確かに愛はあったはずなのに

篠月珪霞

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このままでいいのだろうかと、自問しながら答えが出ないまま。
フィリク殿下の予告通り、アドリエ嬢は生徒会に加入した。
特に何かがあるわけもなく、執務と雑務に追われる日々。彼女は殿下の見込み通り、器量だけでなく気立てもよく有能だった。それに下位貴族ながら、場の空気を読むのがうまい。愛嬌もありで、人を惹き付ける魅力もある。正直欠点という欠点が見当たらない。

「そろそろ休憩にしませんか? 皆さん、根詰めすぎですよ」

彼女の明るい声、笑顔に、室内の雰囲気が変わる。張りつめていたものが、緩くほどけるように。
アドリエ嬢が率先して、茶器を手にお茶を準備する。
出遅れてしまったが、手伝いに席を発とうとすると、彼女が1人で大丈夫ですよ、と手際よくカップを運んできた。

「どうぞ」
「…ありがとう」

まず殿下に運ばれ、次に私。それから殿下の側近たちと、他、役職に就いているものたちに。
彼女を見る殿下の柔らかい眼差しに、ちりりと胸が焦げる。
これは嫉妬だ。非の打ちどころのない彼女に。殿下に想いを寄せられる彼女に。
自分の醜さを思い知らされて、嫌になる。こんな感情を持っている自分への嫌悪感で、身の置き所がなくなるような不安定さも。

「アドリエ嬢って本当、気が利くよね」
「そうそう。いいタイミングで休憩入れてくれるし」
「俺なんか、どう? まだ婚約者いなかったよね?」

殿下の側近のレーヴライン侯爵令息とランドストム伯爵子息は、彼女を褒めつつ、軽口をたたく。
他意はないはずなのに、殿下の目が鋭くなる。

「レーヴライン様もランドストム様も、そんなこと言ってると、本命から逃げられちゃいますよ~」
「あらら。もしかしてバレてんの?」
「見てれば分かります」
「うわー…マジか」
「いやいや、アドリエ嬢の観察眼が鋭いだけじゃ?」
「……そうだったらいいですね」
「やめて! 怖いこと言わないで!!」

笑い声が響く。殿下も、そんな雰囲気に口元を緩める。和やかな会話なのに、私だけが取り残されている。
殿下の眩し気に細められる目が、焦がれるような目が、私を切り裂く。

「リュースウェル様? …顔色悪いですよ、大丈夫ですか?!」

ふと向けられたアドリエ嬢の視線と驚いた声で、ようやく向けられた殿下の目には何の温度もない。面倒そうな溜息と言葉は事務的だった。

「本当に、具合が悪そうだね。今日はもう急ぎの仕事はないし、帰宅するといい」
「──はい。申し訳ありませんが、これで失礼します」

席を立つと、他の役員の方からも気遣う言葉がかけられる。
殿下よりも、余程温かい言葉が。

変わらないものなどないのだと思い知らされる。
殿下は、ご自分の立場も責任も忘れているわけではない。それでも、それは少しずつ、形を変えていくようで。
これからどうなるのか、怖くて身震いが止まらなかった。















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