃおう」
なんだか一瞬とんでもなく不吉なワードが聞こえた気がしたが、俺は何も聞かなかったことにした。
ダリルがその笛の吹き口を口元へ近づける。
だが、それをアッタマルドは黙って見ているわけもなく。
「――悪ィが、黙ってやられてやるほど行儀よくねェんでなァ、こっちも全力で抵抗させてもらうぜ?……『飛びかかれ』ッ!!」
その瞬間、ゾンビ達が俺たちに向かって一斉に襲い掛かってきた。
周囲360度を完全に包囲されているため逃げることは出来ないし、ものすごい勢いで迫ってくるゾンビの迫力に思わず失神しそうになる。
けど、今の俺たちにはダリルがいる!
「ダリル!後は任せた!」
……しかし、魔法はまだ発動しない。
あれ?まだか?まだか?と待っている間に、ゾンビ達はすぐそこまで来ている。
軽くパニックになっている俺とデイモス、ヴェルデ。
「ダリル……ダリル!?ちょっ、どうしたの!?ヤバいって!もうそこまで来てるよ!?」
「うるせぇぞ太郎!きっとギリギリまで引き付けるつもりなんだ!……だろ!?そうなんだろ!?」
「お前もうるさいって!!……ヴェルデはヴェルデで悟ったような目で空見てるし!!やめて?不安になるからその目やめて!?」
俺たちの間で阿鼻叫喚が繰り広げられている時も、ゾンビ達の動きは止まることはない。その距離はみるみる無くなり、手を伸ばせば届きそうなところまで来ている。
もうダメだと頭を覆った瞬間、高いラッパの音が俺たちの周囲を……いや、街全体に響き渡る。
思わず顔を上げると、目の前にガパリと大きく口を開けたゾンビの顔面がドアップで飛び込んでくる。
誇張無しで視界の9割が暗転したが、かろうじて意識を繋ぎとめる。
よく見るとそのゾンビの動きは口を開けた状態で停止しており、周囲のゾンビ達も同様にその動きを止めていた。
一瞬、俺の脳も停止し状況を飲み込めずにいたが、すぐにダリルの魔法が発動しそれが上手くいったのだと理解した。
そして、俺が理解すると同時にゾンビ達は糸の切れた人形のように地面に崩れ落ちる。
すると、倒れたゾンビ達の身体から先程も見た光の粒子が現れ、それらは宙へ舞い上がりやがて霧散した。
「……すげぇ」
周囲を見回した後、改めてダリルを見ながら俺はポツリと呟いた。
それ以外の言葉が思いつかない。
さっきまで俺たちを殺そうとしていた数万という人々は、ダリルが作った笛の一吹きで完全に無力化した。
「ま、ざっとこんなもんよ」
ダリルは得意げな表情でこちらを見て、不敵な笑みを浮かべた。
しかし、まだ終わりではない。
「へっ……こいつァ参った。まさか本当に全部やられちまうとはな」
俺たちは一斉に声のした方向を振り向く。
すると、光の粒子が霧散した向こうから、アッタマルドの姿が現れた。
その身体からはゾンビと同じ光の粒子が現れ、そして空に消えていく。彼自身の終わりが近いことは誰の目にも明らかだった。
アッタマルドは仕込み刀を右手側の地面に置き、胡座をかいてじっと目を瞑った。
「ワイもただ歳を重ねてきた訳じゃねェ、自分のことは自分が一番分かってらァ。……にしても、ワイの全てを出し切ってもここまで痛快に負けちまうたァ、逆に笑えてくるってもんだ」
そう言ってアッタマルドは微かに笑い、ゆっくりと目を開けた。
「散り際くれェは潔く逝くさ、それにワイに残された時間ももうほとんどないしな。……そうだ、最期にひとつ聞かせてくれ」
「おめェさん達は人間の……てっぺんにいる王が腹の底で何を考えてるか分かってるのか?」
他の3人は首を横に振り、分からないことを伝えた。俺も3人と同様に首を横に振る。
「……いや、全然分からない。そういうあんたは一体何を知ってるんだ?」
「……悪ィな、ワイも知らねェんだ。何となく、聞いてみただけだ」
アッタマルドは少し何かを考えるような表情を見せた後、言葉を続ける。
「ただ……もしかしたら、おめぇらとはまたどこかで会うかもしれねぇな」
その意味深な言葉に、デイモスは「ヒッ」と悲鳴を漏らし、怯えた顔で首を両手で隠した。
そんなデイモスの姿は俺以外誰も反応することなく、ダリルがアッタマルドを睨みつける。
「上等さ、次はタイマンであんたを叩き潰してやるよ」
「へっ、それも面白そうだけどな――」
そこまで話したところでついに時間が来たらしく、アッタマルドは僅かに笑みを浮かべながら身体は完全に光の粒子になって消えていった。
◆◆◆◆
その後、街の人々は徐々に意識を取り戻していった。
それからしばらくして、この街の異変を察知して応援に駆けつけた近隣の討伐隊が到着した。
アンパン魔人の件で俺たち3人は討伐隊の方々に覚えられていたというのもあるのか、かくかくしかじかと状況の説明をした時、割とすんなり理解してもらう事ができた。
その後、顔がボコボコになっている討伐隊の奴らをぐるぐるに縛った状態のまま引き渡し、あとは討伐隊に引き継いでもらった。
さあ、そんなわけで!
「――デイモスにヴェルデ、そしてダリル。本当にありがとう、マジで助かった。一時は本気で死ぬかと思ったが、今はこうしてピンピンしてるし、ゾンビ映画を観たらPTSDを発症するくらいの被害で済んだ!奇跡的だよ!」
「それって精神面にだいぶ深手を負ってない?」
ヴェルデからの問いかけは華麗にスルーし、言葉を続ける。
「ダリルはこれからどうするん……あっ、隣町のパチスロイベントに行くんだっけか。……そういえば、本当に街から金かっぱらってきたの?」
段々と声が小さくなる俺。
「いや、流石にあれは嘘よ。ギャンブルするんなら、限られた金でギリギリの勝負をする方がさ、ゾクゾクしない?賭け事っつーのはスリルよスリル」
それを聞いてホッとした部分もありつつ、大分ヤバめなギャンブラーの根幹を垣間見てしまったことの恐ろしさを感じながら、「なるほどなるほど」と意味不明な相槌を打つ。
「でさ、実はひとつお願いしたいことがあって」
改まった様子でダリルが話し始める。
何を言われるか検討もつかない俺たちは、頭の上に『?』を浮かべながら顔を見合わせた。
「実は私、賢者関係の奴らから追われててさ、多分今回の騒動で場所がバレちゃうと思うんだよね。そんなわけで、私を仲間にしてほしいの!私があなたの仲間に入れば『勇者一行』っていう隠れ蓑ができるじゃん?」
「そんなストレートに言うの!?しかもあんた……お尋ね者かよ」
デイモスが訝しげな表情を浮かべ言った。
「そうそう!……あ!けど誤解しないでよ!別に人を殺したりとかそういうヤバい理由じゃないから!ちょっと禁忌とされてる神の祝福を多用しすぎただけだから!なんならさっき使ったのも禁忌になってるやつだしダイジョーブダイジョーブ」
一体なにが大丈夫なのか全く分からないが、自信満々な様子。
そんな中、ヴェルデが徐に口を開いた。
「あの……なんでそんなに正直に全部話したんですか?先に誘ったのはこちらなんですから『諦めない熱に負けた』とか『気が変わった』と言われれば、誰も何も文句言わなかったと思うのですが……」
確かにそれはちょっとだけ気になった。
その問いにダリルは顎に手を当て、一瞬考えるような動作をしたが、すぐに返答した。
「うーん、まあね。けどさ、仲間になるんなら、後々重要になりそうな事は事前に伝えておいた方が何かと楽でしょ?それに、隠して入ったら騙してるみたいでモヤモヤするしさ」
「ま、それでダメってんならしょーがない、諦めるよ。ただ、あんたらの仲間になりたいって思ったのは隠れ蓑にしたいからってだけじゃないぞ?」
そこまで話したところでダリルは3人の顔を見回し、裏表のない笑顔を浮かべる。
「あんたらと一緒にいれば、なにかと面白いことに巻き込まれそうだからね」
そう語るダリルの眼には一切の曇りもなく、真っ直ぐに俺たちを見つめていた。
俺もその眼を真っ直ぐに見返した後、緊張が緩んだようにフッと笑い、右手を差し出した。
「命を助けてもらった恩もあるし、なにより最初に誘ったのはこっちからだからな」
「改めて、これからよろしく頼む!」
「こっちこそ!」
俺とダリルはガッチリと固く握手した。
――かくして、俺たちの仲間に賢者のダリルが加わった。
彼女の強力な魔法は、これから先の旅の中で現れるであろう、これまで以上に手強い敵との戦いできっと助けになってくれるはずだ!
それに!俺には他にも心強い仲間がいる!
そう!心強い仲間が……仲間が……。
…………。
元は人間であるが、現在は人類の敵である魔族に分類されるアンデッド。
使える魔法は限られた条件下でしか発動できないものや効果が意味不明なもので、魔法のことになると倫理観が欠如する魔法使い。
酒・薬物・ギャンブルの中毒に加え、禁忌とされる魔法の使用で追われる身となっている賢者。
そんで、そもそも一番論外な魔法も何も使えないガチ無能かつスライムに殺されかける最弱勇者。
…………。
まるで就職先の見つからない無職ニートのような、未来に対する漠然とした不安を抱えながら、俺たちは肩を並べて当てもなく彷徨い歩く。
いったいこれから先、この4人でどうやって魔王を含めた魔王軍を倒していくのか、今の俺にはまるで検討もつかない。
その一連の流れを見ていたダリルは、呆然とした表情のままボソボソと呟く。
「なんなの、あんたのほとんど博打みたいな作戦は。無鉄砲にも程があるでしょう。だけど……あそこからここまで状況を整えられたら、出来ませんとは言えないな」
ふぅとひとつ息を吐き出し、言葉を続ける。
「この町全体に浄化をかけるのと、あの爺さんを倒すことの両方できる方法はないかっつったじゃん?それでさ――ひとつ、やってみたいのがあるんだ」
ダリルはそう言うと、胸の前で両手のひらを上に向けた。
すると、そこにちょうど手のひらがすっぽり隠れるほどの小さな魔法陣が展開される。
その魔法陣からゆっくりと虹色に輝く小さなラッパのような物が現れ、ダリルの手のひらに降りてくる。
それを見た瞬間、ヴェルデやデイモス、そしてアッタマルドが息を呑んで身構えたのが伝わってきた。
けど俺は、あれが何なのか全く分からないし、みんながめちゃくちゃビビってる理由もよく分からん。
「――ねぇ、あれって何?なんでそんなに身構えてんの?」
俺はこのシリアスな雰囲気を思いっきり無視して、小声で2人に聞いてみた。
「俺もあれが何かは分かってるわけじゃない。ただ――」
「あの笛に込められた魔力量や質は、さっきダリルが撃っていた魔法や私の魔法とは次元が違う……」
そう語るデイモスとヴェルデ二人の表情は、今まであんまり見たことないくらい真剣なものだった。
「なんだっけ……本来は世界に終末がうんぬんかんぬんの笛だったはず、確か。……もういいや、何でも。ごちゃごちゃ話すのもあれだから、早いとこ終わらせちゃおう」
なんだか一瞬とんでもなく不吉なワードが聞こえた気がしたが、俺は何も聞かなかったことにした。
ダリルがその笛の吹き口を口元へ近づける。
だが、それをアッタマルドは黙って見ているわけもなく。
「――悪ィが、黙ってやられてやるほど行儀よくねェんでなァ、こっちも全力で抵抗させてもらうぜ?……『飛びかかれ』ッ!!」
その瞬間、ゾンビ達が俺たちに向かって一斉に襲い掛かってきた。
周囲360度を完全に包囲されているため逃げることは出来ないし、ものすごい勢いで迫ってくるゾンビの迫力に思わず失神しそうになる。
けど、今の俺たちにはダリルがいる!
「ダリル!後は任せた!」
……しかし、魔法はまだ発動しない。
あれ?まだか?まだか?と待っている間に、ゾンビ達はすぐそこまで来ている。
軽くパニックになっている俺とデイモス、ヴェルデ。
「ダリル……ダリル!?ちょっ、どうしたの!?ヤバいって!もうそこまで来てるよ!?」
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「お前もうるさいって!!……ヴェルデはヴェルデで悟ったような目で空見てるし!!やめて?不安になるからその目やめて!?」
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もうダメだと頭を覆った瞬間、高いラッパの音が俺たちの周囲を……いや、街全体に響き渡る。
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一瞬、俺の脳も停止し状況を飲み込めずにいたが、すぐにダリルの魔法が発動しそれが上手くいったのだと理解した。
そして、俺が理解すると同時にゾンビ達は糸の切れた人形のように地面に崩れ落ちる。
すると、倒れたゾンビ達の身体から先程も見た光の粒子が現れ、それらは宙へ舞い上がりやがて霧散した。
「……すげぇ」
周囲を見回した後、改めてダリルを見ながら俺はポツリと呟いた。
それ以外の言葉が思いつかない。
さっきまで俺たちを殺そうとしていた数万という人々は、ダリルが作った笛の一吹きで完全に無力化した。
「ま、ざっとこんなもんよ」
ダリルは得意げな表情でこちらを見て、不敵な笑みを浮かべた。
しかし、まだ終わりではない。
「へっ……こいつァ参った。まさか本当に全部やられちまうとはな」
俺たちは一斉に声のした方向を振り向く。
すると、光の粒子が霧散した向こうから、アッタマルドの姿が現れた。
その身体からはゾンビと同じ光の粒子が現れ、そして空に消えていく。彼自身の終わりが近いことは誰の目にも明らかだった。
アッタマルドは仕込み刀を右手側の地面に置き、胡座をかいてじっと目を瞑った。
「ワイもただ歳を重ねてきた訳じゃねェ、自分のことは自分が一番分かってらァ。……にしても、ワイの全てを出し切ってもここまで痛快に負けちまうたァ、逆に笑えてくるってもんだ」
そう言ってアッタマルドは微かに笑い、ゆっくりと目を開けた。
「散り際くれェは潔く逝くさ、それにワイに残された時間ももうほとんどないしな。……そうだ、最期にひとつ聞かせてくれ」
「おめェさん達は人間の……てっぺんにいる王が腹の底で何を考えてるか分かってるのか?」
他の3人は首を横に振り、分からないことを伝えた。俺も3人と同様に首を横に振る。
「……いや、全然分からない。そういうあんたは一体何を知ってるんだ?」
「……悪ィな、ワイも知らねェんだ。何となく、聞いてみただけだ」
アッタマルドは少し何かを考えるような表情を見せた後、言葉を続ける。
「ただ……もしかしたら、おめぇらとはまたどこかで会うかもしれねぇな」
その意味深な言葉に、デイモスは「ヒッ」と悲鳴を漏らし、怯えた顔で首を両手で隠した。
そんなデイモスの姿は俺以外誰も反応することなく、ダリルがアッタマルドを睨みつける。
「上等さ、次はタイマンであんたを叩き潰してやるよ」
「へっ、それも面白そうだけどな――」
そこまで話したところでついに時間が来たらしく、アッタマルドは僅かに笑みを浮かべながら身体は完全に光の粒子になって消えていった。
◆◆◆◆
その後、街の人々は徐々に意識を取り戻していった。
それからしばらくして、この街の異変を察知して応援に駆けつけた近隣の討伐隊が到着した。
アンパン魔人の件で俺たち3人は討伐隊の方々に覚えられていたというのもあるのか、かくかくしかじかと状況の説明をした時、割とすんなり理解してもらう事ができた。
その後、顔がボコボコになっている討伐隊の奴らをぐるぐるに縛った状態のまま引き渡し、あとは討伐隊に引き継いでもらった。
さあ、そんなわけで!
「――デイモスにヴェルデ、そしてダリル。本当にありがとう、マジで助かった。一時は本気で死ぬかと思ったが、今はこうしてピンピンしてるし、ゾンビ映画を観たらPTSDを発症するくらいの被害で済んだ!奇跡的だよ!」
「それって精神面にだいぶ深手を負ってない?」
ヴェルデからの問いかけは華麗にスルーし、言葉を続ける。
「ダリルはこれからどうするん……あっ、隣町のパチスロイベントに行くんだっけか。……そういえば、本当に街から金かっぱらってきたの?」
段々と声が小さくなる俺。
「いや、流石にあれは嘘よ。ギャンブルするんなら、限られた金でギリギリの勝負をする方がさ、ゾクゾクしない?賭け事っつーのはスリルよスリル」
それを聞いてホッとした部分もありつつ、大分ヤバめなギャンブラーの根幹を垣間見てしまったことの恐ろしさを感じながら、「なるほどなるほど」と意味不明な相槌を打つ。
「でさ、実はひとつお願いしたいことがあって」
改まった様子でダリルが話し始める。
何を言われるか検討もつかない俺たちは、頭の上に『?』を浮かべながら顔を見合わせた。
「実は私、賢者関係の奴らから追われててさ、多分今回の騒動で場所がバレちゃうと思うんだよね。そんなわけで、私を仲間にしてほしいの!私があなたの仲間に入れば『勇者一行』っていう隠れ蓑ができるじゃん?」
「そんなストレートに言うの!?しかもあんた……お尋ね者かよ」
デイモスが訝しげな表情を浮かべ言った。
「そうそう!……あ!けど誤解しないでよ!別に人を殺したりとかそういうヤバい理由じゃないから!ちょっと禁忌とされてる神の祝福を多用しすぎただけだから!なんならさっき使ったのも禁忌になってるやつだしダイジョーブダイジョーブ」
一体なにが大丈夫なのか全く分からないが、自信満々な様子。
そんな中、ヴェルデが徐に口を開いた。
「あの……なんでそんなに正直に全部話したんですか?先に誘ったのはこちらなんですから『諦めない熱に負けた』とか『気が変わった』と言われれば、誰も何も文句言わなかったと思うのですが……」
確かにそれはちょっとだけ気になった。
その問いにダリルは顎に手を当て、一瞬考えるような動作をしたが、すぐに返答した。
「うーん、まあね。けどさ、仲間になるんなら、後々重要になりそうな事は事前に伝えておいた方が何かと楽でしょ?それに、隠して入ったら騙してるみたいでモヤモヤするしさ」
「ま、それでダメってんならしょーがない、諦めるよ。ただ、あんたらの仲間になりたいって思ったのは隠れ蓑にしたいからってだけじゃないぞ?」
そこまで話したところでダリルは3人の顔を見回し、裏表のない笑顔を浮かべる。
「あんたらと一緒にいれば、なにかと面白いことに巻き込まれそうだからね」
そう語るダリルの眼には一切の曇りもなく、真っ直ぐに俺たちを見つめていた。
俺もその眼を真っ直ぐに見返した後、緊張が緩んだようにフッと笑い、右手を差し出した。
「命を助けてもらった恩もあるし、なにより最初に誘ったのはこっちからだからな」
「改めて、これからよろしく頼む!」
「こっちこそ!」
俺とダリルはガッチリと固く握手した。
――かくして、俺たちの仲間に賢者のダリルが加わった。
彼女の強力な魔法は、これから先の旅の中で現れるであろう、これまで以上に手強い敵との戦いできっと助けになってくれるはずだ!
それに!俺には他にも心強い仲間がいる!
そう!心強い仲間が……仲間が……。
…………。
元は人間であるが、現在は人類の敵である魔族に分類されるアンデッド。
使える魔法は限られた条件下でしか発動できないものや効果が意味不明なもので、魔法のことになると倫理観が欠如する魔法使い。
酒・薬物・ギャンブルの中毒に加え、禁忌とされる魔法の使用で追われる身となっている賢者。
そんで、そもそも一番論外な魔法も何も使えないガチ無能かつスライムに殺されかける最弱勇者。
…………。
まるで就職先の見つからない無職ニートのような、未来に対する漠然とした不安を抱えながら、俺たちは肩を並べて当てもなく彷徨い歩く。
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