【本編完結】召喚? 誘拐の間違いでは?

篠月珪霞

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独り?

昼食だのお茶だの晩餐だののたびに、磨かれ、ドレスアップさせられ、飾り立てられ…私のライフはもう0よ…。
小説とかコミックとか、仮想で読むのと体験するのとでは大違い(当たり前)。貴族のお嬢様、生まれたときからこれが標準装備か。すげえ…。
ドレスも装飾品も重いのね…としか思わない辺り、適齢期すぎつつある女としては終わってるがそれがなんだ。女子力など皆無であることは本人が一番分かってるんだ。ほっとけ。
シルクか知らんが上質な布でもこうも何重だと重みしかないし、繊細な細工でもイヤリングもネックレスもヘアアクセもリングもブレスレットも…いやなんでここまでフル装備せにゃならんのだ。相手が王族だからか? まじむりぃ…。
仕事中はパンツスタイルのスーツだし、普段着もそれをカジュアルにしたような服装の私になんてハードルの高さ…!
異世界転移とか召喚とかさ、性差関係なく、装備とか正装とかよく馴染めるよな…。ドレスだけじゃなくて、防具とかも重いだろうに。肩も腰もやられる。

ついでに、コルセット開発したやつに殺意を覚えたわ。ストッキング開発したやつにも覚えた、同じくらいの殺意を。
女性の身体のラインがどうとか知るかボケ。なんで男を喜ばせるためにそんな努力を、女だけに押し付けるんだ、ああん?

楽しいはずの食事が苦行だった。法律書読破という鍛錬じみたものより、比べ物にならんくらいの苦行だった。
あの美形が、お見合いさながらの質問を繰り出してくるのも、苦行でしかなかった。私の食事を毒見させてたメイドさんに、要らん牽制してたのもな!
苦行がゲシュタルト崩壊してたわ、私の中で。

食事という名の苦行が終わった後に通された部屋は、なんだかこう、どういう人間を想定したのか?というパステル調で纏められていた。ふんわりぽわぽわな可愛い女の子だったらさぞ、みたいな。
私の好みとは違うんだよねえ。知らないから当然だけど。言えば変えてくれそうだが、面倒だし言わない。

やさぐれまくって、中断させられた読書、法律書(誰かが持ってきてくれたんだろうな)を遠い目でひたすらめくる。必要事項はメモをとる。これも基本。メモ帳、筆記用具は常備してますが何か?
日本語だから、この国の人間には読めまい。ふはははは!!

……まあなんだ。テンション上げていかないと、心折れそうになるんだ。許してほしい。

だってここには、心の癒しがない。頼れる人なんか1人もいない。誰もいないんだ。何もない。
いくらアラサー近くて、実家から離れて一人暮らししてても、ちゃんとつながってた。
職場でも、厳しくも何でも話せる上司、面倒だが仕事はできる同僚、小言は多いが頼れるお局様、共に繁殖期を乗り切った後輩たち、いつでも愚痴を話せて、話してくれる友人たち、そしていつだって私の居場所と拠り所である家族たち。
異世界に来て、誰も見てないところでこっそり確認したスマホは、圏外だった。
誰とも話せない。誰にも話せない。そう思い知るのは早かった。

泣き喚いて、誰かがどうにかしてくれるなら、泣き叫んだと思う。みっともないとか、いい年なのにとか言われても。
醜態を演じる程度で望みが叶うなら、元の、自分が生きている世界に戻してくれるなら、それくらいやってのけた。いい年なので、相当の羞恥心との引き換えとなるが。戻れば二度と会うことのない人たちだと、開き直れたにしても。黒歴史の1つや2つ…いややっぱ辛いかも。
人前で泣くのはなあ…。涙は女の武器とか巷では言ってるかもなんだが、手段としては最低で卑怯だと思うの。それを意図して使うのは。計算でなければ、仕方ないけど。

話しが大分逸れまくったが、法律書の解読は順調に進んでいる。魔法使い様との面談は、2日後だそうだ。…長いなあ。それまでに、この国の法律、ある程度学ぶかあ。独学で。
ああでも、法律家も必要だな。魔法使い様が先だけど。

順序だてて、やるべきことを確認して。

どこまでできるか分からないけれど、決めたのだ。
私がこの世界で、独りだと気付いたときに。
















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