恋だとか愛だとか

篠月珪霞

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「父上、お呼びと伺いましたが」
「…来たか、リゼル。座りなさい」
「はい、失礼します」

2人、対面で座ると侍女がティーカップにお茶を注ぐ。いい香りだ。

「リゼル、お前今年でいくつだ」
「これはまた、分かりきったことを。15ですよ」
「そう、15歳だな」
「はい」
「病気も大きな怪我もなく、無事に育っていてくれて父は嬉しい」
「そうですか。して、ご用件はなんでしょう。ご多忙な父上がわざわざ執務室に呼び出しとは、改まってお話でも?」
「…お父様と呼びなさい」
「──お父様が何用で私をお呼び出しに?」

はーっと深い深い溜息をついた父。何があった。私の年齢と呼び出しに何らかの関わりが?

「………今後、剣術、武術、鍛錬を、禁止する」
「──…は?」
「15だと言ったな?」
「それとこれと何の関係があるのです」
「これまでは、兄が3人、妹も2人いるし、好きにさせてきた。しかし、お前はもう15になる。我が侯爵家、いやもうそろそろ将来を見据えて動かねばならん」
「将来、ですか? 父上、それはどういう、」
「お父様と呼びなさいと言っただろう」
「兄上も父上と呼んでいますのに、」
「お兄様、だ」

面倒だなこの親父。私の考えを見透かしたように、ぎろりと睨まれる。

「この際、呼び方はおいておきましょう」
「おくな」
「細かいこと言ってると禿げますよ、父上」
「……まあいい。ともかく、明日から鍛錬場には入れないようにするから、そのつもりで」
「何故です? 納得がいく説明をしてください」
「納得いく説明か…」
「はい」
「お前の性別が女だということ以上の説明が、必要か?」

何を今更。

「必要です」

きっぱり言うと、父はうなだれた。どうした。

「何故、何故、お前に王太子やら隣国の第三皇子やらから、求婚があるのだ…」
「何故でしょうね。私にもわかりません」
「確かに顔立ちは私たちに似て、美しい。教養もマナーも申し分ない」
「そうですねえ」
「何を他人事のように言っておるのだ!」
「まあまあ落ち着いて、ほら父上。折角のお茶が冷めてしまいますよ」

カップを侯爵とは思えぬ荒々しさで掴むと、ぐいーっと一気飲みした父。まるで酒を呷ってるようですな。
はーーーっと先ほどよりも深い溜息を父はついた。

「…容貌はともかく、およそ淑女とは程遠いのに。好きなのは刺繍や読書☆とかじゃなくて、趣味:剣術とかなのに。何故なのだ!」

だん!とティーカップをソーサーにたたきつけた父が叫ぶ。血圧上がりますよ。…あ、ソーサーにヒビ入ってるっぽい。

「王太子殿下も第三皇子殿下も、趣味が悪いですよね」
「お前が言うな」
「億が一、王太子妃や皇子妃なぞになったりなんかすれば、貴族たちの反発は避けられないでしょうに」
「…お前、そもそも誰かに嫁ぐ気はあるのか? 将来をどう考えているのだ」
「え、それは、もちろん」
「もちろん?」
「第一王女殿下の近衛になろうかと」
「…冗談じゃなかったのか」
「ぜひにと誘われていますし」
「…………」

父が頭を抱えてしまった。話は終わりかな。
鍛錬場を出禁にされてしまったが、まあ侯爵家のじゃなくても他にあるし、問題ないな。

「お話は以上ですか。では私はこれで」
「待ちなさい、リゼル。話はまだ…!」

背後で父が何か言っているようだが、いつものことだ。
何も問題はなかったと、機嫌よく厩舎へ向かった。










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連載の合間に息抜き的お話。
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